【インペトゥス・サクソフォンアンサンブル、2025(8月13日)】
8月13日(水)
Sax Gong Bath
インペトゥス・サクソフォンアンサンブル Impetus Saxophone Ensemble
東京特別公演 'Inner Resonances'
DAC スペースDo
テリー・ライリー/ in C
ライヴィス・ミスユンス(サクソフォンアンサンブル版・初演)/鼓動ソナタ
フィリップ・グラス(クリストフ・エンツェル編)/弦楽四重奏曲第3番「Mishima」
H.ヴィラ=ロボス(井上ハルカ編)/ブラジル風バッハ第9番
丸山由華(Gong)
インペトゥスの公演は毎度、驚きの「静かな祝祭性」に満ちている。
普段は東京や中部、関西、ドイツまで分かれてそれぞれ活動するメンバーが定期的に集まって、この規模と内容の演奏会をするというのは、どれほどの意思とエネルギーが必要だろうかといつも思う。
今回テーマに選ばれたゴングバスというのは、ゴング(銅鑼)の音を用いたヨガのサウンドセラピーの一種だそうだ。
円形に組まれた座席の、中央を向いて奏者は立ち、はじめの3曲はいつ始まって終わったともしれないようなミニマル・ミュージック。足音を立てないよう奏者は全員素足。全員で循環呼吸を駆使して、誰もブレスをしていないんじゃないかと思ってしまうレベルで人間的な粗さや揺れを徹底的に排除した、純粋で抽象的な繰り返しの音群。曲間は巫女の口上を思わせるゴングの即興演奏で繋がれる。まさに「この世ならぬ」時間と空間に誘われるかのようだ。
そしてこの演奏会の最大のポイントは、私見では最後の、ミニマルでない唯一の「普通の」音楽の曲目が、ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ第9番だったことだ。この曲は曲目解説にも言及があるとおり、当初六声の無伴奏合唱曲(歌詞なしのヴォーカリーズ)として書かれ、あまりにも演奏至難なため弦楽合奏曲として改作された経緯を持つ。
この曲を「息の楽器」であるサクソフォンで演奏するというのは、作品を作曲者の発想の根源にふたたび還すことに他ならないのではないか。
不本意な形で広まった作品を、少しでも本来の姿に近く再現して奏上する、そのように作品を「供養する」かのような姿勢は、この日本の「お盆」という、死者がこの世に還ってくる特別な季節にまことにふさわしく思う。
最後のゴングの即興が終わってヴィラ=ロボスの冒頭の和音が鳴ったときの気分は、まるで長く虚空を旅してきた宇宙飛行士がついに地球の姿を眼前した時のようだった。
アンコールにエルガー「ニムロッド」(『エニグマ変奏曲』より)。感謝の祈りのように終演した。
« 【サティ没後百年(8月11日)】 | トップページ | 【オーケストラ・ファンダメンタルズ(8月16日)】 »
「コンサート(2025年)」カテゴリの記事
- 【第九、2025年ラスト都響(12月25日)】(2025.12.26)
- 【東吹(12月18日)】(2025.12.25)
- 【2025年のファブリス・モレティ(12月15日)】(2025.12.24)
- 【オットヴォーチ×リュミエール “大響演”(12月12日)】(2025.12.23)
- 【イベール/祝典序曲を聴く~東京音大オケ(12月5日)】(2025.12.22)




最近のコメント