小林研一郎come back!
東京都交響楽団 第681回定期演奏会(サントリーホール)
火曜日(26日)のこと。
とても忙しい今日この頃だけれど、午後から家庭の事情で仕事を休まなければならなかったため、夜はコンサートを聴くことができた。
というか、これがあることが分っていたから、予定を無理やりこの日の午後に突っ込んだようなもんだ。
「炎の」コバケン、都響主催公演への24年ぶりの復帰。
曲はスメタナ「我が祖国」全曲。
幾多のヨーロッパ人指揮者たちを差し置いて、2002年の「プラハの春」音楽祭の開幕演奏会の指揮を任されたという(このことがどれほど凄いことなのか、ということを実感している方は意外と少ないのではないかと思う)、コバケンの十八番。
素晴らしくファンタスティックな演奏だった。
コバケンらしいソリッドな、実の詰まった熱いサウンド、融通無碍に伸び縮みする自在な時間感覚と、都響の繊細で統制のとれた響きとがともども生かされた、充実した音楽的時間を過ごした。
チェコの人たちにとって、「わが祖国」というのは特別な音楽で、演奏会で「ヴィシェフラト」の冒頭のハープがボロン、ボロンと鳴り出しただけで、すすり泣きを始めるお客さんが何人も現れるくらいのものだそうで、私は日本人なのでそこまでの気持ちは分からないけれど、でもそれに近いような何か超越した感情を含んだ時間だったと思う。
小林研一郎氏は、日本フィルの音楽監督を退いて時間ができたからか、最近、N響や読響のような、これまであまり縁のなかったオーケストラにも積極的に客演に現れていて、今回の都響への登場もその一環だと思っている人もいるかもしれないけれど、私個人的にこれはかなり違う意味合いがある。
なにしろ小林研一郎氏はかつて、都響の「正指揮者」という職責を持っていて(首席指揮者モーシェ・アツモンの時代)、私が都響を意識して初めて聴いたのもその頃、今からちょうど30年前、小林氏の指揮でだったからだ。
ちなみにそのときのプログラムは以下の通り。
モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲
同 /ファゴット協奏曲(ファゴット独奏:中川良平)
ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」
東京都交響楽団 指揮:小林研一郎 (1979年1月6日 東京文化会館)
当時は今と違って(苦笑)、オーケストラのコンサートを聴きに行く、なんてことがたいへん珍しい体験だったので、とても印象的な出来事だった。
私はベートーヴェンの「田園交響曲」が大好きなんだけれど、何故かというとこの時にこの演奏会を聴いたことも、たぶんその遠因のひとつだ。
当時の自分(17歳)が、こういうプログラムをお金を払って聴くとは考えにくいので、覚えていないけれどおそらく招待か何かだったんだろう。
当時の都響は、創設14年めのまだ若いオーケストラだった。
その頃の小林氏と都響の演奏は、「ルスランとリュドミラ」や「詩人と農夫」、「天国と地獄」といったポピュラー序曲の録音を現在でもCDで聴くことができるけれど、まったく、良くも悪くも「若い」演奏ではある。
30年近い時間が経ち、しばらく縁遠い日々を過ごした間の、指揮者、オーケストラ双方の驚くべき充実と深化というものが、実感される。
それを聴いている私自身にも、そういうものがあったとしたら嬉しいんだけど。
…終演後の小林氏、ステージ中をぐるぐる廻っては、見ていてちょっと照れくさくなるほどの最大限のジェスチャーで、楽団員ひとりひとりを立たせてはその労を讃え、私たち客と楽員さん達も負けずに、小林氏に大きな声援と拍手を贈る。
時として「クサイ」、と感じることもある、オーケストラのコンサートの跳ねた後には見慣れた風景だけれども、小林氏ほどこの光景に似つかわしい人はいない。
また是非観たいものだ。
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