カテゴリー「新着音盤」の記事

2008.04.22

ロストロのチャイコフスキー

Rostropovich-Tchaikovsky長らくカタログから消えていた、巨人ロストロポーヴィチがロンドン・フィルを振ったチャイコフスキーの交響曲全集(EMI)が、没後もうじき1年という今になって、廉価ボックスで再発売されたという話を聞き、早速買ってきたところ。
「マンフレッド交響曲」を含む7曲に、「ロメオとジュリエット」「フランチェスカ・ダ・リミニ」も詰め込んだCD5枚組。H○Vで3190円でした。安いなあ。昔だったら1曲分の値段だ。

1976-77年録音ということは、ロストロの指揮者デビューだった、かの名盤「シェエラザード」のちょっと後。
世評高かった録音だが、聴くのは初めて。

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2008.03.22

フルネのモーツァルト

久しぶりに、新譜CDの覚書き。

ここ何ヶ月かの間に買って、暇があったらブログネタにしたいCDというのが何枚かあるのだけれど、なにしろ暇がない。
それでも、取り急ぎこれだけは。

Fournet, Mozartモーツァルト/交響曲第35番「ハフナー」、第39番、第40番
 ジャン・フルネ指揮 東京都交響楽団(Fontec/FOCD9350)

ジャン・フルネ(1913.4.14-)。フランス音楽の正統を受け継ぐ大指揮者。長く都響の名誉指揮者を務め、私自身が最も多く実演に接した、また最も敬愛する音楽家の一人である。
2005年の暮れに東京で引退公演を開催、永く記憶に残るであろう感動的な演奏会となった。勿論私も聴きに行きました(こちらにエントリが残っている)。

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2008.01.23

デクリュック、デル・トレディチ、ダンディ

ソプラノサックスの新しいマウスピースが、到着。
バンドレンのV15。
先週楽器を選定していただいた際に、時間切れでマウスピースの選定まで間に合わず、日を改めて選んでいただいたのだ。
実はバンドレンのMPは(サックスは33年吹いているけれど)初体験。選定者のしまっぷー先生からは「セルマーのマウスピースと交互に使うのは危険だと思うので、使うときは覚悟を決めるように」とのメッセージ付。ははーっ(平伏)。

Fernannde Decruck楽器を買って帰った時に、アクタスの店頭で売っているCDを1枚オマケで付けてくれる、とのことで、これにする。
フェルナンド・デクリュック(1896-1954)の、サクソフォン作品集(dapheneo)。
ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のサクソフォン現首席奏者のジャン=ピエール・バラリオーリ氏が、昨秋の来日時に置いていったCDだそうだ。アクタス店頭にはまだ2-3枚あった。

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2007.11.23

Four Piece Suite

9月に聴いた佐藤渉さんのリサイタルで、リチャード・ロドニー・ベネット(ベネットという作曲家はたくさんいるのでフルネームで表記する)のThree Piece Suiteという曲が演奏され、洒落た雰囲気がいたく印象的で早速楽譜も入手したのだが(SheetMusic Plusに注文したらあっさり届いた)、音源(CD)は無さそうだなあと思っていたら、偶然、2台ピアノの原曲(1曲多くてFour Piece Suiteという名前だった。「3ピースのスーツ」と引っかけた洒落かと思っていたらそういう訳でもなさそうだ)のCDをたいへん身近なところで見つけ、買ってみた。

Duetwoいいことがありそう! Duetwo(キングレコード)

デュエットゥーというピアノデュオチームは何度か聴いたことはあったし(ジャン・フルネ指揮の日本フィルと共演して「動物の謝肉祭」を弾いていたとか。湯山昭のデビュー50周年記念演奏会とライブCDにも名前を連ねていた)、CDを出していたことも知っていたけれど、こんな曲が入っているとは意外だった。
といっても、ピアノデュオの世界では結構有名な曲のようだが。

このCDの演奏は、正直言ってそんなに素晴らしいとは思わなかった。佐藤さんの演奏を聴いたときは、なんて素敵な曲なんだろう、絶対やってみたい、と直ぐに思ったものだったけれど、それほどではない。
ちょいとリズムの重たい演奏のせいか、(ソロ楽器付きの編曲に比べメロディラインが出にくい)ピアノデュオというフォーマットのせいか。
ともあれ、貴重な音源には違いない。

…それにしても、なんだってこんなお子様ランチみたいなアルバム作っちゃったんだろうなあ、この人たち。(^^;
この曲が入っていなかったら、まず間違いなく絶対に買うことはなかっただろう。
一般受けはするだろうし、こういう路線のアルバムも必要だということは判るんだけれども。


山野楽器のVarieが12月号限りで廃刊、という話を聞き、ちょいとショック。
クラシックCDを対象とした無料宣伝情報誌、などというものは、もう今の時代採算が取れないっつうことなんだろうな。
確かに、いまや、発売日を待ち構えて買いに行く(クラシックの)CDなんて、ほとんど無くなってしまったことだ。…

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2007.11.05

SAXOPET

SAXOPET「SAXOPET!」。
雲井さん(Sax)とトランペットの神代修氏(くましろ・おさむ、芸大管弦楽研究部、元東京フィル副首席)、ピアノの藤井一興氏という、不思議な3人の組み合わせによる、新しいCD(Cryston)を聴く。
ちょっと苦しまぎれな感じもするタイトルだけど、カッコのつけようもなくそのまんま、という。

藤井さんといえば、こちらのようなお顔を覚えておられる方も多いと思うので、このジャケットの、ゲゲゲの○太郎のような(失礼)風貌にはびっくりされる方も多いのではないかと。
ちなみに藤井さんは、私と同じ誕生日だ(歳は7つ上)。
それはどうでもいいのだが。

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2007.10.04

ショーソンの交響曲、など

ここ最近、今年5月の「ホールA」という短いエントリがずっと当ブログのアクセス数のトップを独奏じゃなかった独走しているのだが、いったいなんで?と思っていたらどうも、「○門館」「座席表」というキーワード検索で大勢の方が辿り着いているらしい。
そういう季節なのですね。お役に立てずすみません。普○館のまともな座席表というのはネット上には見つからないようです。

Chausson, Symphonieさて。
長いこと探していたのを、ヤフオク上で見つけ落札したCDが届く。

ショーソン/交響曲変ロ長調、フォーレ/組曲「ペレアスとメリザンド」、歌劇「ペネロプ」前奏曲
 マルク・スーストロ指揮 ロワール・フィルハーモニー管弦楽団(Pierre Verany)

ショーソンの交響曲は敬愛するジャン・フルネ師の十八番だったこともあって、私の大好きな曲だ(さまざまなオーケストラで、何度も実演を聴いてきたものだ)。胸の張り裂けんばかりのパッションを、控えめで抒情的な中間色の額縁で飾った、19世紀フランス産の交響曲の逸品。

これは実にいい演奏だと思った。好きな曲だけにたくさんのCDを聴いてきたけれど(手元に残っているCDだけで、フルネ2種、アンセルメ、パレー、ミュンシュ、ヤノフスキ、トルトゥリエ…)、フランスの地方オーケストラの精妙に変化する色彩感と、他のどの演奏にもない弦の独特の音色が素晴らしい。
ワタシ的には今までの基準だったフルネ=オランダ放送フィル(DENON)に代わって、お気に入りNo.1に昇格かも。

Affinis  Sound Report, #32アフィニス・サウンドレポートNo.32…アフィニス・アンサンブル・セレクション10周年記念

アフィニス文化財団が年2~3枚のペースで自主制作していて、サイト上で抽選で無料配布しているCD。
No.32は一度抽選に外れたのだが、もう一度募集があったので応募してみたら、首尾よく当たって、送られてきたのだ。
以前にもこちらとかこちらを入手している。

オロール弦楽四重奏団によるハイドン「日の出」第1楽章とか、野平一郎編曲のヴィオラ重奏によるバッハ「シャコンヌ」とか、都響メンバーによる演奏が多く含まれていて、是非聴いてみたいと思っていた。
シュテファン・ワーグナー(ハンブルク北ドイツ放送響コンマス)が頭を弾いて日本のオーケストラの若手奏者と共演した、シェーンベルク「浄められた夜」の弦楽六重奏版が聞き物。
いつも思うのだが、作りも丁寧だしライナーも充実しているし、とてもタダで貰えるCDには見えない。

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2007.09.29

ピッコロに捧げる

先日、渋谷のタワーで見つけて衝動買いしたCDの1枚。
これは衝撃的だった。

Fontec FOCD20049Dedication for Piccolo(Fontec
 菅原潤(Picc)、三木香代(Pf)

NHK交響楽団のフルート・ピッコロ奏者、菅原潤氏によるピッコロのソロアルバム。
この夏、私たちにとって最大のイベントは、日本フルート協会のコンベンションに出演してヴィヴァルディのピッコロ協奏曲の伴奏をさせていただいたことだったけれど(記録はこちら)、菅原さんはその「ピッコロの世界」という企画枠の座長だった。
会場の隅で私たちのゲネプロを聴かれたあと、物凄い的確なアドバイスをいただいて感嘆させられたことを思い出す。

N響のピッコロ奏者といえば、これはもう間違いなく日本ピッコロ界の頂点に立つプレイヤー、と言っていいだろう。それにしてもこんなソロCDを出していたとは知らなかったぞ。版元がフォンテックだから気付かなかったのかな。こういうアルバムはマイスターミュージックの領分だとばかり思っていた(マイスターミュージックだったら新譜は定期的にチェックしているので気付いたはず)。

収録内容としては、モーツァルトのフルートソナタや件のヴィヴァルディのラルゴをピアノ伴奏で吹いているのはまあ当然として、驚くべきことにメインとなる曲目はすべて、オーボエの典型的なレパートリーなのである(モーツァルトのオーボエ四重奏、サン=サーンスとプーランクのオーボエソナタ)。
で更に驚くべきは、これらの曲のなんとピッコロに似つかわしいこと! ハッキリ言って、オーボエと同じ音域のはずのソプラノサックスで吹くよりもずーーっと、これらの曲のありように似合っている(サックスでオーボエの曲を吹くと、なんだか妙に音が色気づいちゃって別世界になってしまうんだよね)。
ピッコロという楽器の、ピュアで浮世離れした、しかも歴史を内包した音色が、オーボエのやはり葦笛以来の伝統のある音世界とシンクロするのだろうか。プーランクの終楽章なんか凄いよ。まるで仲間の群れからはぐれた動物の嘆きみたいな、シンプルでイノセントな悲しみの表現。

機会があったら是非、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲をピッコロ独奏で聴いてみたいと思った。きっと似合うんじゃないか。
私たちも今度の(暦的にはもう明日だ;;)演奏会ではアレンジ物ばかり演奏する訳だけれど、どうせアレンジ物をやるんだったら、必然性という観点でこのくらいのレベルを狙いたいものだ(心意気的には)、と思ったことだった。

ピッコロの最低音はなぜか(Cではなく)Dなので(何故なんでしょう?誰か教えてください)、ところどころオクターヴを上げたり、音階上昇の途中でチェンジしなければならないのが、惜しい。

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2007.07.11

「ジョン・バーンズ・チャンスの伝説」

John Barnes ChanceThe Legacy of John Barnes Chanceと題する、チャンス(1932-1972)の作品集のCDを入手(Albany)。

収録内容は、呪文と踊り、序奏とカプリッチョ(ピアノと24の管楽器のための)、交響曲第2番、ブルー・レイク序曲、エレジー、朝鮮民謡による変奏曲。Stephen K. Steele指揮イリノイ州立大学ウィンドシンフォニー。

最近かかわりの深い「朝鮮民謡」の音源をサーチしていた過程で、偶然見つけたものだった。
「朝鮮民謡」の演奏自体は、いかにもアメリカの大学バンドらしい開放的な明るさと大雑把さがあって、残念ながら既にあるフェネル=佼成wo.や佐渡裕=シエナwo.の録音を上回るほど素晴らしいという訳でもないが、チャンスの他の代表作「呪文と踊り」や「交響曲第2番」(←これはすごい傑作)が同梱された内容は、有難いものだ。

また、チャンス氏の詳しいバイオグラフィ、そして顔写真を(はじめて)見ることができたのは、嬉しい。その音楽の感じから、陰影を含んだ端正な顔だちの紳士を予想していたのだが、まさにイメージ通りの容貌だった。
ある作品に親しんだり譜読みをしていく上で、これはどんな顔をした人が書いた曲だろう、と想像することが(私の場合)よくある。作曲者の風貌とその音楽とは、結構密接な関連があるものだ。マーラーのあの神経質そうな顔、ブルックナーのどんくさい岩石頭、ラヴェルの短躯(あれは絶対、身体の大きな人が書く音楽ではない)、イベールの、まさにフランス紳士というカッコ良さ、デザンクロの伊達男っぷり、etc…。

【業務連絡】バイオグラフィの部分は、こんどコピーを持って行くので、英語の得意なそちらの生徒さん達にひとつ読ませてみてください>ken師。
秋山紀夫氏の曲目解説にある「朝鮮戦争に従軍」云々というのは、少々事実と異なるようだ。1958年から米陸軍第8音楽隊のメンバーとしてソウルに駐留していた、ということらしい。

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2007.04.23

ホルスト新譜

山尾敦史さんのブログで紹介されていた、ホルストの作品集の新譜CDを、早速発見、捕獲。

Cd142G.ホルスト/ウォルト・ホイットマン序曲op.7、バレエ組曲op.10、組曲変ホ調op.28-1(G.ジェイコブ編)、ハンプシャー組曲op.28-2(同)、ムーアサイド組曲(同)

ニコラス・ブライスウェイト指揮 ロンドン・フィル(Lyrita)

後半3曲は、作品番号に見覚えのある方もいらっしゃるでしょう、かのミリタリーバンドのための第1組曲と第2組曲、そしてブラスバンド(金管バンド)のためのマスターピースの、ゴードン・ジェイコブによるオーケストラ・ヴァージョン。寡聞にして初めて聴くものだ(ジェイコブといえば、ヴォーン=ウィリアムズ「イギリス民謡組曲」のオーケストラ編曲も手がけている)。
「第1組曲」に弦が入ると、なんだか曲の格が上がったような感じがする。この曲はまさしく傑作である、と改めて実感。個人的には第2組曲は管楽合奏のほうが面白いような気がした(第1曲の有名なユーフォニアム・ソロが、普通にヴィオラ群のユニゾンか何かになっちゃったのは、ちょっと芸がないような(^^;)。

前半2曲は、ホルストの若き日、ほぼ学生時代の作品。これも初めて聴いた。いわゆるホルストっぽさは未だ無いけれど、とにかく明るくて若々しく開放的な音楽で、いっぺんで気に入ってしまった。山尾さんは「ドヴォルザークみたい」と書いているけれど、もっと都会的で爽やかな感じのする音楽だ。エリック・コーツなどの英国の「ライト・ミュージック」の伝統に連なるかのように。

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2007.04.21

アルフレッド・リード作品集

アンサンブル練習。
今回はいつものウチの練習らしく(^^;まったりモードで進行。

Cd141
今日は、5枚組CD「アルフレッド・リード作品集+(プラス)」(佼成出版社)を買った。
早速聴きながらPCに向かっている。

リード博士に関する基本資料のひとつである、1994年発売の4枚組CDをベースに、1981年のリード博士初来日時の録音(ロシアのクリスマス音楽、下地啓二氏独奏の「バラード」、音楽祭のプレリュード、他)や、1991年録音の「アルメニアンダンス」全曲を含むいくつかの既出音源を追加して、「アルメニアンダンス・パート1」のコンデンス・スコアをおまけに付けて値下げ新装発売した、というもの。
ずいぶん前に発売にはなっていたのだが、山○楽器のポイントが貯まるのを待っていたもので(^^;

リード博士が東京佼成ウィンドオーケストラを指揮した演奏を久々にまとめ聴きして、さまざまな感慨に耽った。
1981年当時の佼成woのサウンドの、なんと若々しく鮮烈なこと。
ここまでの若さと勢いは、今では聴くことはできないかも。

個々の演奏をとって聴けばこれよりも優れた録音がある曲もあるが、それでも、プロ吹奏楽団を指揮したひとりの作曲家の自作自演のセッション録音がこれだけ残されているというのは、はかり知れない貴重なことだと思う。
次の世代の人たちが、これらの録音の真の価値を発見してくれることを願う。

オリジナルの4枚組に付いていた詳細な曲目解説と作品論は、今回の発売では省かれていた。
その代わり、リード博士初来日当時のものと思われる何枚かの懐かしい写真が、ブックレットを飾っている。
結果、商品の性格として、(オリジナルの)実用的な作品集というより、ある時代や人物を回顧する記念物、という趣になっているように感じた。
それでも、曲目解説と作品論は、資料として残しておいてほしかったな、という気も。

これに収録されている「第4交響曲」と「ヴィヴァ・ムジカ」の録音の当日(1994年1月18日)、リード博士のマネージャー青山氏の御好意で、録音セッションを会場(普門館)の片隅で聴かせていただいたことを、懐かしく思い出す。
相手がプロの楽団だろうがアマチュアバンドだろうが、全く同じことを頑固一徹に大音声で指示するリード博士の姿には、圧倒されたものだ。

19940118

セッション終了後の、記念撮影。

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2007.04.19

ダンディのピアノ曲

「新着音盤」カテゴリでは、久々のエントリ。
入荷を楽しみに待っていたCDが、やっと届いた。

Cd139ダンディ/ピアノ作品集第1集(GENUIN)
山の詩op.15、旅の画集op.33、変奏曲、フーガと歌op.85
 ミヒャエル・シェーファー(Pf)

ヴァンサン・ダンディ(Vincent d'Indy, 1851-1931)は、私の大好きなフランスの作曲家である。
サン=サーンス(1835-1921)やフォーレ(1845-1924)の少し後、ドビュッシー(1862-1918)以下の近代フランスを彩る大家たちには先んじて活躍し、現在ではその双方の狭間に埋もれて忘れられているところはあるが、生前には偉大な名声を誇った作曲家だった。
その作風は厳しいまでに高潔で格調高く、特にフランスの自然の風景からインスピレーションを得た一連の作品の気品の高さは、他には求め得ないものがあると思う。
当ブログでも以前に、最も知られた作品である「フランスの山人の歌による交響曲」op.25についてのエントリ(こちら)や、最晩年の傑作である「海辺の詩」op.77他の新譜について書いたことがある(こちら)。

今般、ダンディのピアノ曲集、という形でまとまったアルバムが出たというのは、(LPは知らないが)CDの時代になって初めてなのではないだろうか。
なんといっても、私の特に好きな作品である「山の詩」の、ジャン・ドワイアンの録音(Erato)に次ぐ演奏がやっと聴けるのが嬉しい。「旅の画集」は、5曲からなるオーケストラ版のCDというのは出ているが、これは全13曲のオリジナル。中部ヨーロッパの深く暗い森や田園の風景を(見たことはないけど;)ストレートにイメージさせてくれる曲だ。
演奏者はミュンヘン音大の教授だそうで、シリル・スコットのピアノ曲集やレスピーギのヴァイオリンとピアノのための作品全集など、知られざる佳作の録音と紹介に情熱を傾けておられる由。
ダンディの第2集もこの秋にリリース予定とのこと。楽しみだ。

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2007.02.27

アフィニス・サウンドレポートNo.33、など

Cd136アフィニス文化財団から、CD「アフィニス・サウンド・レポートNo.33」が届く。
上記ホームページから、無料(希望者多数の場合は抽選)で頒布されているもの。前号(No.32)は当たらなかったが、今回は無事届いた。今号は希望者が少なかったのか、まだ在庫があるようだ。

ブラームス/弦楽五重奏曲第1番より 第1楽章
モーツァルト/セレナード第10番「グラン・パルティータ」より 第1、2、3、4、7楽章
リゲティ/6つのバガテル
シューベルト/交響曲第3番(指揮:下野竜也)

今号は、アフィニス文化財団が日本のオーケストラ支援の一環として長野県飯田市で毎年開催している「アフィニス夏の音楽祭」の、ライブ録音。
国内のプロオーケストラの若手団員を公募して、内外のベテラン演奏家や音大教授陣とともにレッスン、室内楽やオーケストラの演奏会をするというもので(音楽監督は京都芸大助教授にしてケルン放送響元コンミスの四方恭子)、無料で貰うのが勿体ないほど丁寧に作られたCDからは、ひと夏の輝かしい日々を音楽に集中して過ごした若きプロ演奏家たちの一期一会の記録が、聞こえてくる。

私も昔、セルマーやヤマハのサクソフォンキャンプで、夏の何日間かを、先生・生徒入り乱れて浮世のことを忘れて音楽漬けで過ごしたことを、思い出した。
あれからもう何年経つだろうか。懐かしい。

下野さんの指揮によるシューベルトが、実に清新な気分に満ちた、素敵な演奏だ。大きなメジャー・オーケストラによる録音では全然ないけれど、聴いていると、音楽にはいったい、これ以上の何が必要だというんだろう?という気分になってくる。
サックス吹き的には、ハバネラQ.のSaxバージョンで知られる、リゲティの木管五重奏のための「6つのバガテル」が、興味深し。

Cd137ちょっと前のことだが、行きつけのCD屋さんに、ジャック・ランスロ エラート録音集成が唐突に1セット入荷していたので、衝動的に買ってしまった。
収録内容はこちらを参照(Amazonのページですが、アフィリエイトではありません)。

ランスロって、今となってはもう「昔の人」、ということになっちゃうのかな?
私にとっては、サクソフォンのデファイエ、フルートのランパル、トランペットのアンドレなどと共に、もうデフォルトで「世界一の○○○奏者」、ってことになっちゃっているんだけど。
私が高校1年生のとき(1977年)、来日してNHKで録音された演奏をFMで聴いたときの衝撃は、忘れられない(当時は外国からいろいろな楽器のソリストが来日すると、よくNHKがリサイタル・プログラムをスタジオ収録して放送してくれたものだった。今では考えられない)。
脳味噌をビロードの布で撫でられているような、あんなクラリネットの音は、聴いたことがなかった。

この7枚組のCD、発売当時から気にはなっていたのだが、収録されている音源の中には単品で持っているCDも多かったので(モーツァルトの協奏曲は30年来の愛聴盤。あとブラームスの五重奏とか、モーツァルトの木管三重奏のディヴェルティメントとか、ロッシーニの木管四重奏とか)、買うのをためらっていたのだ。
しかしこの手のCD、いざ欲しくなった時にはもはや入手不可能、ということも多いからなあ。
やっぱり買ってしまいました。

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2006.12.30

2006ラスト新着CD

Cd127ヘンリー・パーセルの「妖精の女王」を聴きながら。
今年は英国の作曲家ベンジャミン・ブリテンの没後30年だったので、ユニバーサルから関連のCDが大量に再発売されたけれども、その中にブリテン指揮のマスク(「オペラ」というより、「歌付き芝居」というイメージのもの)「妖精の女王」が含まれていたのだ。
この「妖精の女王」という作品、別に普段からそんなにたくさんバロックオペラを聴くという訳でもないのに、私にとっては妙に愛着のある作品なのです。大学生の頃シェイクスピア研究家だった(そうなんです)血が騒ぐのかしらん。
1970年の録音ながら、決して「時代がかった」演奏ではない。もっと新しい録音かと思ってしまうくらいだ。
ブリテン&イモージェン・ホルスト(「惑星」のホルストの娘さん)による編纂版ということで、曲順が今まで知っていたものとかなり違う。まあ、もともとこの作品の曲順というのはあって無いようなものらしいけれど。

Cd128先日の都響定期の会場で購入した、敬愛するジャン・フルネ翁の新譜(Fontec)。

デュカス/「ペリ」よりファンファーレ
ビゼー/「アルルの女」第2組曲
イベール/寄港地
ラヴェル/ボレロ、「ダフニスとクロエ」第2組曲
 ジャン・フルネ指揮 東京都交響楽団

2000年5月から、2005年1月の都響600回記念定期に至る4回の演奏会のライブ集成。
これ、私、全部実際に会場で聴いてる。どれも、フルネさん87~91歳の「晩年様式」と、都響、ひいては日本のオーケストラの演奏の充実ぶりの見事な記録だと思う。
なかでも600回定期での「ダフニス」。実演でも録音でも数限りなく聴いた曲だけれど、フルネ=都響のこの演奏ほど感動的な演奏は私はかつて聴いたことがない(断言)。「夜明け」の、崇高な感謝の念のごときものに彩られた瑞々しいオーケストラの響きを聴くがよい。
「無言劇」の見事なフルートソロは、都響首席奏者の寺本氏。京都大学出身、音大を経ずに名古屋フィルの首席から都響首席になった(管打楽器コンクールでも優勝している)、我々アマチュアプレイヤーの星のような存在だ(日頃私は、この人のヴィブラートの方法論を大いに参考にしている)。「アルルの女」のメヌエットもそう。
ちなみに「アルル」のサクソフォンは、宗貞啓二氏だった。(都響でサックスを使う曲というと、大抵宗貞先生が乗っている。)いつもながらの「プロフェッショナル」の権化のようなスキのない演奏ぶりが捉えられている。
「ボレロ」のテナーも宗貞氏。ソプラノは大森義基氏だった。「ボレロ」では、フルネさんが生前のラヴェルから直に教わったという、決してテンポを速めず興奮せず、機械のように音量だけが増大するというこの曲の作曲者自身のイメージの演奏スタイルを聴くことができる。

Cd129かなり前に買ったCDなのだが、今年買ったCDの中でも最大の収穫かもしれない…と思っているのに、まだレビューを書いていなかった。ということであわてて書く。

プーランク/バレエ音楽「典型的動物」(完全全曲版・世界初録音)
同/組曲「牝鹿」
 ヤン・ワグナー指揮 オーデンセ交響楽団(Classico)

ライモンダCDという通販専門のクラシック輸入CD屋さんがある。ヤフオクにもよく業者出品しているのだが、大手のショップには最早求めがたい、玄人のコダワリを感じさせる店なので(自分の店で扱っているCDに「正直なところ演奏はイマイチですが」なんてコメント、普通は言えないよ)、私もときどきCDを注文している。
その店主さんの一押しのCDということで買ってみた。聞いたこともない名前の指揮者と、デンマークの地方オーケストラによるプーランク。パソコンで刷ったみたいな安っぽいブックレットに、CD-Rみたいな見てくれ(CD-Rではなくちゃんとプレスだが)。どうなんでしょ、と思って聴いてみると、これが実に素晴らしいのだ。オケも巧いし、「牝鹿」なんかプレートルの旧盤でしか感じたことのないような本当の自発性と愉悦感を聴きとることができる。
「典型的動物」は、普通聴く組曲版の倍以上のボリュームのある、完全全曲版。この初めて聴く組曲版以外の部分というのが、ものすごく面白い。なんでこんなに面白いCDが、ぜんぜん知られていないのだろう?少なくともプーランクが好き、というような人だったら、絶対必聴だと思うのだが。

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2006.11.12

新譜いろいろ

最近購入のCDたち。(昨日も帰り際に新宿タワーに寄ってしまった;)

Cd121シェーンベルク/浄められた夜、ペレアスとメリザンド、室内交響曲第1番、ブラームス(シェーンベルク編)/ピアノ四重奏曲第1番(EMI)

EMIのGeminiという2枚組廉価盤シリーズで今般発売された、シェーンベルク作品集。タワレコで1390円でした。
バレンボイム指揮(イギリス室内管)の「浄められた夜」が復活したことが嬉しい。シェーンベルクがまだコテコテにロマン派な音楽を書いていた頃の、美しき傑作。バレンボイム盤はLP時代の愛聴盤で、私の「浄夜」刷り込みでもある。
実はこの演奏、バレンボイムの指揮者としてのデビュー盤だった。バレンボイムの若さとやる気がギラギラと満ちた演奏で、バレンボイムという人はこの後こういう演奏は二度としなかったんじゃないかと思うくらい。
バルビローリ指揮の「ペレアスとメリザンド」も、ラトル指揮の「室内交響曲第1番」も、たいへんに思い切りのよい痛快な演奏で、「シェーベルク=退屈」、というイメージ(がもしあるとしたら)を吹っ飛ばすに充分なものだと思う。

Cd122日本作曲家選輯~山田耕筰/長唄交響曲「鶴亀」、明治頌歌、マグダラのマリア(Naxos)

これは「傑作」だ。Naxosのこの日本作曲家シリーズ収録の作品は、様々な楽しい発見があるけれども、この「鶴亀」は、そんな中でも屈指に興味深いものかもしれない。

長唄「鶴亀」を題材にしたシンフォニーということだが、それを西洋風のオーケストラに編曲したという訳ではなく、長唄部分はそのままに、上から二管編成のオーケストラによるオブリガートをくっつけたという代物。
演ずるは、長唄陣は人間国宝・東音宮田哲男ほか邦楽界の大御所たち、後ろは湯浅卓雄指揮の東京都交響楽団(!)。なんでもスコアにはオーケストラ部分しか書いていないそうで、指揮者はまず長唄「鶴亀」をそっくり覚えた上で、自分たちの流儀でいつもどおりに演じている長唄陣に付けていかなければならないのだと。そりゃ大変だ。
実際聴いてどうかというと、NHK大河ドラマのテーマ風の重厚なオーケストラの出だしと、唐突に出てくる歌舞伎調の謡とお囃子とのからみ合いに、最初呆気にとられ、次いで大笑い、やがてだんだん引き込まれてきて、最後は大感動に至る。すごい。聴く前は一種のキワモノかと思ってたけど、いざ聴いてみれば、そのあまりのマジさ加減には尊敬の念を覚えざるを得ない。
西洋の文物をわがものとするために、我々の先達がどんなとんでもない実験をしてきたか、心ある方は聴かれるとよい。
他の2曲は、普通の西洋クラシック音楽のスタイル(後期ロマン派風)による作品。1910-20年代という作曲年代を考えたら、驚異的によく出来ている。

しかし、こういうものがワールドワイドに発売される、というのはすごいことだけれど…「日本のクラシック音楽」というものに対する、ある種の誤解を、海外に定着させることになるかもしれぬ、ともちょっと思う。

…これだけで、書くのに結構時間がかかってしまった。
まだまだあるんですが、続きは気が向いたら後日。

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2006.11.01

平野公崇氏の新譜

Cd118平野公崇/シンフォニア(Cryston)

C.Ph.E.バッハ/シンフォニア ニ長調Wq.74、フルート協奏曲ニ短調、スペインのフォリアによる12の変奏曲Wq.118-9、無伴奏フルートソナタ イ短調Wq.132
 平野公崇(S.Sax)、大塚直哉(Cemb)、松野弘明(Vn、コンサートマスター)ほか弦楽アンサンブル

オクタヴィアから先週発売されたばかりの、平野さんの新しいCDを聴く。
見てのとおり、曲目をタイプしていても、到底サックスのCDとは思えない。

普通ソプラノサックスでバロックを吹こうと考えるとき、オーボエの音色をイメージして、音のアタックというか立ち上がりを強めにして、音色は禁欲的に、なんて考えませんか。私が昔ヴィヴァルディの「忠実な羊飼い」をソプラノで吹いた時は、そうした。誰に教わったという訳ではないので、違うという人もいるかもしれないが。
ここでの平野さんは全然そうじゃない。自分が吹いているのがサックスであることを隠そうとしない。にもかかわらず(いや、まさにそれ故に?)、聞こえてくる音は、例えば本間正史さんのようなバロックオーボエの名手の演奏と驚くほどの共通点を感じる、エモーショナルなものだ。

平野さんのすごいところは、「僕はこういうことが出来ます」、ということを演奏で一切言っていないところだ。
そんなことを言う前に、自分自身が即、音楽になってしまっている。
完璧な自発性。ある種の天才の業としか言いようがない。こういう種類の天才というのはあんまりいないので、なかなかそういう風には思われないだろうけれど。

クラシックの香り豊かな、とても聴きやすいアルバムだけれど、深く分け入ってゆくと、深淵のように底知れない奥行きが姿を現わす。そんなCD。

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2006.10.19

デファイエのイベール

Cd117mckenさんのブログで、デファイエが1950年代にジャン・フルネ指揮ラムルー管弦楽団のバックで録音したイベール「コンチェルティーノ・ダ・カメラ」のCD復刻の記事を見て(こちら)、注文していたものがアメリカから届いた。

版元はHaydn House。昔のLPレコード音源のCD-Rでの復刻発売を専門とする業者らしい。(サイト中のCD Catalogの18ページにある)
この音源自体は、何年か前に(よくお名前の出てくる)レコードコレクター木下さんのご好意で既にCDに落としていただいたものを所有しているのだが、せっかくこうして誰でも入手可能となったのだし、また元のLPより収録曲数が多く(オリジナルは「寄港地」、コンチェルティーノ・ダ・カメラ、ドビュッシー「ダンス」の3曲)、敬愛するジャン・フルネ師の未聴の演奏がたくさん聴けるということもあり、買ってみようと思ったのだ。
1枚$10、送料$5。サイトからクレジットカードで買えるのだが、ブラウザのせいか、どうしても一度の注文で商品代と送料を同時に確定することができず、オーダーを二度出すこととなった。

一聴してたいへん良心的で丁寧な復刻だと感じた。ノイズ(針音)がほとんど無くて、マスターテープからの復刻かと思ってしまった位だ。音のリアルさでは木下さんのトランスファーには劣るけれど、普通に聴いて楽しむぶんには(モノラルである以外)何の違和感もない。
30代前半(おそらく)のデファイエのソロは鮮やかの一言。ミュールの影響を多分に受けつつ、ミュールとは確かに異なる近代的な個性を明瞭に表している。この個性は1992年に最後に聴いた時まで、一貫して変わっていない。
若き日のフルネの指揮もキビキビしていて大変すばらしい。フルネというと「世界最高齢指揮者」としてもてはやされるようになった頃の巨匠風晩年様式ばかりが知られているけれど、本来はこういう指揮者なのですよ。オーベールの序曲集の、なんと清潔で推進力があって、そして隅から隅まで音楽的なこと!

Lc3478

木下さん提供による、オリジナルLP(EPIC LC3478)ジャケット。

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2006.10.08

Masters of The Oboe

Cd116というタイトルのCDを買った。
これは、すごい。
収録内容詳細はこちら(タワレコのサイト)を見てみてください。←アフィリエイトではありません
まさしく、オーボエの名曲・名人・名演奏。世界のオーボエの潮流をCD2枚で俯瞰する、圧倒的な企画だと思う。

ずっと聴いてみたいと思っていた、全盛期のローター・コッホのR.シュトラウスを聴きながら、しばし感慨。
カラヤン治下のベルリンフィルの首席奏者として、在職35年。私の好きなモーリス・ブルグのようなラテン的な輝かしさとは正反対の音色だけれど、一点の曖昧さもない剛毅な楷書体の演奏は、聴いていて思わず姿勢を正してしまうものがある。

ローター・コッホが最後に来日した時(1995年)、都響に客演してこのR.シュトラウスを吹いたのを私は聴いている。
足元はかなり不確かで(椅子に座って演奏した)、演奏も相当衰えが見られたけれど、気魄は充分、まるで指揮者なんかどうでもいい、とばかりに、要所要所で身体ごとコンマスの方に向き直って大きなアクションで指示を出すありさまは、音楽に取り憑かれた者の「業」を見るような、一種壮絶な風景だった。

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2006.09.27

ベルティーニのラヴェル、他

東京のプロオケ聴き歩き仲間でもある高校の先輩Yさんが、「レコード芸術」最新号の海外盤試聴記に、ガリー・ベルティーニ指揮のフランス物3枚(Capriccio)が載っていると教えて下さった。
マーラー指揮者としての面ばかり謳われるベルティーニという指揮者について、フランス音楽の解釈者という立場で正面から論評した、大手の活字メディアとしては初めてに近いものではないかしらん。大歓迎。

しかし、最近「レコ芸」読まなくなったなー。ネットや無料メディアがこれだけ充実してくると。
ちなみにワタシでしたら、クラシックの新譜CD、DVD情報については、山野楽器で配っているVarieという無料誌でほぼ事足りてます。

Cd1143枚のうち、ドビュッシーの作品集については発売されたばかりの頃にレビューを書いたけれど(こちら)、今日はラヴェルを聴いてみる。

ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲、ピアノ協奏曲、ラ・ヴァルス
 ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
 ガリー・ベルティーニ指揮 ケルン放送交響楽団

「ダフニス」の高揚感が素晴らしい。98年、都響の音楽監督就任披露演奏会で、「ダフニス」全曲をとり上げていたことを思い出す。「夜明け」の、灼熱の太陽の光が夜の暗さに慣れた目を射るような、むせるように濃厚な色彩感。「全員の踊り」の、じっくりと官能的に盛り上がってゆく、底鳴りのするような迫力。
ピアノ協奏曲も、アルゲリッチのハジけっぷりが良く捉えられていて、たいへん楽しい聞き物となっている。
ただ、これらの曲に関しては、フランスのオーケストラで聴きたかったな、という思いもある。いかにもドイツの放送オーケストラらしく、非常にそつなくこなした巧い演奏なんだけど、何かの拍子にふと出てしまう、慣れない外国語を操るときのような不器用な感じが、ドビュッシーだとそれほど気にはならないのに、ラヴェルだと妙に…。
そういえばジャン・フルネ氏は、リハーサルの時に「ラヴェルは小さな精密機械のように完璧に演奏されなければならない、」と繰り返し言っていたっけ。

勿論、それでも、現代のラヴェルの演奏として、十分に聴くべきもののある充実した記録であることは間違いない。
そして、私にとっては、かけがえのない記憶とともに在り続けるだろう。


ついでにもうひとつ、新着CD。

Cd115ボロディン/交響曲第1番、第2番、第3番
ホセ・セレブリエール指揮 ローマRAI交響楽団(ASV)

今週末(29日)の読売日響定期公演に、毎年この季節おなじみのゲンナジー・ロジェストヴェンスキー氏が客演して、ボロディンの交響曲全3曲一挙上演という珍しいことをやってくれるのだ。
これは是非聴きに行こうと思っていて、しかしボロディンの交響曲はよく知っているのは2番だけなので(愛聴盤はマルティノン指揮ロンドン響)、他の交響曲の入っているCDを探していたら、たまたまこういうちょいと珍しいCDが店頭にあった、という訳。
セレブリエールは1938年ウルグアイ生まれの作曲家・指揮者だそうだ。何者じゃコイツ、と思いながら聴いてみたら、これがなかなか聞かせるもんで、ちょっとびっくり。マルティノンなどと同じように、作曲家兼業指揮者ならではの明晰さが基本にあるんだけど、ちょっとした細部のよく歌うことといったら。イタリアのオーケストラだからか?いや、それだけじゃない。
音楽家は、名前じゃありませんねえ。聴いてみなきゃ分からないものだ。

最後に拍手が来るのでライブ録音だと分かるが、会場ノイズはほとんど全くと言っていいほど聞こえない。

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2006.09.11

新日本フィルのマーラー3番

Cd113ブラームス/交響曲第1番、マーラー/交響曲第3番
 クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団ほか(Fontec

夏の終わりに、「夏の交響曲」を聴く。マーラーの交響曲第3番の新着CD。

ブラームスの方が先に入っているけれど、これはあきらかにマーラー3番がメインのCDでありましょう。
マーラーの方は、新日本フィルの現・音楽監督、クリスティアン・アルミンクの、音楽監督就任記念演奏会(2003年9月)のライブ録音。
私も客席で聴いていて、とても印象深い演奏だったことを覚えている。たしかコンサートの冒頭にモンテヴェルディのマドリガルか何かを演奏し、そのままアタッカでマーラーに突入したのだった。
ライブCDが発売されたのは知っていたけれど、なぜか購入するタイミングを逃していたのだが、先日たまたま見つけた機会に、エイヤッと買った次第。なにしろ1時間40分もかかる長い交響曲なので、気合入れないと聴けない。

聴き始めての第一声は、「ホルンが上手ぇー!」。ソロもテュッティも、物凄く良い音だ。
第1楽章の半分より少し後に、ヴァイオリンソロと絡むホルンのちょっとしたソロがあるんだけど(このCDだと、トラック7の4'25"あたり)、響きといい歌いまわしといい、ちょっと今だかつて聴いたことがないほど素晴らしくて、茫然としつつ聴いた。このソロのためにこのCDを買ったと思っても惜しくないくらいだ。さすが吉永さん(新日フィル首席ホルン奏者。私は日本一のホルンの名手だと思っている)。
いや、ホルンだけじゃなく、マジで新日フィル上手いっすよ。オーボエをはじめとするなめら~かな木管、繊細な弦。演奏の完成度はライブとは思えないほどだ(実際に会場で聴いた時も、すぐにそれと分かるような大きな演奏ミスはほとんど無かった記憶がある)。弦の音の厚みは若干不足気味ながら、ブラームスだったらともかく、こちらは曲が曲なのでさほど気にならない。
例の第1楽章、トロンボーンの大ソロは宮下宣子さん(CDには特に書いてないけれど、会場で見ていたので)。あの小柄な身体(あまりに小柄で隣席の奏者とベルの高さが合わないので、いつも椅子の下に箱を置いて上げ底状態で座っているほどだ)が信じられないような、ぶっとい音で入っている。というか、この音だけ聴いたあとで実際の宮下さんの姿を見たとしたら、びっくりすると思うぞ。

指揮者は、やはりまだちょっと若いところがあって、うまくまとめてはいるんだけど、フィナーレ(第6楽章)のテンポが、緊張感をキープし切れず?さっさと終わってしまう感じがするのが惜しい。
これでフィナーレを本当に感動的に歌い上げていたとしたら、まさに天下無敵の演奏になったところだったが。

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2006.08.25

マルケヴィチのグノーとドビュッシー

ユニバーサルから、イーゴル・マルケヴィチ(1912-1983)指揮のCDのシリーズが一気に発売された。
マルケヴィチという指揮者は、マニアックに追っかけているという程ではないけれど、バレエ・リュス(ロシア・バレエ団)のバレエ音楽集2枚組(モンテカルロ・オペラ管との名盤。プーランク『牝鹿』の初全曲録音など)をはじめとする、いくつかの録音を愛聴してきた。
なお、マルケヴィチについては、ネット上に畏友斉諧生さんが興味深いページを公開しておられます(こちら)。

Cd112まずはとりいそぎ買ってきたのは、グノーの交響曲第2番とドビュッシー「海」他を収録した(コンセール・ラムルー管弦楽団)1枚。
(しかし、「黄色の額縁付」のCDなんて、ずいぶん久しぶりに買ったような気がする)

実はグノーの第2番というのは(あまり知られてないけど)私の大好きな交響曲で、どのくらい好きかというと、好きな交響曲ベスト1は苦しいけれど、ベスト5まで挙げるならその日の気分次第で入ることもある、という程度。
(ちなみにベスト3は、マーラーの3番、ベートーヴェンの6番、ダンディの「フランスの山人の歌」辺りかな。ある意味みんな「田園交響曲」だ)
モノラル録音ながら、この曲の歴史的な名盤(国内初発売)ということで、是非聴いてみたいと思ったのだ。
まだ2回ばかり聴いただけだが、第1楽章の緊張にみちた序奏と強烈に推進する主部の対比といい、まるでベートーヴェンの「第9」のアダージョのように(下降音形がゆっくりと重なる導入部など、実際「第9」によく似ているのだが)格調高く歌われる第2楽章といい、物凄い急速テンポで鮮やかに弾かれるフィナーレといい、この曲の面目を一新する演奏だと思う。

この曲、19世紀のフランス人作曲家の書いたシンフォニーが、最もドイツ古典派のそれ(ベートーヴェンとか)に接近した瞬間の記録、という雰囲気がある。
モノホンのベートーヴェンが好きな方からすれば、いささかパンツのヒモが緩い感じがあるのだろうけど、軟弱なフランス音楽好きとしては、このくらいがちょうどいいです。

カップリングのドビュッシー「海」も面白い演奏で(こちらはステレオ)、彫りが深くてデッサンの鮮やかな、ベルティーニの行き方と共通するような印象。でもフランスのオケなので、音色自体は親和性が高い。
普通の演奏だと聞こえないようなパートが突然よく聞こえてきたりする。

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2006.08.17

ダンディの新譜

Cd111先日ダンディの「フランスの山人の歌による交響曲」についてのエントリをupしたばかりだが、そのダンディの、もうひとつ大好きな作品の新譜CD(フランス盤)を、入手。
6月頃から発売が予告されていて、入荷を今か今かと待っていたものだ。

ダンディ/海辺の詩、イスタール、地中海の2つ折り絵
 エマニュエル・クリヴィヌ指揮 ルクセンブルク・フィルハーモニック(Timpani

あちらが「山」の音楽なら、こちらの『海辺の詩』と『地中海の…』は、その名のとおり、海の音楽。
昔(1980年代)プレートル指揮のCDが発売されていて親しんでいたのだけれど、なぜか長いことCDは世界初録音のそれ一種しか存在していなかった。やっともうひとつの録音が登場、しかもクリヴィヌの指揮とあらば悪かろう訳はない。

『海辺の詩』は、以下のタイトルの付いた4つの楽章から成る。
1. 静けさと光-アゲ(地中海)
2. 藍色の歓び-マジョルカ島ミラマール(地中海)
3. 緑の水平線-ファルコナーラ(アドリア海)
4. 大洋の神秘-ラ・グランド・コート(ガスコーニュ湾)
どれも、印象派的、と言ってもいいだろう、まだ見たことのない地中海の風景を強烈にイメージさせてくれる曲だ。
1曲めは、このCDのジャケットに使われた、アゲの海岸の赤い岩々のある朝の風景を、2曲めは輝かしい昼の海を、3曲めは曇り空の下の海岸沿いを走る汽車の車窓からの眺めを、4曲めは静けさの中へたそがれてゆく夕べの海を。
サクソフォンを含むオーケストレーションが、たいへん効果的だ。スコアを見たことがないので断言は出来ないけれど、アルトとテナーが使われているのだろうか。木管群の低音域にファゴットでなくテナーサクソフォンを配置しているのではと思われる箇所がいくつかあって、実にこの曲の喚起するイメージにふさわしい暖かでなめらかな色彩の響きを聴くことができる。

『地中海の…』は、「朝の太陽」「夕べの太陽」の2曲からなる。…長くなるので、このくらいにしておきましょう。
要するに、たいへん美しく素晴らしい曲で、どうしてこんなに演奏されないのか、私としては不思議で仕方がないのです。

ダンディにはもうひとつ、「山の詩」というピアノ曲があって、これまた私の愛して止まない曲なんだけど、これらの、格調高く感興豊かな作品の数々に親しんだ後、彼のたとえば弦楽四重奏曲や他の管弦楽曲(交響曲第2番とか)を聴くと、その晦渋さには正直、驚かされる。
前のエントリでご紹介したダンディ自身の言葉のとおり、本当に、「自然」というものから真のインスピレーションを得ていた方なのですね。

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2006.08.01

ベルティーニのドビュッシー・ライブ

ついに発売されるという話を数週間前に聞いて楽しみにしていた、われらがベルティーニ指揮のケルン放送響による、フランス物のライブCDシリーズ3枚(ドビュッシー、ラヴェル、ベルリオーズ)が、やっと店頭に並び始めた。
まずはドビュッシーの1枚を購入。

Cd108

ドビュッシー/海、夜想曲、牧神の午後への前奏曲
 ガリー・ベルティーニ指揮 ケルン放送交響楽団ほか(Capriccio)

ベルティーニが亡くなった時にもブログに書いたけれど、ベルティーニという指揮者は、世界屈指のマーラー指揮者であるのと同様に、現代におけるフランス音楽の見事な解釈者でもあった。
そのことは私なぞは、上記リンクにあるとおり、1994年のケルン放送響の来日公演や(リンク先には1993年とあるが間違い)、都響での実演を聴いて身をもって知っていたけれど、いかんせん、録音となって残っているものがほとんどなかった。
そのことを証明できるCDがやっと現れてくれて、嬉しい。

「海」の超本格な響きは、とても非フランス系の指揮者にドイツのオケとは思えませんよ。
そのうえ、たいへんにドラマティックで、鮮烈な演奏であります。

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2006.07.17

安川加壽子のドビュッシー全集、CD発売

Cd106安川加寿子 ドビュッシー・ピアノ音楽全集

先日のコンサートの会場で入手したCD。
音楽之友社刊のドビュッシー・ピアノ曲全集(楽譜)の校訂を担当する等、日本におけるドビュッシーの権威であった安川加寿子の、録音による全集の、待望のCD復刻。

ビクターの発売ということになっているけれど、プライヴェート盤ぽい感じもある。こちらで入手可能のようだ(山野楽器のサイトだけど、アフィリエイトではありません)。

CD4枚、ざっと聴いてみたのだが、ちょっと驚き。これ、完全にネイティヴのフランス語の演奏だ。
ちょっと地味だけど軽やかでニュアンス豊かな響きの作り方、テンポの微妙な先走り具合など、20世紀初頭生まれの世代のフランスのピアニスト達の演奏と、驚くほどの共通性がある。
もし、ジャン・ドワイヤンやアニー・ダルコの未発売音源の復刻、と言われて聴かされたとしたら、私だったら何の疑問も持たずに信じるだろう。

初出は昭和50年1月とのこと。1970年代当時の日本で、これほどのドビュッシー全集が録音されていたとは…
平島正郎(こちらは、研究分野における日本のドビュッシーの最高権威)による全曲の詳細な作品解説をはじめ、当時のまま(おそらく)のライナーも貴重。
録音年月や会場が載っていないのが残念だけれど(歴史的録音の復刻にとっては重要な情報だと思うのだが)、この録音のCD復刻に尽力された方々に、感謝の意を表する次第。

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2006.06.29

「ぼくは12歳」

最近まとめてCD化再発売された高橋悠治の一連のシリーズの中に、「ぼくは12歳」が入っていたので、買ってきた。
LPで出ていた頃以来、25年ぶり位のご対面。サイズは小さくなったけれど、嬉しいことに紙ジャケット