【三善反戦三部作(5月12日)】
こちらも、記録に残しておくべきコンサート。
苛烈で激しく、容赦のない、夢に出てきてうなされそうな怖さの漲った時間を過ごしたが、三善さんには「私がこの目で見た地獄に比べたらこんなもの、、」とか言われそうだな。
考えてみたら私が子供の頃というのは(「レクイエム」が初演されたのは1972年である。私は10歳)、戦争が終わってから20何年とか30何年しか経っていなかった訳で、いま自分が30年前のことをどれほど鮮明に覚えているかを思えば、本当に記憶に生々しい時代だった訳だ。
とはいえ戦争の記憶というものはあっという間に消えて行くもので(多くの戦争体験者は思い出したくもない記憶ゆえ語らないまま亡くなって行ったし、あまりに辛い記憶は忘れるよう仕向けられるというのも人の記憶の特性だったりする)、そこから更にもっと長い時間が経った今、もはや記憶というのはこういう形で受け継いで行くしかない訳で、よくこんな作品を残してくれたものだと思う。とんでもない曲で、とんでもない演奏会だったが、やらなければならないものだった。壮絶な努力と集中力で演じきった演奏者の皆さんに拍手だ。
三善さんは私の父と同じ昭和8年生まれである。かなり長いこと東京文化会館の館長をされていたので、主催公演の際には会場でよくお見かけしたものだった。あのちょっと異様なほどの痩身が印象に残っている。
この演奏会、終戦75年を期して2020年に企画されたもののコロナ禍で中止となったが、三善さんの生誕90年・没後10年の今年、まさにこの東京文化会館で完遂できたことを慶びたい。としか言えない。
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