フランクの評伝
良書。好きな作曲家がいたら評伝を一冊読んでおけ、とは私がいつも思っている(言っている)ことだけれど、この本は学者や評論家が書いたものではなく、同業の作曲家、しかもその本人に20年にわたり師事し、公私ともに近しく接した高弟の手になるものという、ほとんど類例のない書だと思う。
師に対する溢れるばかりの尊敬の念に、同業者ならではの専門的かつ立ち入った視点、同時代のフランス音楽界についての冷静でリアルな見聞の数々がたいへん興味深い。
弦楽四重奏曲とかオルガン作品とかオラトリオ「至福」とか、本書で分析されているフランクの作品は必ずしも一般によく知られているものではないが、そういう部分は斜め読みしてでも一読の価値はある。というか、こういう筆致で書かれると聴きたくなる。
昭和28年刊行の書の復刊。よくぞ出してくれた。
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