《書籍》『指揮を磨こう!』
昨年暮れのFacebook投稿から加筆転載。
武田晃『指揮を磨こう!-吹奏楽レベルアップのために』
ヤマハ・ミュージックエンターテインメント
こんな本を読んでいます。
アマチュア吹奏楽人のための、実践的な指揮の教本ですが、技法的な面のみにとどまらない奥深さのある本です。
吹奏楽というものは音楽(芸術)と教育(学校教育と社会教育の双方)の両方の領域に関わっていて、「プロ」が存在し難いジャンルでもあります。
「音楽」のプロ(演奏家、指揮者、トレーナー)や「教育」のプロ(学校の先生)は勿論、たくさんいます。しかしその2つが関わる時に、一方での常識が必ずしももう一方のそれではない場合が少なからずあったりして、そのような場面を客観的にかつ統合的に見ることのできる「プロ」の立場というのはとても稀少なのです。
指揮者であり、日本全国の音楽隊の指導的立場にある陸上自衛隊中央音楽隊の隊長を長く務め、現在は尚美と武蔵野音大で教鞭を執る著者の武田氏こそは、そのような「プロ」と呼ぶにふさわしい方でありましょう。
指揮の技法についてのレッスンも勿論ですが、その前後の、指揮者の役割と心構え、練習から本番に至る計画と準備の仕方といった、類書の少ない部分の的確さと簡潔さが大変貴重ですばらしいものとなっています。
そして、指揮の技法(明示されていませんが、いわゆる「齋藤メソッド」に基づいています)にしても、それは何も指揮者にのみ必要なスキルではなく、例えば少人数のアンサンブルに於いては、曲の始まりの合図に始まって、感じているテンポやタイミングを受け渡したり受け継いだり、という場面が頻繁に出て来ますが、これらを分かりやすくこなす技術はまさに「指揮法」そのものです。
アンサンブルをやる人間は、すべからく指揮法を勉強するべきだ、というのは私自身の昔からの持論ですが、その際の簡便でしかも本格的なガイドになってくれるものだと思います。
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