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2016.12.31

2016後半・コンサート総集編

2016年も終わりだ。
年間で聴いたコンサートは140回超え、自分の本番は20回、今年も充実した1年を過ごすことができた。
出会いもあれば別れもあり、特に今年は公私ともに本当に大切な人を失ったことが大きかったが、それでも明るく、前向きに生きていくのがこの世に残った者の務めだと思う。

ブログはすっかりお留守になってしまったので、年が替わる前に、こちらにまだ書いていないが強く印象に残っているコンサートの記録をまとめておく。

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読売日本交響楽団 第562回定期演奏会[ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー指揮](9月26日 サントリーホール)

ショスタコーヴィチ・プロ。黄金時代、ピアノ協奏曲第1番、交響曲第10番。
巨匠ロジェヴェン(1931年生まれ)の指揮する姿を見るのももしかしたら最後かもしれないと思い、行ってきた。

50cmはあろうかという長い指揮棒を、「オラ、弾けや」とばかりにドサッと投げ出すしぐさをすると、オーケストラから鋼鉄のような響きが瞬時にズドーンと立ち上がってくる。指揮法もへったくれもない。
もはやこの人、自分がオーケストラを振って合奏をどうにかしよう、なんていう次元を超えてしまっているようだ。
これが「ショスタコーヴィチ」だ、という、自明と確信。
すごいものを見てきた。
この指揮!このテンポ!これでこう弾ける読響すごい(皮肉でなく)。

「黄金時代」のソプラノサクソフォン・ソロは松雪さん。ユーフォニアム(バリトンホルン?)は外囿さん!

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Kサクソフォーンコンクール審査員による サクソフォーンコンサート(9月27日 六本木・Kコンサートサロン)

小串俊寿、雲井雅人、平野公崇の三氏(!!!)によるジョイントリサイタル。
ある意味、日本の「クラシック」のサクソフォンの現在が、どれほどの幅の広さと深さと面白さを獲得するに至ったか、ということを実感させる、貴重な機会となった。
「一緒にやるわけでもなく、打ち合わせもなし、ただ集まって並べただけ」(ご本人談)というコンサートだったけれど、敢えて強引にアウフヘーベンに持ち込むことなく、それぞれの世界をそのまま並立的に見る面白さがあったような。
中でも、平野さんのバッハの竜巻のような熱演のあとを受けて大トリを取った雲井さんの、会場の空調を切っての静寂のなか演奏されたマスランカの静謐で集中した美しさは、格別なものがあった。
そういえば雲井先生には30年くらい前に、「スーパーソフト」という極弱音奏法を教わったことを思い出した。
いかんいかん、忘れてる場合じゃないな。ちゃんとやらなきゃ。

ひとりでこの3人の相手をしたピアニストさんは大変だっただろうと思う。
今日の、香川県出身の香川明美さんというピアニストは、まだ芸大の院生だそうだがとてもセンスの良いピアノを弾く人で、もう一度聴きたいな、と思わせる独自の魅力があった。

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上野耕平 サクソフォンリサイタル(9月29日 王子ホール)

ヤマハホールでのデビューリサイタル、B→C(オペラシティ)と、チケットを持っていながら行けなかった事態が続いていたので、実は一晩ちゃんと聴くのは初めて。

制約とか限界とかいうものがまるで無いかのような軽々とした技巧は勿論だけど、なにより自然で率直きわまりない歌心そのものにうたれた。
まるで、「歌心」なんていう特別なものすら無いかのように、平明で満ち足りたたたずまいを持った音楽の持ち主だった。

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N響90周年&サントリーホール30周年 NHK交響楽団・特別演奏会(10月6日 サントリーホール)

パーヴォ・ヤルヴィ指揮でマーラーの交響曲第3番。
1時間40分の別世界の旅だった。

ちょうど20年前、サントリーホール10周年の演奏会で、ズービン・メータ指揮のやはりN響でマーラーの3番が予告されていたが、結局曲目変更で「巨人」になった、ということがあった。
20年越しの意趣返しか。

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サタデースペシャル 須川展也・サクソフォンの明日へ(10月15日 第一生命ホール)

午前11時開演。チック・コリア委嘱作の初演を含むランチタイム・コンサート。
休憩なしの1時間15分。
8月の発表会で須川さんにお会いした時、「ぼくが命懸けてる本番だから是非聴きに来てくれ」と言われた演奏会だった。
その言葉に偽りはなかった。凄かった。

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井上二葉(ピアノ)演奏会~古沢淑子生誕100年記念-先達への感謝-(10月21日 浜離宮朝日ホール)

日本ピアノ界・フランス音楽界の大ベテラン、井上二葉先生。
バロック(リュリ、ラモー、カンプラ)に始まって、フォーレ、ドビュッシー、ラヴェルを経てメシアンに至る、フランス音楽史を通暁するがごとき曲目。アンコールも3曲も!
昭和5年生まれの86歳。生きて喋って歩いてるだけでもすごいお歳なのに、何なんでしょう。凛とした雰囲気と真っ直ぐな背中、かーんと澄みわたった、冴えざえとした音色と響き。凄すぎる。

井上二葉さんの独奏会は何度か聴いたことがあるが、今回はまた一際すばらしく、自身の音楽人生の集大成かと思うような深みと輝かしさが格別だった。

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エリック・サティとその時代~レクチャー&コンサート 第3回「サティとピアノ…そして、言葉」(10月22日 東京藝術大学奏楽堂)

エリック・サティ生誕150年の年に芸大がシリーズで打ったイベント。
この日は「ピアノの日」。
サティが楽譜に書きつけた数々のヘンテコな言葉(笑)とともに、数多くのピアノ曲が演奏された。
なかでも後半の高橋アキさんのソロは、この人がどれほどサティに人生を賭けてきたかがひしひしと伝わってきて感動的だった。
ご主人の秋山邦晴さん(故人)とともに書かれたサティについての文章は、40年近く前から読んでいたが、演奏は初めて聴いた気がする。
本業の役者さんよりもよほど聞きとりやすいナレーションともども、堂に入った見事なものだった。

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NHK音楽祭2016~パリ管弦楽団演奏会[ダニエル・ハーディング指揮](11月18日 NHKホール)

30年以上、来日の度に聴き続けているパリ管。
今年はNHK音楽祭(公開録画形式のコンサート)で安く聴けて有難い。
ブリテンの「セレナード」のノーブルで格調高い表現と繊細な弦の響きに、現在のハーディングとパリ管の最良の面が出ていたように思う。
フランスのオーケストラ、っていうイメージじゃないが、まあ、パリ管てのは昔からそうだったから。

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NHK交響楽団 第1851回定期演奏会 オペラ「カルメン」演奏会形式全曲(12月9日 NHKホール)

デュトワ指揮で「カルメン」全曲。
3時間半の長い演奏会だったが、たいへん面白く聴けた。ソリストもオケも合唱・児童合唱も最高。

実は「カルメン」の音楽を全曲聴いたのは初めて。
日頃はオーケストラを中心に聴いていて、それでも複数のオケの定期会員を20年以上も続けていると、少なくない数の演奏会形式オペラに接することにはなるが、オーケストラの定期でとり上げられるオペラというとどうしても、オーケストラが「主役」になれる近現代物(Rシュトラウスとかワーグナーとか「ペレアス」とか)が多くて、「カルメン」という選択肢はある種のエア・ポケットだった。

それにしても、ビゼーは天才ですわ。
最初から最後まで全部、歌えるメロディばっかり。無駄が全くない。
これほどの傑作が、「初演の際は散々な不評」だったんだから…同時代の耳というのはまったくもう。

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東京都交響楽団 第821回定期演奏会[ヤクブ・フルシャ指揮](12月14日 サントリーホール)

素晴らしいマーラーだった。
世界の舞台へのデビューが続く35歳の若き俊英指揮者が描き出す、28歳のマーラーが書いた「巨人」は、まさに正しく「青春のシンフォニー」だった。
マーラーの語法を知り尽くした都響が、しかしインバル等のマーラーとは全く別種の演奏として現実の音としていいた。

一般に、人は若いうちは柔軟だが年をとると頑固になるとか、若いと革新的で年寄りは保守的だとか言うが、半分は当たってるけど実はそう単純な話でもなくて、若いからこそウジウジして大胆な行動がとれなかったり、若いがゆえにひとつの考えに固執して離れられなかったり、まあ、色々なんですわ。
ただ、ここぞと思い切った時のパワーというか勢いには、年寄りは絶対かなわないけれど。
そんなこんな、全部を含めた「若さ」というものを、この上なく美しく炸裂させた音楽だったと思う。

それにしてもマーラーを聴く(見る)のは面白い。本当に面白い。

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ファブリス・モレティ サクソフォンリサイタル(12月15日 ルーテル市ヶ谷センター)

ファブリス・モレティ(パリ10区ベルリオーズ音楽院サクソフォン科教授)と服部真理子先生の、恒例日本ツアー初日。
大盛況のうちに終演。

真理子先生と共に、カタコトの日本語で漫才のようなやりとりを繰り広げる人懐っこい姿と、いざ楽器を持って演奏する時の、孤高、と言ってもいいようなストイックな気高さと圧倒的な技術と存在感と、知性と感覚を統合するようなファンタスティックな色彩感は、フランスの音楽と音楽家というものの最良の姿を顕すかのようだ。

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神奈川フィルハーモニー管弦楽団 第325回定期演奏会[パスカル・ヴェロ指揮](12月16日 横浜みなとみらいホール)

久々にパスカル・ヴェロの指揮を聴いた。
前半のミヨー(世界の創造&屋根の上の牛)が素晴らしかった。
前者の波多江さんのサクソフォンが、(バーンスタインの有名な録音の)デファイエを彷彿とさせる音色感。

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各川芽 ソプリロ・ソプラノサクソフォンリサイタル(12月18日 sonorium)

曲がったサックスが一切出てこない(アンコールで御主人の宮崎さんがバスを吹いたが。笑)、各川さんでなければ実現不可能なリサイタル。
ソプリロ(普通のサクソフォン奏者にはほぼ演奏不可能)のコントロールがすばらしい、というより、音楽そのものがすばらしい、と思えたことがよかった。
前半の、ソプラノによる編曲物も、クラやオーボエの曲をソプラノサックスで吹く時にどうしても出がちな俗っぽさのようなものがほとんど表に出てこない、格調高い仕上がりとなっていたのが印象的だった。

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クリスマス・チャリティコンサート2016[福島県復興祈念演奏会](12月23日 実践学園中学・高等学校 自由学習館フリーダムホール)

この夏にエキストラでお邪魔した先で知り合った指揮者の関田さんが指導している、実践学園中・高の合唱部、中野坂上ウィンドオーケストラ他によるチャリティ・ジョイントコンサート。

高校生たち14人による合唱には度肝を抜かれた。
場内の空気を貫くかのような清冽なハーモニーが、真っ直ぐに耳から心へと飛び込んできた。
14人なんて、合唱というよりアンサンブルみたいなもんで、一人ひとりの負担も練習も半端ではない大変さだろうと思うが、ボイストレーニングもハーモニーも、事前の予想というかイメージを大幅に超えるもので、そしてそれらが後半のポップスともども、「歌」そのもの、「音楽」そのものを感動的にお客さんに伝え聴かせるという基本的な姿勢に乗っかっていることが何よりも素晴らしいと思った。
聴きに行ってよかった。
こういうのを聴くと、オレも頑張らないと、という気分にさせられる。

中野坂上ウィンドオーケストラのステージは、ポップス&ラテン特集。
盛り上がった。
夏の時より音がきれいになったように感じたのは気のせい?
お疲れさまでした。

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