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2014.11.08

サックス氏の二百歳の誕生日に

チラシ画像ファブリス・モレティ サクソフォンリサイタルツアー2014・東京公演(ルーテル市ヶ谷センター)

J.B.サンジュレー/ファンタジー・ブリランテOp.86
P.A.ジュナン/ソロ・ドゥ・コンクール
B.ハイデン/ソナタ
M.コンスタン/ミュジーク・ドゥ・コンセール
H.トマジ/エヴォカシオン(喚起)
P.イトゥラルデ/ギリシャ組曲
A.グラズノフ/協奏曲
 Fabrice Moretti(A.Sax)、服部真理子(Pf)

2014年11月6日。
私たちの楽器を創った、私たちサックス吹きすべてにとっての恩人、アドルフ・サックス氏の二百歳の誕生日を祝うに、これ以上相応しい場所と機会はなかった。

およそ音楽というものに求められる、ほとんどすべてがここにあった。
空気を裂いて飛んでくるようなff(フォルティシモ)、これ以上ないような繊細なpp。静けさと激しさ、外向と内省。
19世紀クラシックの華麗さと節度、20世紀コンテンポラリー(といっても「現代」からは数十年は離れている)の独自の美意識。
トマジの難曲「エヴォカシオン」では、たった1本のサクソフォンで見たことのない異国の空気をそこにあるかのようにまざまざと醸し出し、イトゥラルデではお洒落で颯爽としたヨーロピアン・ジャズの格好よさを、最後のグラズノフでは、1930年代のパリに咲いた前世紀のロマンの残り香を、それぞれに鮮やかに結像した。

サクソフォンってなんて素晴らしい楽器なんだろう。何でもできる。
これこそが、発明者アドルフ・サックスが夢みた理想ではあるまいか。
自分がサクソフォンを吹いていることを、誇りに思った。
サックスさん、ありがとう。(モレティ氏もアンコールで同じことを日本語で叫んでいた。笑)
そして、その感謝の念が、この世界に「音楽」というものが存在することそのものへの感謝、へと真っ直ぐにつながって行くような、そんな稀な時間を過ごしたのだった。

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