浜松にて、アドルフ・サックスのカルテットを聴く
浜松市楽器博物館レクチャーコンサートNo.156
19世紀サクソフォーンのエレガンス~アドルフ・サックス オリジナルサクソフォーンの魅力(浜松市楽器博物館・天空ホール)
J.S.バッハ/アリア
G.F.ヘンデル/舞曲集より リゴードン、ブーレ、マーチ(S.Sax solo)
M.ムソルグスキー/展覧会の絵より「古城」(A.Sax solo)
F.J.ゴセック/ガヴォット(T.Sax solo)
G.フォーレ/夢のあとに(B.Sax solo)
I.アルベニス/セビリア
J.B.サンジュレー/サクソフォーン四重奏曲第1番Op.53
J.リヴィエ/グラーヴェとプレスト(モダン楽器による)
小長谷宗一/サクソフォーン・ガイド(〃)
A.グラズノフ/サクソフォーン四重奏曲Op.109より「カンツォーナ・ヴァリエ」
赤松二郎サクソフォーン・カルテット
赤松二郎(S.Sax アドルフ・サックス1860)
猿渡裕介(A.Sax アドルフ・サックス1859)
中谷龍也(T.Sax アドルフ・サックス1850)
飯守伸二(B.Sax アドルフ・サックス1860)
先々週の16日(土)、浜松まで行って聴いてきたコンサート。
配布資料の話は先にこちらに書いたけれど、演奏会本体のレポートがすっかり遅くなってしまった。
近年、発明された当時のオリジナルの19世紀サクソフォンを顧みるムーブメントは世界的に盛んになってきているけれど、演奏可能な状態の楽器をこうやって4種類揃えてカルテットの演奏会を行なう、というのはなかなかの難事だし、そうそうできることではない。この楽器博物館ならではの催しだと思う。
CDも制作されているけれど(6年ほど前に制作されたCDのことは、こちらのブログ記事でレポートしています)、聴き比べというのは録音ではなくやはり実演でこそ本当に違いが感じとれるものだ。
今回、演奏者が筋金入りのサクソフォン古楽器復興のパイオニアでもある、大阪音大の赤松先生のチームだというのも、貴重な機会。
大御所の赤松先生の演奏を聴く機会そのものも稀少だし。
という訳で、1996年以来17年ぶりに開催されるというこのオリジナル・サクソフォンによる演奏会、東京から駆けつける価値は充分にあると判断した次第。
いつもの週末の青梅訪問の後、八高線と横浜線を乗り継いで新横浜からひかりに乗り、浜松へ。
到着は5時半頃。すっかり夜だった。
博物館そのものの開館は5時までなので、6時半の開場までしばし待つ。
会場の「天空ホール」というのは、そういう名前の特別なホール(部屋)がある訳ではなく、地下の展示室の隅の、階段の脇の上階まで吹き抜けのスペースに小さなステージを設営して、周りに椅子を並べたというもの。
だから開館時間中にはコンサートが出来ないんだな。
鳥の形のオブジェは反響板らしい。
コンサート自体は赤松先生の、物静かな口調の中に一種の凄みを感じさせるMCで進む。
最初は挨拶代わりのバッハの「アリア」。
次いで各人のソロで小品を1曲ずつ。
「普段、この曲目の演奏会だったら、はっきり言って僕らは練習なんかしないんですが、今回はみんな必死に練習しました」とのこと。
軽い、やさしい音だ。音量も小さい。
サクソフォンという楽器が、発明当時「響きの質としては弦楽器に近いものを意図した」とされた、ということをストレートに実感する。特にテナーの音色の(現代の楽器との)違いが著しい。
バリトンもいいなあ。というかこういう音のバリトンが欲しい。
マウスピースやリードは何を使っているか、という具体的な話は特に出なかった。
サンジュレーの四重奏曲の現行楽譜の、極端すぎるダイナミクスの指示(ppからffのクレッシェンドとか、subito ppの多用とか)について赤松先生は、「ダイナミックレンジの小さいこれらの(19世紀の)楽器を想定していたからではないか」と仰っていた。
指示を真に受けて、現代の楽器でドッカンと演奏すると、たいへん不自然かつ滑稽なことになってしまう、ということ。
現実問題として、この19世紀サクソフォンの本当の同時代のレパートリーというのは、サンジュレーの四重奏曲くらいしかないので、プログラミングには苦労の跡が見受けられた。
「セビリア」のマルセル・ミュールの編曲も、グラズノフの四重奏曲も、これらが実際に書かれた頃には既にもっと現代のものに近い楽器が使われていた訳で。
しかし、それでも、聴き比べるという意味ではたいへん貴重なものだった。
途中でモダンの楽器に持ち替えたりもしたが、赤松先生は基本的にモダン楽器でもメロウな演奏をされる方だし、身体が古楽器に慣れてしまっていたということもあるのか、思ったほど顕著な違いは出なかったかもしれない。
さすがに音量は一聴明らかにでかかったが。
モダン楽器のカルテットは、学生さんの団体とかにやってもらっても良かったかも。
ちなみに小長谷宗一さんの「サクソフォーン・ガイド」という曲は、アルル展覧会ボレロから「テイク・ファイブ」まで、クラシック&ポピュラーのサックス・レパートリーをメドレーにした楽しい作品。高橋宏樹さんの「アルルのサックス展覧会」の真面目バージョンというか。
アンコールは、ピエルネの(生誕150年を記念した訳ではあるまいが)「昔の歌」でした。
終演後は、浜松サクソフォンクラブの面々ほか当地の友人知人たちに挨拶するも、翌日朝から練習のため、即帰りの新幹線へ。
赤松先生とは80~90年代のセルマーキャンプでお世話になって以来久しぶりの対面で、さすがに忘れられてるかなーと思ったが、覚えていてくださっていた。
その頃からワタシゃ目立っていたらしいです(笑)
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