大野和士都響、戦争レクイエム
東京都交響楽団 第753回定期演奏会(東京文化会館)
ブリテン/戦争レクイエム
Sp:リー・シューイン、Ten:オリヴァー・クック、Bar:福島明也
晋友会合唱団(合唱指揮:清水敬一)
東京少年少女合唱隊(合唱指揮:長谷川久恵)
指揮:大野和士
(コンサートマスター:四方恭子)
全席完売の東京文化会館。
次期音楽監督就任が発表されたばかりの大野さん、早速に都響への登場。
というか、この出番自体はずっと前から告知されていて、これに合わせて就任発表をしたということだが。
素晴らしい成果だった。
ブリテンの「戦争レクイエム」といえば、20世紀に書かれたすべての音楽作品の中でも屈指に感動的なものの一つだと思うけれど、大野さんの持って行き方は、殊更に感動的に盛り上げようとはせず、むしろとても冷静で客観的に見えた。
変な言い方だが、大野さんのこの作品に対する「信頼」が、とてもよく分かった。
だからこそ、というか、最後の最後、バリトンソロの「私は君が殺した敵なのだ」から合唱の「アーメン」への全曲の結尾に至って、堰を切ったような感動が溢れてきた。
勿論、この曲の初演当時の故事に因んで日中韓3ヶ国のソリストを起用したり(90年代の東フィルとの演奏でも同様の人選をしていた)、テノールとバリトンの伴奏をする小オーケストラのグループを、敢えてアンサンブルの至難なひな壇上に上げたり、ソプラノ独唱を合唱団席の頂上に配置したり、さまざまな面で大野さんならではのこだわり(多分)は満載。
そして、今日の演奏は今日で素晴らしかったものの、この先大野さんとオーケストラの結びつきがもっと緊密になるにつれて、音楽ももっと深みを増すだろうという「予感」をも感じさせたところが、大収穫だった。
…余談だが、今アメリカに住んでいて、1週間だけ帰国しているSax吹きの友人がいるのだが、何か日本にいる間にお薦めの演奏会はありませんか、と聞かれたので、今日のこれを薦めたのだった。
オケを聴くのは初めてなんだそうで、初めてでこのプログラムはちょっと重すぎないか心配だったけれど、とても感動して聴いてくれた。
手加減なく、「本物の中の本物」をバーンと聴かせてしまうというやり方も、必要というか、有効だなあと実感。
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