オリヴィエ・シャルリエ讃
今年も平穏な年末年始休暇が始まっている。
住んでいるマンションの前に公園があって、大きな銀杏の木があるのだが、これがなかなか元気な銀杏で、毎年お正月近くまで黄色になった葉っぱをまとっており、いつも年末年始で管理人さんがおらず掃除をしない時に大量に落葉をして路上が大変なことになるのだが、今年は既にすっかり葉が落ちてしまっている。やっぱり寒いんだな。
この隙に、聴いたけどブログに書いていないいくつかの演奏会のふりかえりなど。
12月24日
シンフォニエッタ静岡 Sinfonietta Shizuoka, JAPAN 第27回定期演奏会/オリヴィエ・シャルリエ~フランスの伝統(グランシップ・中ホール「大地」)
G.ピエルネ/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
J.ユボー/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
C.ドビュッシー/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
J.イベール/「物語」より(ピアノ独奏)
C.フランク/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ
オリヴィエ・シャルリエ(Vn)、エマニュエル・シュトロッサー(Pf)
恒例の静岡行き。
シンフォニエッタ静岡の定期演奏会といいながら、中身はオリヴィエ・シャルリエとエマニュエル・シュトロッサー(シュトロッセ)というパリ音楽院先生コンビのリサイタル。
これは、「静岡という地方都市における演奏会の広報の課題」という理由と、フランスの地方オーケストラでみられる、定期演奏会に他県のゲストオーケストラ単独の演奏会が組み込まれることがあるという、その手法を使ったとのこと。
まあ、シャルリエのヴァイオリンと名室内楽奏者シュトロッサーの演奏が聴けるのなら、お題目はなんでもよろしい。
シャルリエのヴァイオリンは本当にすばらしい。
自分の芸を聞かせるのではなく、一から十まで音楽そのものの真正の姿と尊厳を伝えることのみに専心するという、言葉にすれば月並みなことを、ここまで徹底して正鵠を衝いてする人はほとんどいない。
以前にも書いたような気がするが、例えばサントリーの大ホールで一人でリサイタルをするような国内外のあんなヴァイオリニストやこんなヴァイオリニストよりも、私にとってはずっと高みにある人だ。
こんなクラスの人がわざわざ静岡にやってくること(今回はこの演奏会のためだけの来日だそうだ)、東京でほとんど聴く機会がないことは、不思議としか言いようがない。
シャルリエの演奏を聴くことは、それ自体が素晴らしく内容の深いレッスンのように感じられることがある。
(野平一郎さんのピアノを聴いたときにも、同じことを感じた。)
聞くところによると、来年春の京都フランス音楽アカデミーの講師として来日が決まっているそうだ。
この人の素晴らしい(に決まっている)レッスンを受ける若い人たちが増えるのは、たいへん喜ばしい。
…さて、今回のプログラム。
フランス近代の名作ヴァイオリンソナタ四連発。
最初のピエルネ(フルートソナタとしても有名)から、まるでメインプロのような勢いで飛ばしてきた。
ピアニストとして知られる(作曲家としては「トランペット・ソナタ」1曲で知られる)ジャン・ユボーのソナタは、初めて聴いた。いかにもフランス的伝統に則った聴きやすい曲だった。
曲間で挨拶をするだけで(舞台袖には引っ込まず)、ドビュッシーまで3曲、1時間を一気に弾く。
イベールは、意外なことにヴァイオリンとピアノのためのオリジナル作品がないそうで、色々と経緯があってのピアノ独奏。
最後、フランクは、まさに「傑作」、と呼ぶしかない光輝を現出して終わった。
今回の演奏会は、これらフランスのヴァイオリンソナタを、シャルリエとシュトロッサーでライブ録音してCDを発売していこうというプロジェクトの一環だそうだ。
プログラムによると、今後、「フォーレ、サン=サーンス、ラヴェル、プーランク、ロパルツ、タイユフェール、オネゲル、…」といった曲目の収録が予定されているという。
これが実現したら、まさしく「世界に誇れる」コンテンツとなるだろう。
楽しみに待ちたい。
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