19年前の「春」
5月になった。
季節をある月の「1日」で表そうと思ったら、春は肌寒く苦しげな「3月1日」と、新緑鮮やかな「5月1日」と、2つの側面があって、どちらにも集約できないような気がする(「4月1日」というのはある意味とても典型的だが、それゆえにどこかつまらない)。
古来「春」を描いた芸術作品も、この2つの要素のどちらか、或いは両方を備えているように思う。
ドビュッシーの交響組曲「春」の2つの楽章なんかまさにそう。
シューマンの交響曲第1番「春」で言えば、今日5月1日は、「春たけなわ」というサブタイトルが作曲当初付いていたという第4楽章か。
先日、都響の演奏会場で買ったこんなCDを聴いたら、そんなことを書きたくなった。
シューマン/交響曲第1番「春」、第2番
ペーター・マーク指揮 東京都交響楽団(東武レコーディングズ)
1990年12月と1993年4月の都響定期のライブ。
93年の「春」の方は、私も実際に会場(サントリーホール)で聴いていて、1991年から定期会員になった都響の90年代の演奏の中でもことのほか記憶に残っていたものだった。
コンマスの矢部さんも、今までに弾いた最も印象深い演奏として何かのインタビューで挙げていたのを、読んだことがある。
ライブCDが出たのは知っていたものの、そんなに深く記憶に残っているものを実際の録音で聴くのはちょっと怖かったけれど、今の耳で聴いてもなお驚くほかないその純粋な美しさ、陶酔的な深さに、納得。
これですよこれ!
録音、というかマスタリングも素晴らしい。マスターは天井の吊りマイクだけで録った記録音源だと思うんだけど、ノイズも少ないし、瑞々しい肌触りの響きは最新のセッション録音に何らひけを取らない。
フルネやマークの指揮で、こんな演奏を日常のことのように聴いていた90年代は、なんて豊かな時代だったんだろう、と、実際の音で証拠を見せつけられて、改めて実感する。
1993年4月17日、当該演奏会のチラシ。
マルティヌーは、ジュネーブコンクールヴィオラ部門で最高位を受賞したばかりの、当時都響団員だった(まだ首席ではなかった)川本さんの披露演奏だった。
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