【聴いた】東京文化ニューイヤーコンサート、大友=都響
東京文化会館・ニューイヤーコンサート2012(「響の森」Vol.30)
ロッシーニ/「どろぼうかささぎ」序曲
ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番(Vn:三浦文彰)
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ストラヴィンスキー/火の鳥(1919年版組曲)
指揮:大友直人(東京文化会館音楽監督)
東京都交響楽団
新年3日めは、東京文化のニューイヤーコンサートに行くのがここ数年の恒例。
2012年のコンサート初め、である。
早めに家を出て、ひと駅手前の御徒町で降りて、アメ横や松坂屋デパートの人込みをくぐり、よく晴れた冬空の下を、西郷どんの像を拝謁したりしつつ上野の山を上ってのんびり文化会館へ向かうという、普段はできない優雅も、この正月休みの時ならでは。
客席はほぼ満席の賑わい。
演奏は、「堅実」そのもの。
でも、毎年書いているような気がするけれど「ニューイヤーコンサート」というのは、それで良いのだ。
創造の「創」という字には、きずつける、という意味があるように、芸術というものは日常のものではなく、日常の破れ目-非日常の側にある。
でも、そのような非日常な時間を「日常的に」持つということが、芸術に親しむということの本質でもある。
そして、そのような「非日常」は、ひとたび本当の「非常時=非日常」が襲ってきた際には跡形もなく吹っ飛んでしまう、ということを、昨年は厭というほど学んだ。
だから、今はこんなふうにコンサートを聴きに行ける「日常」があるということに感謝しながら、今年の音楽生活を始めようと思う。
ソリストの三浦文彰くん(未だ十代)は素晴らしい才能だと思った。
とても分かりやすい、明晰きわまりない音楽で、惰性で流す時間の一切ないフレージングを繰り出してゆく。
何かヘンなことをやったり外したりして、周りと合わなくなるような瞬間は皆無。
かといって、単にきちんと弾くだけでは絶対にない、何かスペシャルなものをこの若さで既に備えている人だ。
オーケストラも、大友さんの指揮ともども、ブルッフの伴奏の時は他の曲とはちょっと違う熱気を感じた。
若いソリストの真摯な演奏に感応するかのように、何かを抉るような深い音が随所に出ていたと思った。
開演前の西郷どん
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遅ればせながらあけましておめでとうございます。
大友さんはどうもあまり縁がないらしく、今までまだ二度しか接したことがないのですが興味があります。その時の印象では結構職人なんだなと思いましたが本当はどうだったのか。
若いと思っていたらもう中堅どころをになう実力者ですものね。三浦くんはこの前神奈川フィルに来てパガニーニをアンコールでやったのにはたまげました。チャイコンを演奏してそのアンコールだったのですけどチャイコンなんてどこが難曲なのって感じでアッサリと鮮やか、凄い才能でした。
こういう人が出てくるのはなんだか嬉しいことですね。
本年もどうぞよろしくお願い致します。
投稿: yurikamome122 | 2012.01.06 06:13
コメント有難うございます。ご無沙汰しております。
才能ある若い方を見出すのは(興行的に見出すのはマスコミとか、コンクールの審査員とか業界の方とかでしょうけれど、自分が興味を惹かれる人というのは結局自分が見出すしかありませんから)、嬉しいものです。
大友さんという方も、たしかに堅実な職人という趣ではありますが、なにかそれだけでは済まないものを感じかつ期待して、聴き続けているところです。
こちらこそよろしくお願い申し上げます。
投稿: Thunder | 2012.01.09 00:56