ショスタコ祭りその1…インバル都響A定期
東京都交響楽団 第726回定期演奏会(東京文化会館)
ショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲第2番(Vc:ガブリエル・リプキン)
同 /交響曲第5番
指揮:エリアフ・インバル
(コンサートマスター:矢部達哉)
まだとてもじゃないがこの1年を回顧できるような気分ではないのだが、年の締めくくりはやはりこの指揮者、このオーケストラ。
チェロ協奏曲第2番というのは、私が知る限りではショスタコーヴィチという作曲家が書いた最も「ヘン」な曲の一つだけれど、今宵のソリストと指揮者とオーケストラは信じがたい集中力を以て克明に曲の実相を浮かび上がらせた。
悲劇的な音楽、と評されることが多いようだが、ドラマティックという意味での「悲劇」よりも、人間が誰も(自分でも)気づかないうちに狂気の中へとフェイドアウトしていくような怖さを感じさせる曲だ。
そう何度も繰り返し聴きたいとは思わない曲なので、今日こうして聴けて良かった。
最後の余韻ぶち壊しのフライング拍手は残念。私はこの曲の終わり方をちゃんと知っているのだぞ、ということを誇示したいだけ(としか思えない)の馬鹿に付き合わされるのは、なんとも興醒めなことだ。
休憩後の「5番」。
巨大なスケールだった。
少し焦燥感を感じるように速めに始まった音楽は、随所でのアクセントやテヌートの強調、テンポの微妙な「ため」など、いかにもインバルらしい細部を店ながらも、最終的にはまるでブラックホールが自身の大きな重力でそういった回りの細々としたものたちを吸い寄せるかのように、大きくふくれ上がっていった。
満席の東京文化会館、物凄い喝采とブラヴォーの嵐のなか終了。
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