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2011.09.08

Saxhorn(サクソルン)は金管楽器です。サクソフォンではありません。

先日このブログ上で、サクソフォン四重奏とオーケストラについて言及したさいに、ネット上を探ってみたところ、ヤフーの質問箱に「サクソフォンを含むオーケストラ作品を教えてください」というような質問をみつけた。
勿論もうとっくに回答は締め切られているけれど、そこにどなたかが「ベルリオーズの『トロイ人』に含まれる」、とお答えになられていたのである。
(同じ質問に、イベールの寄港地や「だったん人の踊り」に入っているというデタラメを答えている方は、論外。)
エーーーッ、それは初耳だぞぉ。

…あのですね、それってもしかして、Saxhorn(サクソルン)の間違いとちがいますか。

IMSLPには「トロイ人」の全曲のフルスコアがupされているので、早速調べてみたところ、案の定。
例えば第4幕の冒頭には、バンダで4本のSaxhorns Ténors en Mi♭の指定がある。→こちら(PDF)(一度全部英語の警告画面が出るかもしれませんが、慌てずに continue my download というリンクをクリックしてください)

サクソルンという楽器とは何かというと、要するに、サクソフォンと同じくベルギーのアドルフ・サックスによって開発された金管楽器のファミリーで、今日コルネットやフリューゲルホーンと呼ばれる楽器に近い高音楽器から、テューバの音域の低音楽器に至るE♭管とB♭管の楽器群の総称である。
そう、金管楽器です。
なので上記サクソルン・テノールとは、現在では「アルトホルン」と呼ばれる楽器のこと。

サクソルンとサクソフォンを混同するミスは、相当に音楽の知識のある方でもやらかすことで、サクソルン・バスを含むメシアンの「われ死者の復活を待ち望む」という曲の編成に「バス・サクソフォーン1」、と堂々と書いてしまった高名な音楽学者の方の解説文を私は読んだことがあるし、グノーのオペラ「ファウスト」やサン=サーンスの交響曲第1番にもサクソルンが含まれるのだが、出版社のカタログその他の編成表ではこれが「Saxophone」となってしまっていることが多い(これらの曲にサクソフォンが使われている、とする誤った情報の出所は、おそらくそのへん)。
そういや何年か前のギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の来日公演のプログラムにも、サクソフォンのメンバー表のところに「Saxhorns」、って書いてあったっけ。
「サクソルン」という楽器の名称自体が、現在ではフランスにしか残っていないことも、そのへんの事情を知らない人による勘違いを生む原因ではあろうと思う(例えば、「ユーフォニアム」という楽器はサクソルン・バスが英国で改良されたものだが、現在ではそちらの方がワールドワイドな名称になってしまった)。

それにしても、誰かが最初に自信たっぷりに間違った情報を披露すると、それがあたかも「事実」のように広まってしまう(後から訂正・抹消することは不可能に近い)ネット上の情報流通の怖さを、思い知らされる。

ちなみに私は、このブログを開設するずっと以前から、サクソフォンを含むオーケストラ作品の一覧表というのを本家サイト上に作成し、公開している。
最近は本家サイトはもう全く更新していないし、今では本家サイトを経由せずこのブログだけを閲覧している方も多いようなので、もしかしたら忘れられているのかもしれないけれど、まだまだ未完成とはいえ(とくにここ数年間に演奏された重要な現代作品に関する情報が未収録とはいえ)、これはこの件の情報の取り敢えずのレファレンスたり得るものだと自負しているので、ご存じない方は一度ご覧になってみてください。

オーケストラの中のサクソフォン

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音楽随想」カテゴリの記事

コメント

非常に重要でかつ広められるべき訂正情報だと思います。
私も「トロイ人」を原編成にあったサクソフォンを外して録音と書いてあったようなライナーノーツを見たことがあります。
Thunderさんの「オーケストラの中のサクソフォン」を再度確認しましたが、ベルリオーズは結局Saxhornを使った曲は書いたけれども、Saxophoneを使った曲は書かなかったという認識でよいでしょうか?

ちなみに私は大変幸運にもベルリオーズのトロイ人の実演(もちろん演出付の全曲)に2回接したことがあります。この楽曲にサクソフォンが入るのはやはりちょっとイメージがつかないです(トゥーランドットみたいに超隠し味で使われる例もありますが)。

コメント有難うございます。

ウェブ情報の間違いは勿論ですが、文献情報の間違いには困ってしまいますね。
「本にそう書いてある」、というのは今でも説得力がありますから。

ベルリオーズは自身でサクソフォンという楽器を絶賛する論評も書いていながら、結局オーケストラの中で使うことはありませんでした。
「神聖な歌」Op.2-No.6 という自作の合唱曲をサクソフォンを含む編成に編曲して演奏したことは有名ですが、これはアドルフ・サックスが開発、あるいは改良した6種類の管楽器のアンサンブルで、いわば「アドルフ・サックスの楽器のデモンストレーション」といった趣だったようです。

お忙しいところ、お返事ありがとうございます。

なるほど、ベルリオーズの場合、オーケストラの中でサクソフォンを使うことはなかったんですね。ベルリオーズはサクソフォンの可能性を試していたらしいことは人づてに見聞したことはあったのですが、それが上記のようなものだったとは、寡聞にして知りませんでした。勉強になります。

Web情報においては間違いであったとしても声の大きなものが圧倒してしまう傾向はありますし、書籍の誤りもこういったことはなかなか指摘されにくいかと思います。Thunderさんの地道な活動に敬意を表します。そして私も間違いを広めないように充分気を付けながら、情報提供していければと思います。

どうもありがとうございました。

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