都響、マーティン・ブラビンス
東京都交響楽団 第721回定期演奏会(サントリーホール)
プロコフィエフ/歌劇「戦争と平和」序曲
チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第2番(Pf:上原彩子)
プロコフィエフ/交響曲第5番
指揮:マーティン・ブラビンス
(コンサートマスター:矢部達哉)
今月の都響定期は、AB両シリーズ同一プロ。
2日めのサントリーで聴く。
2年前の都響初客演のチャイコフスキー・プロで目の覚めるような演奏を聴かせた、英国のマーティン・ブラビンスの再登場。
大体において、あるオーケストラに初登場後2~3年以内に再び呼ばれる指揮者は、そのオケと指揮者がお互いに気に入った、相性の良い人で、なおかつ百戦錬磨の楽員たちの眼鏡にかなった実力者であることは間違いない。
このブラビンスという人もまさにそうで、これほど客観的な見識にみちた指揮者は最近都響に新たに登場した人の中でも稀だと感じた。
まるで何十回も客演している役付き指揮者のように、都響の持っているサウンドを自分自身のものとして自在に操っていた。
あるプロの演奏家の方が、ロストロポーヴィチのことを評して「地獄の釜の蓋を開けっ放しにしながら、高いレベルの理性と徳を保持できる人」、と語っていたのを聞いたことがあるけれど、このブラビンスという人もそれに似たところがあると思う。
「戦争と平和」序曲は、まるでオルガンのようなサウンドの金管のコラールで始まる。
あれっ、と思うような意外に短い曲だった。
圧巻はチャイコフスキー。
滅多に聴く機会のない(私も実演は初めて)チャイコフスキーの2番のコンチェルトは、ソリストの上原さんが是非にと希望した曲なんだそうだが、いやー、こんな面白い曲がなんでこんなに稀にしか演奏されないんだろう、と思いましたよ。
2楽章は「白鳥の湖」のパ・ド・ドゥみたいなヴァイオリンとチェロ(古川さん)のどソロ三昧だし、3楽章の怒濤の推進力と鮮やかさはソロ、オケ共々「爽快」、の一言。
メインのプロコ5番は、実はこの1年ちょっとの間に東京の各オケで名演が連発している曲なんだけれど、なるほど、都響だったらこう来るよなあ、という「納得」の仕上がりだった。さすが。
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もしかすると今回のメインはチャイコフスキーだったのかもしれません。これで帰ってもよいくらいに充実した演奏だと思いました。実演機会が少ないとは実にもったいない曲です。ブラビンスの招聘はこの演奏機会の少ない曲のためだったのかな?と彼のCDのレパートリーを見ながら思いました。プロコの5番は前半の充実具合で考えるとあのくらいあっさりしていた方が聴き疲れしなくて良いように感じました。
しかし、BBCスコットランドなどとの演奏機会がレアな曲の録音リストを見ると、一昔前のヤルヴィ・パパのSNO時代のシャンドスでの録音を思い出します。似たような指揮者だとすると、スタイルのできあがった都響よりも神奈川フィルのような途上のオケとじっくり付き合ってもらう方が面白い指揮者なのかもしれません。
投稿: PIYO | 2011.09.29 08:57
コメント有難うございます。返信すっかり遅くなりました。
チャイコフスキー凄かったですね。後半のプロコのほうは、限度を飛び越えた、というのではなく、都響というオケの能力と個性をくまなく使ってつくり上げた演奏だと思いました。ある種の「想定内」で、私のように「それ」が好きな人間にはたまらんというか、「納得」の仕上がりなのですが、人によってはこれでもまだ物足りないかもしれないなあとは思います。
ちなみに、「この1年ちょっとのプロコ5番」の名演のトップと言ったら、個人的にはプレヴィンN響でした。大野さん&東フィルがキャンセルになったのはかえすがえすも残念。
投稿: Thunder | 2011.10.02 02:10