小澤さん、奥志賀より来たる
[小澤国際室内楽アカデミー奥志賀]設立記念演奏会(上野学園 石橋メモリアルホール)
*J.S.バッハ/G線上のアリア
ベートーヴェン/弦楽四重奏曲第6番Op.18-6
ドビュッシー/弦楽四重奏曲
*モーツァルト/ディヴェルティメントK136
*チャイコフスキー/弦楽セレナードから 第1楽章
指揮:小澤征爾*
東京では1年8ヶ月ぶりに見る小澤さんの指揮姿、とりあえずめちゃくちゃ元気そうだった。
15年ほど前から毎年夏、小澤さんが奥志賀高原で開催している若い演奏家対象の室内楽の勉強会(昨年、食道がんの療養から一時的に復帰したときの最初の仕事もそれだった)を、今般「小澤国際室内楽アカデミー奥志賀」として正式スタートするにあたっての、記念演奏会。
ホール内は、「立錐の余地もない」、という表現がぴったりの満席。
23人編成の受講生オケと一緒に小澤さんがステージに現れると、場内爆発的な拍手が起こる。
お帰りなさい、待ってました! というみんなの気持ちを感じる。
お辞儀のタイミングも中央の小澤さんが合図を出して、全員で一斉に頭を下げる、ホントに「小澤学校の発表会」、という雰囲気。
でも出てくる音は凄い。深い。
なんじゃこりゃあ、と正直呆れてしまうくらい。
「アリア」のベースの8分音符って、こんなに(穴を穿つかのように鋭く)弾いちゃっていいんだ。
どの曲でも、強烈なエモーションのある、まるで物理的な質量をもったかのような音がゴリゴリと飛んでくる。
小澤さんの立ち姿は、下半身がずいぶん細くなった印象で、以前よりヒョロヒョロした感じの見た目だけれど、腕を下からすくい上げるような動きで出てくる音の深さとかは、ばりばり健在。
ある意味、プロのオケだったら、こういう音はしないだろうと思った。
プロは、小澤さんの「念」をいったん自分たちのスキルや流儀に翻訳してから音を出すので、ここまで直截なインパクトは無いのかも。
前半では、受講生の選抜メンバーによる四重奏が2つ。
日本代表(ベートーヴェン)と中国代表(ドビュッシー)、という趣。
ドビュッシーチームの響きの豊かさと幅広さがとくに印象的だった。
今回この演奏会を聴きたいと思ったのは、「奥志賀」という地名に反応したせいも大きい。
私も過去何度もそのあたりを訪れているし、小澤さんがこのアカデミーの本拠にしている奥志賀高原「森の音楽堂」は、3年前には自分たちで演奏会をやった場所でもある。
私自身の、夏だ、合宿だ、高原だ、練習だ、音楽だ! というこの季節ならではの感覚とシンクロしたんだと思う。
ともあれ、500席の小さな会場で、こうして小澤さんの復帰を見届ける稀少な機会に立ち会ったのは、なんといっても嬉しい。
無理をせず、1日でも長く現役で活動を続けてほしい。
…
ちなみに、奥志賀高原「森の音楽堂」とは、こんな場所。(2008年9月撮影)
うー、また行きたいぞ。
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演奏会とても良かったですよね、私は感動しました。石橋ホールで頂いたプログラムにはドビュッシーのカルテットが中国の方々となっていましたが、それはミスプリントで、日本の藝大を卒業した若者達です。
よけいなひと言で、失礼しました。
投稿: eco | 2011.08.04 16:18
コメント有難うございます。
いえいえ、よけいな一言どころか、演奏会の内容の根幹にかかわる重要情報ではありませんか。
そういえばチェロが男性だったので不思議に思っていたところでした…
ご指摘有難うございました。
投稿: Thunder | 2011.08.05 02:05