日本人の言乃葉
日本人の言乃葉(ことのは)~SaxophoneとPiano(ムジカーザ)
伊藤康英/ツヴァイザムカイト
豊住竜志/ Winter
長生淳/天国の月
永嶋咲紀子/バガデル
松岡あさひ/日本人の言乃葉(委嘱作品・初演)
佐橋俊彦/このかけがえのない日々へ
長澤範和(Sax)、石橋衣里(Pf)
水曜日(25日)は、ムジカーザへ。
月曜に続いて、百席前後のこじんまりとしたスペースでサクソフォンを聴くこととなった。
このムジカーザという場所はそれにしても、古き良き時代の個人の邸宅でのサロンの雰囲気と、天井の高い現代のコンサートホール的なアコースティックとが両立した、得難い空間だと思う。
本日の主役の長澤さんという方、若い世代のプレイヤーの中では既にお名前はあちこちで耳にする方だが、ちゃんと聴くのは初めて。
しかも見てのとおり、全曲現代の日本人作品という、なんとも冒険的かつストイックな選曲のリサイタルである。
演奏そのものは押しの強い、なかなかクッキリとした音楽をされる方だと思ったが、曲間でマイクを持って喋りはじめてみたら私は軽くショックを受けた(笑)
開口一番、
「あのー、、来年、30になるんですけど、、、」
はあ?と思ってしまった。
ボソボソといろいろ喋っておられたようだが、正直言って何を話されていたのか、私にはよく分からなかった(苦笑)
私からすればある意味異星人のような、しゃべりもパフォーマンスも上手ないまどきのサックス吹きとは対極のような方だが、
「きちんと喋っちゃったら自分の商品価値が無くなる」とか
「日本人の言乃葉、ってタイトルなくらいなんで、とりあえず空気読んで下さい」
などというかなり「意識した」発言もあって、古典的な口下手というのともちょっと違う。
たぶんこの方にとって、音楽というのは、この状況の中で他人とどうやってコミュニケーションを確保するか、ということに関する、切実かつ実践的な実験なのだろう。
今回は全曲邦人作品だし、前回のリサイタルは全曲無伴奏作品だったそうだが、「実験」だからこそ、敢えてそういう難しい状況に自ら攻め入って行かれるということか。
でも、そんなことは気にするまでもなくなんとなくコミュニケーションを成立させる、させた気になる(私自身を含めた)一般的な人間には、そのような難しい、しかし本質的な状況は訪れない。
「苦労は買ってでもしろ、」という言葉を、ちょっと思いましたよ。
ピアニストの方は、キャラ的には正反対、理知的で明晰な言葉と音を持った、凛々しいお姉さん。
なかなか面白い組み合わせだった。
曲については、私にはやはり伊藤康英さんの80年代的熱さ、が懐かしいですね(作曲者の芸大在学中、1982年の作曲である)。
コンサートのタイトルとなった委嘱作品は、「さくらさくら」「赤とんぼ」「リンゴの唄」…といった日本歌謡のメドレー風。途中いきなり「フーテンの寅さん」を楽器ではなくマイク持って歌う(笑)、というギミック付き。
最後の佐橋さんの曲は、彦坂さんの最新CD収録、夕暮れ色のリリシズムに染められた美しい佳曲である。
予告されたアンコールの最後は、譜めくり担当の方(竹原宏氏、昭和音大の大学院生だそうだ)がサックスを持って乱入。豁然と終演した。
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