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2010.11.19

PJBEジャパン・ライブ、或いは回想の東京厚生年金会館

最近出た、こんなCDについて書いてみる。

image - PJBE_CD

トッカータとフーガ~フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル・ライブ・イン・ジャパン(キングレコード KICC3554)

1981年、東京でのライブ収録。
当時LPレコードで発売され、ベストセラーになったものだが、CDで出るのはもしかして初めてではないだろうか?
(追記:読者の方から指摘をいただきましたが、KICC-50という型番で出ていたことがあったそうです)

フィリップ・ジョーンズ・ブラスアンサンブル(PJBE)といえば、世界の金管アンサンブル界のパイオニアのようなグループだけれども、こと1970~80年代の日本においては、とてもそれだけでは語り尽くせない存在だったと思う。

当時は現在のような、国内外にプロフェッショナルのブラスアンサンブルがいくつもあって常時演奏会を開いている、などという状況は存在していなかったから(世の中で開かれる演奏会の数自体が、今とは比べ物にならない位少なかった)、たまのこういう海外の一流団体の来日公演というのは、今では考えられないような注目度だった。

このCDの音源である1981年9月の東京厚生年金会館での演奏会には、私も行きましたよ。
当時の私は今と違って(笑)、お金を払ってコンサートを聴きに行く、なんていう習慣は皆無に等しかったけれど、大学の吹奏楽団の後輩にPJBEファンのラッパ吹きがいて、彼がとりまとめてみんなで行ったのだ。
一緒に行ったのは金管吹きばかりじゃなかった。サックスも、クラも、打楽器の人間もいた。
別に、「金管アンサンブル」としてマニアックに聴くのではなく、このCDにも収録されているPJBE名物のアンコールのような、高度な音楽的洒落とユーモアを、それぞれの立場で楽しんだと思う。

一流のプロの音楽家の、演奏の素晴らしさは勿論、スマートなステージマナーを含む「余裕」とか「粋」とかに由来する純粋な音楽的感動というのは、結局のところ私たちの世代の人間は、このPJBEのような海外の名手たちに教わって育ったように思える。
当時の日本のプレイヤーは、プロ、アマチュアを問わず、まだそこまで成熟していなかった。

CDの収録曲のひとつ、ゴードン・ラングフォードの「ロンドンの小景」は、現在ではブラスアンサンブル界の定番のひとつで、いまやアンコン等でもしょっちゅう聴くことができる。
この曲は、そもそもPJBEのこの日本ツアーのために書かれた曲であり、従ってこのCDの演奏がほぼ初演に近い。
そういう時代の演奏であり、録音である。
今この演奏を聴くと、私などは、日本のプロの金管奏者も、この10年くらいでやっとこれに近い音が出せるようになってきたなあ、と(率直に)思うのだけれど、高度に音楽的な「余裕」、のあるなしという点で、彼我の差はまだあるように感じる。

故ジョン・フレッチャー(テューバ)を始めとする往時のロンドンの金管の名手の技を聴く、というようなマニアックな視点(確かにそれもスゴイんだけど)だけではなく、もっと普遍的で歴史俯瞰的な聞き方もできる、感慨深いCDである。

ところで、この収録会場のひとつ、東京厚生年金会館だが、今年(2010年)の3月限りで閉館になったことをご存じだった方はどのくらいいらっしゃるだろうか。
東京ばかりではなく、全国の厚生年金会館が、社保庁の解体に伴う事業見直しにより、すべて閉館あるいは売却されたのだ。
東京厚生年金会館は、設備も古いし駅からも遠く、音楽会場としては既に過去の存在であったためか、新聞記事くらいにはなったかもしれないけれど、同時期に閉館となったカザルスホールのように注目されることはなかったようだ。

たしかに、古い建物でしたよ。
私が最後にここのステージに乗ったのは10年くらい前のこと。狭い舞台裏と薄暗い照明、急な階段。昔のホールってみんなこうだったなあ、などと、懐かしく思った。
ステージ袖の、舞台装置操作用ワイヤーの前の
綱元の経験なき者の操作を禁ず
という大きな筆書きの貼り紙が渋かった。綱元って何ですか。

でも、あの新宿駅からの遠さ(新宿文化センターよりもっと遠い)にもめげずに歩き通してコンサートを聴きに行く、修行者のようなメンタリティが、ひとむかし前のクラシック音楽ファン気質だったのかもしれない。

いろいろな意味で、時代は変わった。

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