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2010.07.20

BJの付録…伊藤康英校訂版・ホルスト1組

Holst, First Suite, Chaconne

ホルストの第1組曲といえば、吹奏楽曲の古典中の古典。
20世紀の初頭に何の前ぶれもなく突然現れ、現代の吹奏楽のレパートリーや編成や方向性のあり方を指し示すことになった、吹奏楽曲の「聖書」と呼んでいい作品である。
最近では、こと私たちの周りでは大編成サクソフォンアンサンブルの定番ともなりつつあるが(笑)。

吹奏楽とはあまり関係のないとあるブログで情報を見つけびっくりしたのだが、今号(8月号)のバンドジャーナルの付録楽譜が、そのホルストの第1組曲の第1楽章「シャコンヌ」の、ホルストの自筆譜等に基づく伊藤康英新校訂版によるフルスコアだという。

普段はもうあまり手にとることのないバンドジャーナルだけど、今回は買いに走ったことは言うまでもない。
これで950円は安い。
引き続き、10月号に第2楽章「インテルメッツォ」、12月号に第3楽章「マーチ」が付く予定とのこと。

今般の校訂のため参照されたのは、大英図書館に保存されているホルストの自筆譜(調査のため伊藤氏自らロンドンまで出向いたそうだ)に、1921年・1948年のブージー&ホークス版、1984年のコリン・マシューズ&フレデリック・フェネル校訂版、2005年、フェネルのスコアとアナリーゼに基づくロバート・サイモン版といった先行出版譜。
それらすべてを比較検討した、詳細な校訂報告が添えられている。
出版のたびにその時代の吹奏楽事情に合わせて替えられたり追加されたりした楽器編成を原典に合わせて整理し(バリトンサックスやフリューゲルホルンが無くなったり、ユーフォニアムとバリトンが分けられたり、等々)、細々としたアーティキュレーションや表記を修正・統一し、スコア上の楽器配列もホルストの自筆譜通りに直し、というのが眼目のようだ。
また、ホルスト自身によるピアノスコア(コンデンストスコア)と、伊藤氏によるアナリーゼ(作品分析)も付属しており、これがまた作曲家ならではの視点に基づく極めて明晰で判りやすい分析で、この「シャコンヌ」という曲がいかに論理的で見事に書かれた作品であるか、ということを納得させられる。

私とて吹奏楽人の端くれ、この曲への対し方と探究心については、過去30数年の音楽生活の中でも少しく特別であると言っていい。
つい1年前には、かの巨匠・秋山紀夫先生の指揮で演奏することができたのは記憶に新しい。
それにしても、○○校訂版とか原典版とかいう楽譜のあり方は、残された楽譜から作曲者の真の意図を探求することが使命であるクラシック音楽においては、ある意味必然的な考え方だけれども、吹奏楽曲の分野にもそういう発想が現れたか、と思い、感慨深いものがある。

フレデリック・フェネルは、自著「ベーシック・バンド・レパートリー」の中で、ホルストの第1組曲についてこんなことを書いている。
「もしこのスコアを真に理解したならば、それは音楽と指揮というものすべてを理解したのと同じだ。しかし、そこに到達するには一生かかるだろう。…指揮者にとってこの曲なしの人生は、考えられない。」

真に物事を考えるすべての吹奏楽人必見の楽譜でありましょう。

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音楽随想」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
この件、全く知りませんでした。貴重な情報をありがとうございますm(__)m 勿論、すぐ買いに行きました。2・3楽章も当然買います。
この曲は、D高ブラスにとっても大きな意味がある曲だし、個人的にも、学生としてそして顧問として、何回も取り組んだ曲です。
何回やっても、スコアを見るたびに新しい発見があります。
是非またやりたいです。

そういえば私も、D高3年のときにこの曲を振ったことを思い出しました…

フレデリック・フェネル博士の言葉が心に沁みます。

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