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2010.06.19

「世界一巧い」

Tim McAllisterさて、いいかげん現実へと戻ることにしましょう。
しばらくはコンサートを聴く予定が目白押し。
17日のこと。
以前upした告知記事より曲目が増えていたり、表記が微妙に違ったりしていたので、もう一度掲載。

ティモシー・マカリスター サクソフォーン・コンサート(ルーテル市ヶ谷センターホール)

Roshanne Etezady/ストリートリーガル
H.ヴィラ=ロボス/ファンタジア
C.フランク/ソナタ
平義久/Penombres VI
C,アイヴズ/ピアノソナタ第2番「コンコード・ソナタ」より オルコット家の人々(ピアノ独奏)
C.バーハンズ/エスケープ・ウィスコンシン(サクソフォン独奏)
W.ジャコビ/舟歌~2本のアルト・サクソフォンとピアノのための(ジョナサン・ウィントリンガムSax)
W.オルブライト/ソナタ
 ティモシー・マカリスター(Sax)
 キャスリン・グッドソン(Pf)

ティモシー・マカリスターという奏者については、雲井さんが某所で「楽器が巧い、ということにかけては、現在これ以上の人はいない」、という言い方をされていた。
へええ、と思っていたら、先日別の、パリで学んだ(雲井さんとはそれほど接点のない)知人のサックス吹きの方が、
「世界一上手い人だ」
と言っていたのを偶然聞いたのだった。
これは決まりだ。
一人の意見というのは主観かもしれないが、二人となったら客観である。
俄然楽しみになったところで、今日のリサイタル。

唖然とする巧さ。
ただ巧いだけじゃない。とても素直で真っ当な音楽の持ち主だった。
自分の技術や能力を、楽器を操ることではなく、音楽をあるべき姿で再現し、作曲者の意志とメッセージを伝えることに「のみ」用いることのできる人だ。
己を無にして音楽そのものに肉薄する、と言うのか。
言葉にすると、当り前のことじゃん、と思うでしょ(われながら、陳腐な言葉だなあ、とは思うんだけど)。
実際、ピアノや弦楽器の「名手」や「巨匠」と呼ばれる人たちは、そういう当り前のことを当り前に出来る人たちで、それゆえに名手であったり巨匠と呼ばれるのだが。
だけど、サクソフォンで、そのことがこんなにも自然にできる人というのを、はっきり言うが、私は初めて見た。
「初めて」、である。
サクソフォンで演奏すると、どんな名手が吹いてもどこかしら「痛々しさ」を感じてしまうフランクのヴァイオリンソナタが、こんなに自然に耳に入って行ったのは初めての経験だったし、平義久の作品を聴いたときには、曲の外形的な印象を通り越して、フランス音楽の感性と発想法を骨の髄まで身につけた一人の日本人作曲家の姿が、はっきり浮かびあがってきたと思った。

こういう人には、誰の弟子とか、誰の流派だとか、そんな些細なことは関係がない。
先日の告知記事で私は、アメリカのサクソフォンの流派についての知識を嬉々としてひけらかしたものだったけれど、彼の演奏を聴いて私はそのことを深く恥じた。

技術レベルは勿論とてつもない。
出来ないことはありません、という感じ。
1曲めの「ストリートリーガル」(カーレースの一種だそうだ)や、無伴奏の「エスケープ・ウィスコンシン」などのナンバーでも、いったいどこをどうすりゃあんなことが出来るんだ的超絶技巧の一端を見せた。
こういう人のことを、よく「化け物」(人間離れしている)、という呼び方をするけれど、とはいえティモシー氏ほど「化け物」という存在から遠い人もいない。
彼の音楽は決して「化け物」ではなく、どこまでも「人間的」そのもので、それは音楽というものが即ち人間の営為にほかならない、という本質にシンプルに則しているからだと思う。

…いやはや、すごいものを聴いてしまった。
まずはこの日、この場に居合わせることのできた百数十名(たぶん)の一人であることに、感謝したい。

ピアニストも素晴らしかった。
とても「処理速度の速い」(PC的用語。笑)人だと思った。
ひとりで弾いたアイヴズのコンコード・ソナタの3楽章(面白かった)は、「ザ・アルコッツ」というタイトルでプログラムに載っていたけれど、これは「若草物語」の作者であるルイザ・メイ・オルコットとその哲学者の父のことです(共にマサチューセッツ州コンコードに縁が深い)。
なので、「オルコット家の人々」と訳しましょう、という、トリビア的知識。

Innova 652

Timothy McAllister / IN TRANSIT(Innova
ロビーで買ったCD。
聴いたばかりのエテザディやオルブライトが入っている。
告知記事にも書いたとおり、ティモシー氏の新しいCDは持っていなかったんだけれど、これは買いでしょう。

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