光の中を歩む…井上二葉ピアノ独奏会
J.S.バッハ/イギリス組曲第5番BWV810
P.デュカ/ラモーの主題による変奏曲、間奏曲と終曲
G.フォーレ/ヴァルス・カプリス第2番Op.38、舟歌第9番Op.101、即興曲第5番Op.102、夜想曲第6番Op.63
J.Y.ダニエル=ルスュール/心の痛み
同 /フランス組曲(ディヴェルティメント~メヌエット~カンティレーナとロンド・パストラール)
一夜明けたが金曜日の話。
眠くてしょうがない。
前夜が、17日の本番に向けての最終練習だったのだ。
久しぶりの平日練習でクタクタに疲れた上に、帰りも激遅。
練習が終わってご飯を食べに行った先で、メンバー2人が酔っ払って大激論が始まってしまい、閉店の時間も過ぎて店の人が露骨に早く出てけという顔しているのもお構いなしに話が止まらないもので、最後は強制退出(苦笑)
帰宅は1時近くでした。
というわけで仕事は早々に見切りをつけて、それでもこのコンサートを聴きに浜離宮朝日へ。
日本ピアノ界のフランス楽派の大ベテラン、井上先生の独奏会(「リサイタル」という名称でないところがいい)。
80近いご高齢にもかかわらず、このような意欲的かつ興味深いプログラムによる自主公演を2年に一度、この季節に開いている。
一昨年のフロラン・シュミット没後50年記念の会は感動的だったなあ。
今回も、ダニエル=ルスュール(1908-2002)というまた珍しい人(以前、都響で「舞踏交響曲」という作品を聴いたっけ)にスポットを当てていた。
でも、決して「珍奇なもの」としての扱いではなく、プログラム全体を通して伝統の中にきちんと位置づけられていた。
高音の輝かしいソノリテ、低音が太り過ぎない独特のバランス。
さすがに歳相応にあぶなっかしいところは多少あるけれど、それ以上に、井上先生の真っ直ぐな背中のような、音楽への毅然とした態度と疑念の無さが素晴らしい。
ちょっとでも自分自身に疑念があったら、こういう説得力は絶対に生まれてこない。
でもそれは、音楽に対して謙虚であることと何ら矛盾しない。
というか、音楽をするというのは、疑念がないことと謙虚であるということを共々真実とするということだ。
2時間のプログラムを堂々と弾ききった上に、アンコールも2曲も。
ラモーの「小鳥のさえずり」と、フォーレの8つの小品より「歓喜」。
これがもう、明るい光が溢れる中を粛々と歩いて行くような、しなやかな威厳と肯定感に充ちた音楽だった。
すごいなあ。
自分が80になったとき、こんなに真っ直ぐでいられるだろうか。
会場ロビーでこんなCD(ライヴノーツ)を売っていた。
リヨン国立高等音楽院教授にして東京芸大客員教授も務めたチェリスト、レーヌ・フラショ女史(1922-1998)晩年の日本でのライブ集成2枚組(井上先生がピアノを弾いている)。
このうちの幾つかは、私も客席に居たはずだ。
クープラン、マラン・マレから、ドビュッシーとプーランクの両ソナタ、マルティヌー、ケックラン、ソーゲ、ナディア・ブーランジェに至る、大変貴重なフランス近代のチェロ・レパートリー集となっている。
閃くものがあり、購入。
見た瞬間に、このCDが私に「買いなさい」、と言っているような気がした。
そういうCDや本って時々ありますね。
これから聴きます。
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