新しい古典…新日本フィル2月定期
新日本フィルハーモニー交響楽団 第457回定期演奏会(すみだトリフォニーホール)
モーツァルト/交響曲第39番
シューマン(ショスタコーヴィチ編)/チェロ協奏曲(Vc:タチアナ・ヴァシリエヴァ)
ショスタコーヴィチ/交響詩「十月革命」
指揮:ヒュー・ウルフ
今年初NJP、初トリフォニー。
一番の聴き物はシューマンだった。
バックはショスタコーヴィチ版(ロストロポーヴィチの依頼により作られた)とのことだったが、オーケストレーションをちょっといじったとか、そんなレベルどころではなく、全く別物だと言っていい。
シューマンのチェロ協奏曲というと、ソロの難しさに比べて後ろのオーケストラがウヤムヤで何やっているのかよく分からなくて、これがハイドンの2番、ドヴォルザークと並んで「世界三大チェロ協奏曲」だ、と言われても「エーッ、エルガーの方がマシじゃん」、と今までは思っていたのだが、高弦や金管やピッコロや2楽章ではハープまで加えてバランスを根本から取り直したこのショスタコーヴィチ版は、唖然とするほど鮮やかに「いかにも」な「普通の」コンチェルトに変身していた。
でまた、ソリストのヴァシリエヴァ(2001年ロストロポーヴィチ・コンクール覇者)がとんでもなく見事に弾くこと!
この難曲をこんなに「快刀乱麻」に分かりやすく弾ける人は見たことがない。
まさに、チェロのための全く新しい古典レパートリー(矛盾した言い方だが)の誕生を目前に見た思いだった。
2楽章の、オケのチェロ奏者とのデュオ部分が無くなっていたのはちょっと残念だったが(ファゴット、及び独奏チェロが重音で弾くよう変更されていた)。
アンコールにバッハのチェロ組曲3番のブーレ。
快速。
しかしただ速いのではなく、ニュアンスがきちんと隅々まで付いているため、全然「急いでいる」という感じではない。
大した才能ですわ。
最後はショスタコーヴィチ唯一の交響詩、「十月革命」。
メインプロにしては短いが(15分くらい)、これまた実に分かりやすい曲だった。社会主義リアリズムの極致。
ショスタコーヴィチお得意の、弦の重厚なユニゾンによる暗い旋律、スネアドラムが大活躍する戦闘場面のような凶暴なアレグロ、木管による抵抗歌(「パルチザンの歌」)が交錯しつつ、最後は全合奏によるハ長調の「パルチザンの歌」の、(「祝典序曲」を思い出させる)ノーテンキ極まりないフィナーレに至る。
あまりに手の内が見えてしまうので恥ずかしいくらいなんだけど、でも見事といえば見事なのでやっぱり拍手はしてしまう。
あ、モーツァルトも良かったですよ。
前プロにモーツァルトの交響曲というのは安易な演奏になりがちだけれど、全然そんなことはなかった。
曲順が逆でも良かったと思ったくらい(ショスタコ→シューマン、休憩、モーツァルト)。
でもそれだと「39番」じゃバランスが取れない、という判断だったのかな。
指揮者ヒュー・ウルフは1953年生まれのアメリカ人(鄭明勲、ゲルギエフと同い歳)。なかなかの実力者と見た。
本日の出演者。
…
トリフォニーホールへ向かう通路より。
新東京タワー成長中。
« 立春の日に | トップページ | 津堅さん横川さん、最後ですよ »
「コンサート(2010年)」カテゴリの記事
- コンサート(2010)ふりかえり(2010.12.31)
- 祭りのあと(2010.12.23)
- Happy Sax 2010(2010.12.17)
- Principal Guest Conductor(2010.12.15)
- 最終練習の前に(2010.12.12)
私は金曜に聴いてきました。
金曜のチェリストのアンコールはバッハの無伴奏の1番のプレリュードでした。
これも確かに急いでいる感じもしないし、何かすごいことも全くやっていないのに、すべてが心地よいテンポで頭に入ってくるすごく見通しのよい演奏でした。
大学の授業期間が終わって、普段の金曜よりも疲労度が少ないこともあるかもしれませんが、でも全曲にわたって、とても聴き応えのある演奏会だったと思います。最後の一文は当日私も思ったところ。
それにしても(次の記事の話題ですが)横川さんと津堅さんが最後だったとは…。無理してでも聴きに行けばよかった…。
投稿: Isaac | 2010.02.07 17:57
遅くなりました。コメントありがとうございました。
とてもいい演奏会でしたね。
ウェブ注目度的には、これの次のエントリのおかげで影が薄くなってしまっている(苦笑)のが、ちょっと残念なような。
投稿: Thunder | 2010.02.11 00:36