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2010.01.29

マリさんの「アルル」

先日、ミンコフスキの「アルルの女」についての記事を書いた時に、「聴きくらべ-『アルルの女』」というカテゴリがこのブログにはあったことを久々に思い出した。
何年も忘れていましたよ(しかしなんでわざわざこんなカテゴリを作ったんだっけ)。
せっかく思い出したので、とっておきのをひとつご紹介。

東京フィル名演集

1991年に発売された、「東京フィルハーモニー交響楽団名演集」と題する5枚組のCDボックス(ナミ・レコード)がある。
楽団創立80周年を記念して編集されたものだそうで(ということは来年は創立百年か…)、尾高忠明指揮のドヴォルザーク8番のプラハ公演をはじめとする、この老舗オーケストラの1980年代の貴重なライブ録音が集められている。
つい最近も銀座の○野楽器の店頭で見かけたので、まだまだ入手可能だろう。

この中に、ジャン=バティスト・マリ指揮の「アルルの女」の、1985年2月東京文化会館でのライブが収録されている。
実はこの日、当時23歳のワタクシめも客席で聴いていて、ことのほか印象深い演奏会だったのだ。

ジャン=バティスト・マリという人は1912年フランス領アルジェリア生まれ、私の結構好きな指揮者で、ずいぶん以前にこんなのとかこんな文章も書いているけれど、今はどうしているのか(生きているのかどうかすら)全然分からない。
生きているとすれば今年98歳で、勿論とっくに引退しているだろう。

この時の演奏会は、最初がこのCDの最初に収められているドビュッシーの小組曲で、アンヌ・ケフェレックのピアノでモーツァルトの協奏曲の何か、休憩後が「アルルの女」だったと記憶する。
オーケストラの音が、まるで舞台の床から1メートルくらい浮いたところからふわっと響いてくるような、なんとも不思議な感じをよく覚えている。
日本のオケとフランス人の指揮者による演奏はこのあと何度も聴いたけれど、こんな印象はこの時限りだった。
録音では残念ながら、そこまでは捉えられていないものの、このユルい雰囲気とオケの妙に明るい音色のおかげで、日本のオーケストラがここまでフランスのド田舎ふうの「アルル」を再現した、という珍しい記録となっている。
その「ふわっとした響き」は実演の印象ではドビュッシーで顕著だったんだけど、いま録音をじっくり聴いてみると、アンサンブルがアマオケ並みにやばい箇所がいくつもある。
実際に聴いていたときにはぜんぜん気にならなかったんだけど。
整ったアンサンブル、なんていうのは、「印象に残る演奏」にとってはどうやらあまり意味はないらしい。

この時のサクソフォンは冨岡和男氏だった。
CDには特に名前は載っていないけれど、終演後のカーテンコールで立たされた姿を私は実際に見ている。
時に冨岡氏30代後半。氏の演奏家としての絶頂期といっていいだろう。
この頃はN響をはじめとする、あらゆるオーケストラで氏の姿を見たといっていい。
「メヌエット」の最低音にまでヴィブラートをばりばりかけてしまうような冨岡氏の流儀が、この演奏の雰囲気作りに大いにあずかっている、と感じる。
冨岡氏が参加している「アルルの女」の録音というと、ライナー・ミーデル指揮の読響(日本コロムビア原盤)が有名だったけれど、このマリ=東フィルも知る人ぞ知る名演だと思う。

また、クラリネットが素晴らしいんです、この演奏。
これまた録音では捉え切れていないんだけど、木管群の中で一際かーんと乾いた音を出すクラリネットが、演奏会場の空気に響く音色のツボとなっていた。
その時は知らなかったけれど、当時の東フィルのクラリネットのトップは、かのムッシュー・クラリネット・オ・ジャポン、横川晴児氏(パリ音楽院出身、現N響首席)だった。
翌1986年N響に移籍、現在に至る。

そういえば横川さんも、今年(2010年)中にはN響を定年退職されるはずだ。
時間というのはなんと速く過ぎて行くものか。

…他にもこのCDボックス、アルジェオ・クワドリ(東フィル名誉指揮者)指揮の「イタリアのド田舎ふう」のレスピーギ(ローマの噴水)&モーツァルトとか、面白い演奏がいろいろあるんだけど、それはまた別の機会に。

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