カレファックス・リード・クインテット
カレファックス・リード・クインテット(東京文化会館・小ホール)
モーツァルト(ウェスリー編)/五重奏曲K.406
ドビュッシー(ブックホールン編)/ベルガマスク組曲
ラヴェル(ヘッケマ編)/スペイン狂詩曲
ホセ・マリア・サンチェス=ヴェルドゥ/装飾的変奏の書(Libro de glosas)
チャイコフスキー(ヘッケマ編)/「くるみ割り人形」より 小序曲
チャイコフスキー=デューク・エリントン(ブックホールン編)/「くるみ割り人形」ジャズ組曲
オリヴァー・ブックホールン(Ob)
イーヴァル・ベリックス(Cl)
ラーフ・ヘッケマ(A.Sax)
イェルテ・アルタウス(BassCl)
アルバン・ウェスリー(Bn)
オーボエ、クラリネット、サクソフォン、バスクラリネット、ファゴットという編成の、オランダの五重奏団。
サクソフォンを含む特異な編成ゆえ、CDではずいぶん前から注目していたけれど、実演をやっと聴くことができた。
お客さんが結構入っていたのには、ちょっと驚いた。
しかも、某○○○○の演奏会みたいに(自主規制。笑)無理やり動員をかけたような感じではない、的外れな箇所での拍手もなく、ちゃんと集中して聴くお客さんだった。
前半(モーツァルト、ドビュッシー)は、暗譜、立奏。
譜面台を置かず、5人で小さく寄り添うように集まって、会話をするように演奏を成立させる流儀は、オーレリアSaxQをはじめとする私の知っているオランダの室内楽団体と共通する印象がある。
どちらの曲も、私も最近演奏したばかりだったので、強い印象や驚きとともに聴いた。
基本的な音量が、CDで聴いた印象よりもはるかに小さい。
リード楽器5本という編成が信じられないほど、繊細な音の運びだった。
「スペイン狂詩曲」は圧巻だった。まるでオーケストラみたいな表現力と繊細さだった。
という言い方は変だけれど、100人編成のオーケストラと同じ表現の幅を5人で実現しようと思ったら、ひとりひとりはオーケストラ奏者の20分の1のピアニシモまで吹きこなせなければいけないという、そういう意味で。
音色は、フランス人みたいな高次倍音の多い音とは正反対の落ち着いた音だけれど、色彩的にはとても明るい。
以前、(やはりオランダの)コンセルトヘボウ管弦楽団を生で聴いた際、トランペットが木管楽器みたいな音を出していたのに驚いた記憶があるけれど、そんな感じ。
一転して「くるみ割り人形」ジャズ組曲では、全く違和感のないJazzyな雰囲気。
全員が、ジャズでもクラシックでも通用するような、とても柔軟性の高い奏法を身につけていることが分かる。
他の楽器は知らないが、日本のサックスの先生でこういう奏法を教える人ってあまりいないような気がする。
それにしてもデューク・エリントンのジャズ風編曲は実に見事というか、天才の業だと思った。
チャイコフスキーの音楽を完全に自分の領分に取り込んでいて、パロディとしても超一流だ。
日本の○○○(これまた自主規制。笑)みたいな中途半端で品のないパロディとは雲泥の差。
Libro de glosasという曲は、この中で唯一のオリジナル曲で、作曲者(1968年生まれ)による難しい解説が載っていたが、ルネサンス時代の音楽ほぼそのままのポリフォニーと現代的な語法が交互に現れるような、不思議な曲だった。
作曲者はスペインの人らしいが、オランダ(古楽の国!)の演奏家によく似合う雰囲気だ。
いや、これは、お客さんがちゃんと付くのも分かる気がした。
妙なかしこまったジャンル分けや建て前と関係ない、しかもオランダという国の音楽や国民性のありようをきちんと反映した、等身大の音楽性があるのだから。
アンコールも楽しかった。
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