名匠オレグ・カエターニ
東京都交響楽団 第686回定期演奏会(東京文化会館)
モーツァルト/交響曲第29番
プロコフィエフ/ピアノ協奏曲第3番(Pf:カティア・スカナヴィ)
ショスタコーヴィチ/交響曲第6番
指揮:オレグ・カエターニ
さきのプロムナードコンサートに続く、オレグ・カエターニの都響への客演。
このあいだはピアニストの凄さにかすんでよく判らなかったが、改めてこのカエターニという人、タダモノではない。
モーツァルトは、編成は弦が8-6-4-3-2、それにオーボエ2本とホルン2本という、モダンオーケストラの大ホールでの演奏としては最小限に近かったけれど、なんという艶やかで優雅で室内楽みたいな親密な音楽だったことか。
近代物のプログラムの冒頭に置かれたモーツァルトというのは、えてして安易な演奏になりがちで眠くなるんだけど、今日はぜんぜんそんなことがなかった。
2曲めのプロコフィエフ。ソリストは最初のうち、テンポがうまく定まらなくて(この曲で一定のテンポが保てないというのはかなりまずい)、こりゃダメかなと思ったんだけど、1楽章の再現部あたりからは持ち直して、そのあとはなかなか良かった。
この曲、オケも相当難しいはずだけれど、カエターニと都響はあきれるほど見事にぴったりと付けてくる。
アンコールにショパンの嬰ハ短調のノクターンを弾いたが、これはとても印象的だった。いろいろな人が弾く名曲だけれど、こんなにさびしげでシンプルに集中した演奏は聴いたことがないほどだ。
もし自分の知り合いの女の人に、目の前でこんなふうに弾かれたら、一発で恋に落ちます。そういう演奏だった。
黒のブラウスに草色のスカートを無造作に巻いた、少女のような外見。うんと若い人のように思っていたら、帰ってからググってみたところ1971年生まれとのことで、意外。
休憩後のショスタコ6番。
大変な名演だった。
冷たい光沢を放つような冒頭のテュッティの響きにまず惹きつけられ、続く各所で試験のように各プレイヤーに仕掛けられた見せ場・難所を片っ端からクリアしていく様を、半ば唖然としつつ見る。
この東京文化会館という、鮮やかで乾いた音の会場がまた、なんとショスタコーヴィチに似合うことか。
個人的には、デプリースト師の初客演のとき(1994年)に匹敵する強烈な印象を持った。
また是非来てほしい人だ。
スターティングメンバー、コンマス山本、Fl寺本(見事な循環呼吸!),Picc小池、Ob本間、CA大植、Cl佐藤、Bn堂阪、Hn有馬、Tp岡崎、Trbエキストラ、Timp久一。
…
手許にある『ナディア・ブーランジェとの対話』(音楽之友社刊。もしも私の「座右の書」を1冊挙げろと言われたら、これを選びます)という本の中に、少年時代のオレグが写っている写真があったので、引用。
もとのキャプションは「オーレク・マルケヴィチ」になっている。
中央がナディア・ブーランジェ、左がオレグ、右がジェレミー・メニューイン(ユーディの息子)。
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お題の通り、カエターニ、「名匠」です。ショスタコ6、暗譜でしたネ。う〜む、来年末の第九、都響で振ってくれないかなぁ。えへへ。
そして、東京文化会館の音の良さに今日改めて感心しました。モーツァルト29番をあの小編成でやって、きちんと聴こえるなんて!
ヴィオラに中山良夫さんが居ました。こういう関係がいいなぁと思いました。
投稿: よねやま | 2009.10.24 01:46