バンドジャーナル定価百円
雑誌バンドジャーナル(音楽之友社)が、現在発売中の10月号でちょうど創刊50年を迎え、記念特別付録として実際の創刊号である1959年(昭和34年)10月号の復刻が1冊、まるごと付いている。
ワタシゃ最早吹奏楽の世界からは足を洗ったに等しいので、普段はバンドジャーナルなんかほとんど見もしないんだけど、噂を聞きつけてこれは買うしかないだろうと思い、やっと入手した次第。
もう少しで次号が出てしまうところだった。
現在より一回り小さいB5判。真ん中に付録楽譜(「若い力」、そして音階と和音、簡単な練習曲が裏表になっている)が綴じ込まれていて、楽譜を除いた本文は全36ページ。定価百円との表示。
これは実に面白い。
吹奏楽界ではもはや「歴史」となっている数多くの伝説的な人物たちの寄稿や対談(若き日の秋山紀夫先生のポートレートには感嘆)、時代を感じさせる写真の数々、当時のままの広告。
表紙は芸大吹奏楽のトロンボーンセクションで、当時学生だった汐澤安彦氏や伊藤清氏が写っているそうだ。
貨幣価値は現在の10倍から15倍といったところだろう。広告によると、新刊の単行本(専門書)が200円から300円、團伊玖磨の「祝典行進曲」(新譜!)の楽譜セットが450円。
そう考えると、柳沢孝信(ヤナギサワの創始者ですね)製作のプリマ・サキソホーン(表記ママ)がアルト43000円、テナー55000円というのは、たいへんに高価なものだったことになる。外国製の楽器なんかいったい幾らしていたんだろうか。
実は私、この少し後(昭和36~7年)の頃のリアルBJを何冊か、以前から所有していたので(15年くらい前に在籍していた吹奏楽団のクラ吹きのおじさんに貰ったのだった。当時60歳くらいの方だったけれど、今どうしているのかな)、それほど驚きはなく、この復刻版が当時の印刷やら紙質をも実にリアルに再現していることが判って、そのことにむしろ感心したのだった。
私が子供の頃、家の中にあった雑誌って、実際こんな雰囲気だったな。
バンドジャーナルという雑誌は、こうしてじっくり見ていると、まぎれもなく吹奏楽という世界のひとつの「総合雑誌」であることが判る。
決して「業界誌」ではなく。
そういうスタイルが、50年前の創刊の時点から確立していたというのは、すごいことだと思う。
まだ入手されていない方は、次号の発売日前に是非入手されたし。
本編(今月号)のバンドジャーナル誌上で、加藤明久氏(N響クラリネット奏者)が「ピューリッツァー賞もののショット」と大絶賛していた写真。
この年(1959年)の7月、東京の千鳥ヶ淵公園で開催された講習会のひとこま。
講師は警視庁音楽隊の隊員さん。
講師の先生の声や、ボーボーと試し吹きをする受講生の音、お濠の水面の上を渡る風の音も聞こえてきそうな写真ではありませんか。
写っている中学生や高校生とおぼしき生徒さんも、今は六十代半ば。今この世界のどこで、何をしているんだろうか。
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