シェレンベルガーの公開レッスン
月曜は家庭の事情で仕事を休まねばならなかったのだが、うまい具合に夜、ハンスイェルク・シェレンベルガー(ベルリンフィル元首席オーボエ奏者)のマスタークラス&ミニコンサートがドルチェ楽器であったので、急遽予約をする。
マスタークラスの曲目がサン=サーンスのオーボエソナタとブリテンの6つの変容という、ソプラノサックスでもしばしば演奏される曲であり(両方とも楽譜を持っていた)、オーボエ界の世界トップの方のこれらのレッスンと演奏を目の前で観る機会はそうそうないだろうし、しかも午後6時開演なので普通に仕事している日なら間に合わないところだった。
会場のサロンに到着してみると、お客さんは60-70人というところか。
さすがに、楽器人口の絶対的な少なさゆえか、サックス系の催しのように超満員になるということはないらしい。
勿論、知った顔はいない。
後ろのほうにモーリス・ブルグ師の姿を発見(@o@)
レッスン開始。
驚いたことにシェレンベルガーという人は、サクソフォンのようなアプローチでオーボエを吹く人だった。
最初の受講生の方(サン=サーンスの2、3楽章を見事に演奏)に、音が開いてしまっている、と言って、「オ」の発音でリードを包み込むようなアンブシュアで、という、サクソフォンの吹き方みたいなアドバイスをしていた。
オーボエのアンブシュアというと、なんとなく横に引くようなイメージがあったけれど、そうではなく。
そうすると受講生の方、ピッチが下がってしまうので、そこから先は延々と「息の支え」と呼吸法の話。
これって、四半世紀前に私がO師匠(勿論サックス)のレッスンを初めて受けた時と、全く同じ流れじゃないですか。
通訳が間に合わないような早口の流暢な英語で、最初の人のレッスンの8割は呼吸のイメージと上半身のリラックスについての話だった。
呼吸法については、堅いテーブル(横隔膜)の上に置いた風船(肺)を上から押して空気が溢れだすような、という例えが興味深かった。
横隔膜を下げるとか上げるとかいう表現をする先生もいるけれど、横隔膜というのは不随意筋なのでイメージがしづらい言い方だなあ、と思っていたところだったので、横隔膜を不動のものと捉える説明はわかりやすいかもしれない、と感心。
息の支えと柔軟性のためのエクササイズとして、ディミヌエンドをしていって、音が無くなってしまう瞬間にまた吹き直してそこから更にディミヌエンドしていく、というアプローチなど、様々なヒントがあった。
ふたりめの方は奏法的な問題がなかったので、いきなり曲についてのレッスン。
ブリテンの曲のもととなったオイディウスの「変身物語」と、この曲のどの場面がどこに対応している、という詳細な説明がたいへん面白かった。
聴くほうとしても、そういうことを分からずに聴いていては、曲の真価など分かりっこないわなあ。
ギリシャ神話というのはヨーロッパの方にとっては常識なので、曲の理解については日本人であるというその時点でハンデが付いていることを、痛感。
ミニコンサートの曲目は、バッハのパルティータ(BWV1013)、ブリテン、テレマンのファンタジー12番(すべて無伴奏)。
柔軟性と伸びやかさにみちた、快い音を、目の前2~3メートルで浴びる。
とても「普通」の音だ。
でもこれはきっと、想像もつかないような修練と経験の積み重ねの上に獲得し直された「普通」だ。
ブリテンの第1、4曲をレッスンでとりあげてしまったので、急遽第3、5、6曲に変更。暗譜で吹いていた。
全体にちょっと調子が悪くて、やり直したりしていたけれど、きっと昨日までずっとコンクール(国際オーボエコンクール・軽井沢)の審査で、あまり音出し出来ていなかったのだろう。
たいへん貴重な2時間半だった。
オーボエ吹きだけに占有させておくのは勿体ない。
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あ~!!聴きたかった。
ブルグやシェレンベルガーやコッホはあこがれです。器楽を越えた音楽。
投稿: おとう | 2009.10.21 12:32
自分がブルグとシェレンベルガーと同じ空間にいるというのは、とても不思議な感じがしました。
おふたりはちょうど前日の18日まで開かれていた、オーボエの国際コンクールの審査員としての来日だそうです。
28日には3年ぶりのブルグのリサイタルを聴いてきます。楽しみ!
投稿: Thunder | 2009.10.23 03:03
DOLCEのサロンコンサートで鑑賞できて嬉しいです。まさか?!M.Bourougue!が来場するとは。
投稿: SERIEⅢ | 2009.10.23 11:37