若杉弘さんを悼む
昨夜おそくネットニュースで知った。
とにかく、ショックだった。
残念とか、そんな言葉では済まない。…
他のネタはあったけれど、急遽予定変更。
この人もたくさん聴いたなあ。
私が19年前、定期会員になった当時の都響の指揮者陣は、「音楽監督・首席指揮者」若杉弘、「指揮者」大野和士、「名誉指揮者」ジャン・フルネ、というものだった。
今となって思えば、なんという目も眩むような豪華な布陣だったことか。
東京のオケ界ではいまだかつて他の誰も出来なかったレベルの若杉さんの企画力と情報発信力と、有無を言わせずオーケストラを鍛えるというフルネ師との分担の上に、若かった大野さん(30になったばかり)や小泉さん(40になったばかり)がのびのびと暴れていたという、幸福な図式。
コンサートに行く、オーケストラを聴く、ということがこんなに知的好奇心をそそられるエキサイティングな出来事だ、ということを実感したのは、ほとんどこの時期の体験のおかげだ。
今に至る私のコンサート聴き歩き中毒は、この時期に定着化したと言っていい。
もともと普通の大学にいたのが、歌が好きで芸大の声楽科に入り直し、途中から指揮科に替わったという出自もあり、自分の思い入れや夢を、社会や歴史への興味とともに演奏に向けていくそのあり方は、いい意味でアマチュア的で、トレーニング能力に欠けるという非難の声が当時からあったのは知っているけれど、別にいいじゃんそんなことは、と思っていた。
ラヴェルのオペラ2本立て(「子供と魔法」と「スペインの時」)の演奏会形式上演や、ブーレーズ「プリ・スロン・プリ」の日本初演などの記念碑的な公演の数々は、今でも鮮明に覚えてますよ。
N響とやったオネゲルの「火刑台上のジャンヌ・ダルク」なんか、のちにデュトワで同じ曲を聴いたときよりずーっと感動的だった。
最後に聴いたのは、昨年6月の東フィルとのドビュッシー「ペレアスとメリザンド」(新国立劇場)。
これを聴くことができたのは本当に幸運だった(この時点で既に相当体調が悪かったらしい)。
都響では1月の三善「響紋」、デュティユー他。
まだまだ聴きたかった(聴けると思っていた)のに。
追悼に、私の大好きなマーラーの交響曲第3番のCDを聴いている。
都響との1990年6月のライブ。残念ながら実演は聴いていない。
いやあ、若い音だなあ。
なにしろ1時間半もかかる長い曲なので滅多に全部通して聴くことはないけれど(巷ではとっくに廃盤になっていたところ、都響の事務局に1セットだけ残っていたのをたまたま見つけて買ったのが2年くらい前で、以来通して聴くのは三度め位か)、こんな機会に聴くことになるとは、なんたる皮肉。…
都響音楽監督退任の日の演奏会のチラシ。(1995年3月28日、サントリーホール)
在りし日の勇姿に、最敬礼。
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