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2009.04.01

ラヴェルのサクソフォン四重奏曲

かの大作曲家モーリス・ラヴェル(1875-1937)が、「ボレロ」の初演でサクソフォンを吹いたマルセル・ミュールの依頼により、サクソフォン四重奏のための作品を書くことを承諾していた、というのは、有名な事実である。
そのことは例えばこちらでも言及されているし、パリ国立音楽院制作になるビデオ「Marcel Mule」の中で、ミュール自らが喋っていることでもある。

残念ながらラヴェルは、晩年、自動車事故の後遺症ほかによる脳障害のため、話すことも字を書くことも(もちろん音符を書くことも)できない状態に陥り、62歳という決して長くない生涯の最後の5年ほどは何も作品を残すことがならなかった。
耳や意識は最後まで明晰に働いていたということなので、まったくもって痛ましい話である。

ラヴェルの頭の中で鳴っていたであろうサクソフォン四重奏の音は、こうして永遠に聴けぬこととなってしまった、と思われたのだが、最近、知り合いのベルリン在住、ロンデックス門下のサクソフォン奏者J.E.氏より、驚くべき情報をいただいた。
書かれないまま幻と消えたと思われたラヴェルのサクソフォン四重奏曲の第1楽章の、ほぼ完成に近い草稿が、ベートーヴェンやブラームスの作品をリアルタイムで出版してきたドイツの名門音楽出版社、ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社の倉庫に埋もれていたのが最近発見され、近々刊行の準備が進められている、というのである。

なぜ、通常ラヴェルの作品を出版しているデュラン社やマックス・エッシグ社ではなく、ブライトコプフなのか、そしてなぜ今の今まで埋もれていたのかは不明であるが(J.E.氏は、ブライトコプフの編集者がラヴェルを、あるいはサクソフォンのことを知らず、楽譜だと思っていなかったんじゃないか、と冗談を言っていたけれど、なにしろフォーレの若き日の傑作である「ヴァイオリン・ソナタ第1番」を呆れるような劣悪な条件で出版した前科のあるフランス嫌いのブライトコプフのことなので、ありえない話ではない…)、何はともあれ、これは素晴らしいニュースである。

J.E.氏はベルリンで既に実際の刊行準備にかかわっており、氏の好意により、楽譜をちょっとだけ見せていただくことができた。
Passacailleというタイトルのついた中庸なテンポによる楽章は、パッサカリアの名のとおり、低音(バリトン)から始まる短いモチーフの交錯がだんだん全楽器に拡がって、やがて元通り静まってゆくという、典型的なラヴェルの晩年様式だった。
J.E.氏の話によると、草稿はこのあとに「Allegro」とだけ書かれた白紙の五線紙がついていたということなので、「パッサカイユとアレグロ」、という2楽章形式の作品として構想されたのではないかと思われる。
音域はすべてBフラットからFシャープまでの通常音域に収まり、フラジオはおろか、特殊奏法は一切用いられていない。
いかにもラヴェルらしい、息を呑むような美しい楽譜の見てくれに込められた、職人芸の勝利。
どんな音がするのかな。「夜のガスパール」のような綾なす幻想譚か、「クープランの墓」のような古典美の精粋か。
「ヴァイオリンとチェロのためのソナタ」みたいな、白昼夢のような音がするんじゃないかな。
史上すべてのクラシカル・サクソフォン奏者が熱望した、真の(もしかしたら最初の)第一級のレパートリーを、私たちはついに得ることになる。

そしてまた、この楽譜をどこの団体が初演するか、ということは、フランスのサックスカルテット界のヘゲモニー争い、という点で、なかなか微妙に興味深いものでもあるので、しばらくは目が離せないところだと思う。
これは、実際の音で聴く機会が、本当に楽しみだ。
 
 
 

ところで、今日は何月何日でしたっけ。

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コメント

すっかり騙されて真剣に最後まで読んでしまいましたw
本当のことだったら、どんなにか喜ばしいことでしょう。
「パッサカイユ」といえばピアノトリオの3楽章ですね。手が込んでますなあ(^O^)

どうも、たいへんお騒がせしました。
話をもっともらしくするためにいろいろな手を用いたもので(J.E.氏も実在しますが、そんなに仲が良いわけではありません)、むやみに長くなって、いまいちスマートさに欠ける文章になってしまいました。

なんだか、自分で自分の文章のパロディを書いているような、不思議な気分です。
なんだか私も、現実には不可能な願いながら、ラヴェルのサクソフォンカルテットを本当に聴きたい、と思えてきました…

という訳で、あくまでもこれは「4月馬鹿ネタ」ですので、そのつもりでお読みくださいませ。
この先、検索等でここに辿り着く方もいらっしゃると思うので、一応ご注意まで。

しっかり、真剣に読んでしまいました。
マイッタ!!!
一瞬、いい夢を見せていただきました。
ありがとう。

>おとう様

どうも、ご無沙汰しています。
「夢」…まさにそうですね。
ありがとうございました。

はじめまして^^
ラヴェル好きなので読んでましたら・・・
私もすっかり信じてしまいました(笑)
素敵なぶろぐですね・・・^^

>sulec様

遅くなりましたが、コメントありがとうございました。
このエントリは私なりの、ラヴェルへのオマージュのつもりで書いています。
受け止めていただけたようで、嬉しく思います。

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