コンサートまとめ
ブログが滞っているあいだに聴いたコンサートを、まとめて書き留めておきます。
シンフォニエッタ静岡 第11回定期演奏会(グランシップ・中ホール)
ラドミロー/交響詩「ラ・ブリエール」
サン=サーンス/ヴァイオリン協奏曲第3番
サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェエラザード」
Vn独奏:オリヴィエ・シャルリエ
指揮:中原朋哉
久々の静岡入り。
今回のSSJ(Sinfonietta Shizuoka Japan)は、世界最高のヴァイオリニストのひとり、パリ音楽院教授オリヴィエ・シャルリエがこの演奏会のためだけに4日間来日して、十八番のサン=サーンスと、コンマス席に座って「シェエラザード」を弾くという、驚天動地の贅沢。
どうしてそんなことがこの静岡で起こり得るのか、正直、不思議だ。
心なしか、客入りもいつもより多めだった。
1曲めのポール・ラドミロー(1877-1944)は、中原氏コダワリの作曲家。
ラヴェルの同世代のフランス人で、パリで活躍していたら同時代の誰よりも有名になっていただろうと言われつつ、地方に引っ込んでしまったがために今日ではほとんど知られていない。
この「ラ・ブリエール」というのは、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」を思わせる響きでディーリアスのような音風景を描いた、要するにたいへん魅力的な曲である。
実演ではSSJでしか聴いたことがない。
2曲め、シャルリエ登場。
少々安っぽい音楽に聞こえないこともないこのサン=サーンスのコンチェルトが、シャルリエの手にかかると、あたかも世界で最も感動的な傑作のごとくに鳴り渡る。
息を呑みつつ聴く。
客受けは「ツィゴイネルワイゼン」のほうがよかった模様。
後半は「シェエラザード」。
ホルン4人にトロンボーン3人、打楽器もどかどかと加わる大編成で、第1ヴァイオリンが(コンマス席のシャルリエを加えても)5人しかいない室内オケとしてはバランス上無理があるんじゃないかと思っていたが、心配は無用とばかりに弦が轟然と鳴っていた。
実に立派な「シェエラザード」だった。
シャルリエのような世界的ソリストがゲストとして頭に座ってこの曲を弾くというのは、ありそうでなかなかない貴重な事態だ(クリヴィヌ指揮仏リヨン国立管のCDでジャン=ジャック・カントロフが弾いていた前例があるが)。
演奏は、まあ、細かくはいろいろあったけれど、オーケストラの成長のためには時にこうして「無茶」をしてみる、というのは重要なことだ、と実感。
無茶をしてみる、というのは、そのぶん「可能性」の領域が広がる、ということだ。
領域が広がれば、広がったそこを埋めつくすべく、成長する人は勝手に成長するだろう。
オーケストラに限らず、どのような場合でも、おそらくそういうものだ。
この日の出演者(シンフォニエッタ静岡のホームページより拝借)。
えぇっこの人が!と驚くような意外な方も乗っている。
オーボエがhtb.とか、ヴィオラがalt.とか、楽器名(略称も)が皆フランス語というのが、コダワリを感じさせる。
ティンパニがtimb.なんだ、と思ったら、ティンパニってフランス語でtimbalesと書くらしい。
なんか、浮かれ踊り出したい気分(笑)。
…
2009都民芸術フェスティバル 室内楽シリーズNo.8~清水和音・ピアノ三重奏の夕べ(東京文化会館・小ホール)
シューベルト/ピアノ三重奏曲第1番D.898
ラヴェル/ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
同 /ピアノ三重奏曲
清水和音(Pf)、松田理奈(Vn)、向山佳絵子(Vc)
冬から春に移るこの季節の毎年の恒例、都民芸術フェスティバルの、室内楽公演。
清水和音さんといえば、ロン=ティボーで優勝した頃の、若く精悍なイメージがいまでも印象深いけれど、あれからもう30年近くが経つのね。今はすっかりいい感じのおじさんになった。
いかにも、気難しそうだけどめちゃめちゃ腕の立つ職人さん、という雰囲気のピアノ。
向山さんもいわば「大ベテラン」だし、一番若い理奈ちゃんがかなり緊張してそうだったけれど、このひたむきさがまた良いのです。
意外にも、ピアノ無し、立奏のヴァイオリンと座ったチェロの一騎討ちの「ソナタ」が最も印象に残った。
ラヴェルが書いた、間違いなく最も難解でハジケた音楽。
…
新日本フィルハーモニー交響楽団 第442回定期演奏会(すみだトリフォニーホール)
ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲
ラヴェル/ラ・ヴァルス
ベルリオーズ/幻想交響曲
指揮:ダニエル・ハーディング
指揮者界の若き獅子、ダニエル・ハーディングのフランスプロ。
この日はちょっと調子が悪くて(ハーディングではなく私のほうが)、あまりちゃんと聴けていないんだけど、それにしても「幻想」はめちゃくちゃに面白かった。
ステージ上にはハープ4台(!)が指揮者を取り囲んでるし、弦がほとんどノンヴィブラートに近いピリオド的奏法だったり、4楽章あたまをいきなりリピートしたり、面白いネタも満載なんだけど、単に変わったことをやっているというだけではない、管楽器だったら息の深さとかタンギングの質まで根本から変えてしまうかのような、オーケストラを操る驚くべき手腕には、驚嘆。
客演としてやってきたオーケストラに、せいぜい3日くらいの練習で、ここまでやらせてしまうとは。
それに敢然と対応する、NJPというオーケストラの闊達さと自在さも、また。
実のところ、好きか嫌いかで言うと、私はこういうの、あんまり「好き」ではないんだけど。
面白さ、才覚という点では、比類がない。
NJP恒例、この日の出演者。
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