鳴れよ縦笛、響けよ風笛
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第224回定期演奏会-フランス音楽の彩と翳Vol.15「鳴れよ縦笛、響けよ風笛」(東京オペラシティ・コンサートホール)
F.J.ゴセック/クリスマス組曲
C.ドビュッシー(A.カプレ編)/バレエ音楽「おもちゃ箱」
語り:幸田弘子
A.オネゲル/クリスマス・カンタータ
Br独唱:東原貞彦
合唱:東京シティ・フィル・コーア(合唱指揮:藤丸崇浩)
児童合唱:江東少年少女合唱団(児童合唱指揮:櫻屋敷滋人)
指揮:矢崎彦太郎
クリスマスの季節にふさわしい演奏会だった。
表面的な、というか商業的なそれっぽい雰囲気とは無縁の、人の心の奥にある最も敬虔な気持ちの顕れのような、そんなクリスマス。
ちょっと教会の中みたいな雰囲気の三角天井のこのオペラシティという会場も、いかにもふさわしい。
ゴセックはモーツァルトと同時代のフランス人だが、モーツァルトよりももっと古雅な感じがする。小型の可搬式パイプオルガンとチェンバロを通奏低音に置いた、小さな組曲で幕開け。個人的な好みとしてはもう少し弦の人数を絞り込んだほうが良かったけど。
2曲めの「おもちゃ箱」。勿論昔からレコードやCDで親しんではいるけれど、生で聴く機会は滅多にないし、そもそもバレエの筋書き自体よく分からないし、音楽を聴いていてもどこが区切りなのかよく分からない。部分部分はとてもドビュッシー的な響きで、ドビュッシー自身のオーケストレーションではないにも関わらず、ある意味ドビュッシー以上にドビュッシー的、なんだけど。
今回は指揮者の矢崎さん自身の脚色による語り付き、ということで期待したけれど、やっぱりよく分からなかった(苦笑)。語りの幸田さんは大ベテランの芸だったけれど、さすがに少々歳を感じたか。
演奏は良かった。7月のプーランクの時より管の繊細さが格段に増している。ピアノが大活躍。
休憩後の「クリスマス・カンタータ」。
これは素晴らしかった。まさに名曲の、名演。
低周波騒音みたいなオルガンのペダルと低弦の持続音で、まるでこの世の絶望をすべて背負ったかのように重苦しく始まり、合唱の祈りの歌とともにそれが進むと、頂点で児童合唱による突然の清楚な響きで場面が一転、極めて明朗で幸福な世界が現出する。
「きよしこの夜」を始めとする4曲のクリスマス・キャロルが、対位法的洗練の粋を尽くして同時進行で進むクライマックスの部分は、目眩がするくらいに感動的だ。
こんな素晴らしい曲が、なぜこんなに稀にしか演奏されないんだろうか。そんなに有名な曲ではないけれど、聴けば絶対に感動するんだから、もっと演奏されて然るべきだし聴かれるべきだと思う。
合唱、とくに児童合唱の熱演に、拍手。
終結近くのバリトン独唱、「地には平和あれ、善き人の心に平和あれ」という一言が、重い。
オネゲルという人が、この世界に対していかに厭世的で悲観主義にみちた人だったかを思うと、この一言の歌詞に込めた想いは、到底私たち平和ボケ日本人の想像の及ぶところではない。
このような曲をとりあげてくれるシティフィルと指揮者の矢崎さんに、感謝。
演奏会が終わって外に出たら、そこは極めて普通のニッポンのクリスマスでした(苦笑)
ま、いいんですけど。
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