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2008.06.26

ある伝統主義者

TMSO, 080625東京都交響楽団 第665回定期演奏会(東京文化会館)

ペンデレツキ/弦楽のための小交響曲
同 /ホルンと管弦楽のための協奏曲「ヴィンターライゼ(冬の旅)」(日本初演)
 Hn:ラドヴァン・ヴラトコヴィチ
メンデルスゾーン/交響曲第3番「スコットランド」
 指揮:クシシトフ・ペンデレツキ

ペンデレツキ(1933-)といえば、昔日の前衛音楽界の世界的オピニオン・リーダーだった作曲家。
五線を真っ黒に塗りつぶした、現代絵画みたいな「広島の犠牲者によせる哀歌」の楽譜と、耳をつんざくようなトーン・クラスターをテレビで見聞きして、スゲェことを思いつく人間がいるものだ、と感嘆してから、幾星霜。
指揮者として、20年前に都響に客演したことがあったらしいし、他にもN響を何度か振りに来ていたそうだが、私は初めて接する人だ。
客入りはなかなか良い。やはり話題になっているんだろうな。
楽しみにしつつ聴く。

…なんとまあ、わかりやすい音楽であることか。
勿論、「強烈な不協和音」は随所で駆使しているけれど、メロディ自体はたいへん人間の感覚に適ったエモーショナルなものだし、名手ヴラトコヴィチが名人芸を聞かせた2曲めなど、ドラマティックなわかりやすさと笑っちゃうような楽器法上・構成上の面白さに満ちている。まるで映画音楽みたいだ。
曲目解説にも「近年は『ネオ・ロマン主義』と呼ばれる聴き易いスタイルに変化している」とあったけれど、ここまでとは。

だが、これがどうやら、もともとこの人本来のスタイルであるようだ。
「前衛のチャンピオン」と呼ばれた70年代の当時から、ペンデレツキの発想のモデルとなっていたのは、実はチャイコフスキーとベルリオーズだった、ということを論証した片山杜秀氏の(プログラム冊子中の)論考は、たいへん興味深く、また説得力がある。
伝統とその根源を過激なまでに追求する、という姿勢が、一見前衛っぽく見えていたこともあったのだ、という。

ホルン協奏曲の後は、ヴラトコヴィチ氏、拍手に応えてアンコールはメシアン『峡谷から星たちへ』より「恒星の呼び声」。
「…数日前に亡くなった、日本の偉大なホルン奏者Mr.チバの思い出に」などと英語でアナウンス(よく聞きとれなかったが、たぶんそんな内容)してから、演奏。
本プロにも負けないほどに、百面相のようないろいろな音色を駆使しての、息を呑むような素晴らしい演奏だった。
『峡谷から星たちへ』は、メシアン作曲の大管弦楽による長大なシンフォニーなのだが、このひとつの楽章だけがホルンのどソロなのだ。
ちなみに若杉弘指揮の都響が日本初演している。このホルンソロは笠松さんが吹いたはず。

メインプロはメンデルスゾーンの「スコットランド」。
なんでメンデルスゾーンなんだろう?と聴く前は不思議に思っていたけれど、なるほど、ペンデレツキさん的な何らかの「伝統」に関する問題意識と符合するところがあるのだろう。
なかなか興味深い演奏だった。いろいろな旋律線やリズムの動きがはっきり分かる演奏。この曲にありがちな「ロマンの香り」というのはそれほど無い。なんだかとても小さな編成のように聞こえる。たしかに14型だからいつもに比べれば一回り小さいんだけど、それ以上に。

ペンデレツキという人は左利きなんだろうか。指揮棒は持たず、要所要所の指示は大きな左手の動きで出す。
大振りだがシンプルでわかりやすい指揮だった。
ほかのレパートリーも聴いてみたいな、と思った。

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コメント

ヴラトコヴィチ氏の演奏、モーツアルトのコンツェルトを持っていますが、柔らかめの音で好きです。
バーチ氏の訃報を受けて、暫くは追悼の意を込めた演奏を捧げるホルン吹きさんがきっと多いでしょうね。

『峡谷から星たちへ』は知りませんでした。
(無知さがバレてしまいます…)
ここで良い情報を得ましたので、早いうちに聴けるようCDを探してみたいと思います(^-^)v

ヴラトコヴィチは都響にはよく来られる方で、私が聴いただけでもう三度め位でしょうか。R.シュトラウスの2番とかを聴いたことがあります。
あとはレ・ヴァン・フランセでお馴染みですね。

「峡谷から星たちへ」は…
本当に聴かれるときは覚悟してくださいね(^^;
なにしろ全部だとCD1枚に収まらない(?)ほど長い曲で、しかも今回のペンデレツキよりずっと前衛的な曲ですので(^^;;

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