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2008.06.27

【新着CD】Evergreen

Evergreen

Evergreen~岩井直溥・吹奏楽作品集
岩井直溥指揮 東京佼成ウィンドオーケストラ(佼成出版社

吹奏楽をやっていた人間なら、「岩井直溥」の名前を知らない人はおそらくいないだろう。
大正12年(1923年)10月2日生まれ。東京音楽学校(現・芸大)でホルンを専攻し(先日亡くなった千葉さんの数年先輩である)、終戦直後からジャズ・劇場界で活躍した叩き上げのミュージシャンにして作編曲家。そのあまり知られていない生い立ちについては、当CDの解説が非常に詳しい。
私たち吹奏楽人にとっては、「ニュー・サウンズ・イン・ブラス」シリーズのスタート時からの編曲者・指揮者として、日本の吹奏楽界にポップスを持ち込んだ張本人にして先駆者。
吹奏楽の演奏会というと、クラシックの編曲・吹奏楽オリジナル曲が第1部で、第2部がポップス、などという形が当り前だけれど、この形が定着したのも元を辿れば岩井直溥氏の功績なのである(岩井さん登場以前の吹奏楽は、クラシック・オリジナル以外といえば、せいぜいミュージカルのセレクションとか民謡メドレーとか、その程度しか演奏していなかった)。

岩井さんという、今年85歳(!)となる吹奏楽界のベテラン音楽家のオリジナル作品集がこうして世に出たことは、何はともあれ、めでたくも画期的な出来事である。

まあ、このCDの企画は明らかに私のようなおじさん世代をターゲットにしたもので、まんまと乗せられて買ってしまったことには、ちょいと鼻白む思いはあるんだが。

このCDの2曲めに入っている「ポップスオーバーチュア『未来への展開』」は、私がサックスという楽器を吹き始めたまさにその年である、昭和50年(1975年)の吹奏楽コンクールの課題曲だった。私たちの中学校は別のクラシカルな課題曲をやっていたんだが、隣の中学校の吹奏楽部との合同練習会でこの曲を初めて聴いて、驚いたのなんのって。「カッコイイー!」と。
「メイン・ストリートにて」とか、「ポップス変奏曲『かぞえうた』」とか、この近辺の年度の課題曲だった岩井作品には、私の同世代の多数が似たような感慨を持っているに違いない。
ちょっと下の世代だったら、「ポップス・マーチ『すてきな日々』」ですね。これは平成元年の課題曲。

続いて収録されている、各地の吹奏楽団の委嘱作品をはじめとする諸作品も、パターン的には同じで、1回聴いただけではどのトラックがどの曲なんだか、よく判らない。
岩井アレンジというと、「ワンパターン」と批判されることも多いけれど、その音楽と書いている人のキャラクターとがそれだけ不可分なまでに一体化しているということで、ひとつの「天才」の条件だろうと思う。モーツァルトだって、ストラヴィンスキーだって、アルフレッド・リードだって、皆そうであるように。

演奏は、いかにポップス調とはいえ、やはり84歳の音楽家が自作を指揮しているという雰囲気で、音ひとつひとつを慈しみつつ鳴らしている感覚があり、当然ながらテンポもゆったりしている。
願わくば、オーケストラの側に、もっとウキウキとした楽しさというか、指揮者を煽りたてるような自発的な勢いがあれば、なお良かった。指揮者の意図をよく汲んで吹いているんだろうけれど、それ以上のものではない。メロディはきっちり吹いているけれど、遅いテンポのゆえぶつ切りになってしまっていて、テンポの遅さを超えて音楽が前へ進んでいかないのがもどかしい。
ある意味、「回想のポップス」だな。これらの課題曲が実際に演奏されていた昭和の50年代、十代だった私たちが感じていたであろうリアリティは、ここにはない。
なにかが「歴史」に組みこまれていくというのは、そういうことなのかもしれない。

とはいえこのCDが、そういった不満もすべて含んだ上で、ある種の記念碑的な制作物であることは、間違いない。

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コメント

岩井直溥氏といえば、ある演奏会で、ご自身の編曲作品を振りながら、ステージ上で客席を向いてニコニコステップを踏んでいたのが強烈に印象に残っています。岩井氏自身は、クラシックという継続するものを優先して望んでいたのかどうか、気になります。

自分で編曲をするようになってよく分かったのですが、編曲というのはすぐれて構成的でクラシック的な「演奏」行為のひとつだと思うのですよ。
岩井さんはたしかに、ビッグバンドのトランペット奏者としても活躍された方ですが、「かっちりと構成されたものを作る」というクラシカルな志向は必ずやあったと考えます。

私はなにしろアマチュア吹奏楽というものをほとんど聴かないので、実物の岩井さんというのは、大学生の時、駒澤大学のバンドの演奏会で見た姿のまま止まっています…

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