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2008.05.24

江川さん

080522江川良子/サクソフォン・原田恭子/ピアノ デュオ・リサイタル(ルーテル市ヶ谷センター)

プーランク/オーボエ・ソナタ
J.S.バッハ/ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタBWV1028
デニゾフ/ソナタ
R.クラーク/ヴィオラ・ソナタ

サクソフォン関係のコンサートはとても久しぶり。
といっても、考えてみたら1ヶ月前に平野さんの昼公演に行ってるけど。
1ヶ月空くと「とても久しぶり」、と思ってしまうというのは、ちょっとオカシイかも(苦笑)

江川さんとは実は不思議な縁があって、初対面は15年も前に溯る。
平成の初めから毎年参加していた、アルフレッド・リード博士指揮の「音の輪」コンサートの、第5回の結成式に初参加の新人として現れたのが、中学2年生(間もなく3年生になった)の江川さんだった。
中学生の新人がいるよ、という話を前もって聞いていたから分かったけれど、知らなかったらとても中学生には見えなかっただろう。その頃からもう目茶苦茶に上手だったし、しかも実年齢が不自然に思えるほどの落ち着いた物腰と、完成された音楽性が印象的だった。
長じて芸大や私立の音大に入るような子の、中学生や高校生の頃の演奏というのは何人か聞いたことがあるけれど、普通はいくら巧いとは言ってもたいていどこかに年齢相応の「幼さ」を残しているものだが、江川さんだけは例外だった。その後に及んでもそんな人は見たことがない。

あのコ、4年後には芸大に入ってるよ、と私は当時予言をして、実際その通りになったけれど、「オレ、アンタのこと中学生の頃から知ってるもんねー」などというオジサンが近くをウロチョロしていては若人の真っ直ぐな成長が妨げられると思ったので(別にそんな大仰なことはありませんが)、その後は少し距離を置くようにしていたところはある。
だけどまあ、ここにこうやって書いちゃったし、最近何かといろいろな機会に同席することも増えてきたことだし(このあいだなんかアンサンブルコンクールの審査講評を貰ってしまった。誉めていただいてありがとうございます・笑。江川さんに自分の演奏を審査される日が来るとは夢にも思わなかったぞ。長生きはしてみるもんだ)、こんど一度じっくり話をしてみなきゃいけないなあとは思っている。

そんなわけで、我が家のアルバムには、15年前、中学3年生になったばかりの江川さんと一緒に演奏会本番の舞台裏で撮った写真が貼ってあるのだった。
ちなみに先日の発表会でピアノを弾いてもらったMさんも一緒に写っている。彼女も実はサックス吹きなんですねー。私たちはどういう関係って、「そういう関係」です(笑)

前置きが長くてすみませんね。なにしろ15年分なもので、ご勘弁を。

で今回のリサイタルだけれど、既にしてそのような事情なもので、私としては、やっと!江川さんの演奏を一晩ちゃんと聴けて嬉しかった、ということに尽きる。
とても「開かれた」演奏だったと思った。音楽を聴き終えた印象が、そこで終わってしまうことなく、他のさまざまな連想や思索へと繫がっていく。
だから、聴く人をいきなり恋に陥れるような直接的なインパクトのある演奏ではないのだけど(笑)。
たぶん、江川さんというのはとても謙虚な人なのだろうと思う。「私はこう思います」、のあとに、「が、あなたはどう思われますか?」という問いかけが、決して押しつけがましくなく、自分の思いの自然な発露として、演奏の中に含まれているように感じる。

アンコールでブラームスの作品120-1のクラリネット(またはヴィオラ)ソナタの2楽章をアルトで演奏したけれど、それがショックに近いくらいに美しい音楽だった。ああ、こんなに美しい音楽がこの世の中にはあることをオレはすっかり忘れていた、と思って、家に帰ってから横川晴児さんのCDを(何年かぶりで)取り出して聴いて、マジ泣きした。
メインプロの、レベッカ・クラークという初めて聴く人(忘れられた女性作曲家として、近年再評価が進んでいるらしい)のソナタがとても印象的で、この構えの大きさ、内的な雄弁さが何かに似ている、と考えていて、アルベリック・マニャールのヴァイオリンソナタに思い至り、今日は先程までCDを聴いていたところ。これをもう少し規模を縮小して、ヴォーン=ウィリアムズ調の五音音階でアレンジすれば、よく似た世界かもしれない。
…などという行動に、聴き了えた後いろいろ走り出す気になるような演奏をするサクソフォン奏者の方というのは、それほど多くはない。

原田さんのピアノもなかなか凄かった。例えばデニゾフなんか、何十人ものピアニストで聴いているはずだけれど、ここまで鮮やかでクリスプな演奏はほとんど記憶にないほどだった。

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コメント

同じく15年前から御縁のあるトメです。今回聴きに行かれなくてすいません。お二人が三浦海岸に来て喫茶店でコンサートされたときに、たまたま落ちそうになった原田さんの譜面を裏側から押さえるという光栄に浴しました。どさくさに紛れて打ち上げにも乱入させて頂きましたが、原田さんは演奏同様に飲みっぷりも豪快で、私ゃファンになってしまいました。

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