2017年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フォト
無料ブログはココログ

« 途中経過 | トップページ | 普通の日記 »

2008.03.14

1984年11月2日

昨日届いたばかりの、1枚のCD-Rが手元にある。
サクソフォニスト雲井雅人氏の、24年前のデビューリサイタルのプライヴェート録音。
雲井さん本人のご好意により、聴くことができた。

雲井雅人 サクソフォーン・リサイタル
1984年11月2日 東京文化会館小ホール

V.ダンディ/コラール・ヴァリエ
I.ゴトコフスキー/ブリヤンス
L.ベリオ/セクエンツァ9-b
G.マーラー/リュッケルト歌曲集より「私はこの世に忘れられ」、「僕の歌を覗きこまないで」
P.ヒンデミット/ソナタ
F.マルタン/バラード
(アンコール)A.リード/シチリアーナ・ノットゥルノ
 Pf:猪俣淳子

雲井さん27歳。
思いのほか鮮明な録音の奥から、強力できわめて速度の速いエネルギーが奔出するような、若々しい演奏が聞こえてくる。
マルタンのバラードのこんなにHotな演奏は久しぶりに聴いたようだし、雲井さんが「ブリヤンス」を演奏するというのは、今となってはちょっと意外かもしれない。
しかし、ただ単にやみくもに若いというのではない。
まるでミレーの最晩年の絵(『春』とか)に降り注ぐ輝かしい光のように、老成した若々しさとでも言うべき、矛盾したような感覚がある。
これは謂わば、「獲得し直された」若さだ。

こういう演奏を記録に残すことができたというのは、本当に僥倖というべきことだと思う。
何かと何かの時間軸が交差する一瞬のような、稀なタイミングでしか存在し得ないものだろうから。

私自身は、自分の演奏の録音というのは疵だらけでみっともないのでほとんど聴き返すことは無いんだけど、あるいくつかの録音に限って(特に無傷で吹けたという訳でもないのに)、時々聴きたくなるものがある。
雲井さんにとっても、これはそういう録音だったんじゃないかなという気がする。だからこそ今頃になって人に分けようと思ったのかな、と。

このリサイタルの客席には、22歳の私もいた。
大学を卒業して会社勤めを始めた頃。そして、卒業直前から習い始めたO先生の下で、サクソフォンの奏法を基礎から叩き直されていた頃だった。
…まあ、要は、いろいろ思い悩んでいた頃だった、ということ。
「マルセル・ミュールを知らないなんて、モグリの言うことだからちゃんと聴きなさい」と言って私にミュールを聴かせたO先生は、奏法については確固たる意見をお持ちで、当時売り出し中だった若手サクソフォン奏者たち(現在では大御所と呼ばれるような方々)の多くに対して、極めて批判的だった。ある日本人サクソフォン奏者のレコードを「これは悪い見本だと思って聴きなさい」とはっきり言われたこともある。
そんなO先生が珍しくも、「雲井くんの音は悪くないわね」、と言ったというのが、このリサイタルを聴きに行った直接のきっかけだった訳だが。

雲井さんとは私は当時面識は無かったが、この2年後に運命的な出会いをすることになる。

そんなこんな、いろいろなことが未だ「可能性」として存在していた、私にとっての1984年という時代。
ある種の「元年」、みたいなもんだ(私の本家サイトのサクソフォン・コンサート記録のページは、1984年に始まっている。最初から「それより前は紀元前」、という認識だったらしい)。
この録音を聴いて、その時代の「自分」に再び逢えたような気がした。
音楽というものが、さまざまな時代やさまざまな地域に生きる人に直接に通じるタイムトンネルのようなものである、という事実を、これほど実地に即して分からせてくれるものはない。

そういえばアンコール、リードの「シチリアーナ・ノットゥルノ」だったなあ。

19841102私のところには例によって(笑)当該コンサートのチラシが残っているので、公開させていただくことにします。
むかし(最近も)読者限定で公開していたことがあった。
こういうものが表沙汰になるということには、雲井さんご本人はおそらく複雑な感慨をお持ちだろうとは思うのだけれど、敢えて。

« 途中経過 | トップページ | 普通の日記 »

サクソフォン」カテゴリの記事

コメント

>老成した若々しさとでも言うべき、矛盾したような感覚

 只今、聴いてる真っ最中。
 とてもこの年齢で演奏されたものとは思えません。。

 今、20代後半でこういう演奏が出来る方がいるかどうなのか。

雲井さん若!
共演したとき(私オリw)
「みなさん大人の楽団なので、(音量を抑えてくれて)楽にふけるので助かります」
と言ったのが印象に残ってます。

そうそう。
こんなん作りました。
http://waiwai.map.yahoo.co.jp/map?mid=oWxocU3EmNXDdw_JEA0CPieQ.f.iPPrkJi9XwCI6rA--
出入りの楽団を登録していただければ幸いです。
ブログパーツを貼っていただければなお。

その客席には神奈川県警音楽隊を除隊直後のトメも居たんですねぇ。当時まだ板橋区小豆沢にあったヤナギサワのリペア室で偶然お会いした御本人からチラシを頂いた。聴きに行くのが楽しみで、会社の机のマットに挟んでいたら、サックスの古参の先輩から「それは誰だ」と聞かれた。私がサックスを始めてまだ一年ちょっとのころの記憶です。クラシカルサックスの魅力に開眼した青春の年でした。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74078/40492940

この記事へのトラックバック一覧です: 1984年11月2日:

» ナゴヤサックスフェスタ 第2回練習&雲井先生 デビューリサイタル音源 [N363363のスポーツ見聞始]
 2/24(土)に続き、ナゴヤサックスフェスタ100人オケの第2回目の練習へ。  前回より、やや少ない印象?テナーは、前回の半分ぐらいのメンバー... [続きを読む]

« 途中経過 | トップページ | 普通の日記 »