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2008.02.09

大室先生

安川加壽子先生(敢えて「先生」と呼ばせていただく)の評伝を読んでいて、思ったことがあった。

まだまだ未開状態の日本に、海外の最先端にして最高の教育の成果を携えて帰国、センセーションと共に演奏活動と教育活動を開始。たくさんの弟子を育て、翻訳や執筆にも勤しみ、様々な関係団体の代表者となり、培った人脈と語学力を生かして海外の演奏家・教育者との交流の窓口としても活躍する。
ピアノ界に於ける安川先生のようなそんな存在が、日本のクラシックサクソフォン界にも、かつてあった。

大室勇一先生(1940.10.30-1988.7.3)のことである。
今年、ちょうど没後20年となる。もうそんなに経つのか!

残念ながら、私は大室先生とは一切面識はなかった。
5つもの大学で教えていた大室先生は、忙し過ぎて、私のようなアマチュアの若造がウロチョロしているような一帯には降りては来られなかった。
でも、様々な機会に読んだ文章や、周りにたくさんいた大室門下生たちから伝え聞いた話やエピソードの数々から、なんとなく「この人のことはよく知っている、」という感じが残っている。
比類のない知性と分析能力と、情報処理能力を兼ね備えた音楽家。そんなイメージだった。

高校の吹奏楽部の楽譜棚には、なぜか大室勇一訳のラリー・ティール「サクソフォーン21レッスン」というエチュードがあって、巻末に載っていた黒縁メガネの若き日の大室先生の写真は不思議と印象深かった。
一度だけ演奏も聴いたことがある。日比谷公会堂で聴いた、1978年の東吹の演奏会で、南弘明とかいう人のコンチェルトを演奏されたのだ。
残念ながら、あまり印象が残っていない。曲自体が、なんだかわざとソロが聞こえないように書いたんじゃないか、という感じもしたくらいで。
大学生になって、たまに開かれるサクソフォンのリサイタルなどに行くと、客席に必ず大室先生の姿があって、「(知っている写真と比べて)ずいぶんとオジサンになったもんだな」、などと思ったりした。

逝って20年。
サクソフォンの演奏家やサクソフォン専攻の音大生の数は飛躍的に増え、上手な演奏家も増え、海外帰りのプレイヤーも当り前に存在するようになった。
サクソフォン音楽の録音点数や、情報の流通量も信じがたいほど膨大に増えて、インターネットを駆使して、私ですら及びもつかないほどの情報量を易々と操るマニアな方々も、普通に存在している。
だが、そんなふうに流れゆく音楽や錯綜する情報を、人間の知的な営みの表れの総体として理解し方向付けすることのできるサクソフォン奏者にして音楽家は、日本にはその後まだ現れていないように思う。

もし大室先生がご存命であれば、現在の日本のサクソフォン界の姿には、あと10年早く到達していたのではないか、と夢想することがある。
そしてその後の10年は、もっと有効に、すべての力と方向性を束ねて邁進することができたかもしれない。

大室先生が書かれた、こんな文章をウェブ上で読むことができる。(雲井雅人SaxQのサイト内)
まあ、読んでみてくださいな。

わが楽器を語る「サクソフォーンの真の音を求めて」

これ、年表的記述を除けば、現在でもほぼ100%通用する内容である。
ふむふむ、なるほどなあ、全くその通りだよなあ…と思いつつ読み進み、最後の日付を見て愕然とする。
これはなんと、今から35年も前に書かれた文章なのである。
それだけの時を経てもなお解決はされないだろうという問題提起を、大室先生はなさっていたのだ。

いったい私たちは、35年もの間、何をやってきたのか。
突きつけられた問いが、重い。

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サクソフォン」カテゴリの記事

コメント

> そんなふうに流れゆく音楽や錯綜する情報を、人間の知的な営みの表れの総体として理解し方向付けすることのできるサクソフォン奏者にして音楽家

それって、Thunderさんのことじゃありませんか? (笑)

それは誉め過ぎだと思います。

まあ、サクソフォンに関して、自分は自分が演奏する以外の面でいろいろなことをしている訳ですが、もしかしたらそれは大室先生の後を追いかけているだけかもしれない、と思う時はあります。

初めまして。大室先生をググって、こちらにたどり着きました。
とても懐かしい~。私は大室門下の一番下くらいの弟子です。(卒業した年に先生が亡くなりました)
20年経ったんですね。
サキソフォーンシンフォニアは、大学で先生指揮のもと、アンサンブルをしたときに、先生が考えた名前です。
また、ブログ遊びに来ますね

コメントありがとうございました。

ちょうどさっき日記を書いていて、20年前の夏を思い出していたところです。
20年ですね…
来年には私自身が、大室先生の享年の歳になってしまいます。

これからもよろしくお願いいたします。

大室先生、懐かしいです。学生時代大変お世話になりました。できることを人に自慢しないところがすごかったと思います。もっぱら思い出に残っているのは、厳しかったレッスンのことよりも、よく飲みにつれていってくれたこと、や先生のお宅での新年会、それからスキー。私は先生にスキーを習いました。たしか2級?だったのでは。

 非常に紳士で、ユーモアがあり、音楽には厳しかった大室先生。私の尊敬する一人です。

 しばし思い出に浸ることができました。こちらのブログに感謝いたします。

 いずれ還暦を迎える、弟子の一人より!

夏男さま。
コメントありがとうございました。
私は本文中に書いたとおり大室先生とは面識がなかったのですが、私の文章でそのように感じていただいて嬉しく思っております。
またよろしくお願いいたします。

40年前に国立音大で大室先生にSaxのレッスンしていただいていました。今でも尊敬していますし、大室先生にお会いしなければ、今でも音楽にたずさわってはいないかもしれません。私がレッスンしていただいているころは、先生は新婚さんでした。そのころレッスンが終わって途中まで一緒に帰ったものですが先生のお家は遠くて埼玉?県だったみたいです。              旧姓 本橋 智子

コメント有難うございます。
書いてからもうすぐ6年が経つ記事ですが、こうして時折訪れてくださる方がいらっしゃるのは有難いことですし、大室先生のことを思い出すきっかけになっているとしたら私としても嬉しいです。

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