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2007.08.12

影の庭

本日8月12日は、古巣バンドの友人I氏(16年前の私の入団当時の副団長)の命日。
日航機事故の何周年、というニュースが巡ってくるたびに、思い出す。

ある人のことを覚えている、思い出すことができる、ということは、その人は(自分にとっては)生きているのと同じだ。
逆の場合を考えてみるといい。忘れてしまった、思い出すこともないような人というのは、死んでしまった人と(意識の上では)何の違いもない。
これからも毎年、思い出し続けたいと思う。…

the garden of shadowsさて、話は全く変わって。
栃尾克樹さん(東京佼成ウィンドオーケストラ・バリトンサクソフォン奏者)の新しいアルバム、「影の庭」(マイスターミュージック)を、やっと聴けた。
新譜といっても、発売からもう2週間以上経ってしまっているが(CD屋さんに行く暇がこんなにないとは思わなかった)。

素晴らしいアルバムだと思う。
ほぼ今回収録の曲目で組まれた昨年のリサイタルのレポートはこちらに、一昨年発売のアルバム「アルペジョーネ・ソナタ」の感想はこちらに挙げさせていただいており、正直言って言うべきことはこれらで尽きていて、付け加えるべき称賛の言葉が思いつかない。

と言いつつ、つまらない感想をひとつ付け足すならば、「ブレスが全然目立たない」、ということ。
バッハのチェロ組曲はいろいろな方がサクソフォンで演奏するけれど、どうもあの、細かい音符をひとしきりパラパラパラパラと吹いた後に、おもむろに休んで大きくブレスを取って、また再開する、という、クローゼのエチュードでも吹くような流儀が私、聴いていてどうも苦手なのですよ。
管楽器だからブレスを取らなきゃ吹けない、のは当然だし、ブレスを取るタイミングを確保した上でどう説得力のあるフレージングを作るか、ってところが音楽性の見せ所だ、ということは理屈では理解できるんだけど、ただ単に聴くだけの無責任な立場としては、ぶつ切れの演奏を聴くくらいなら原曲のチェロでのちゃんと繫がった演奏を聴いたほうが良い(^^;訳で。
さもなくば、先日のオーティス・マーフィーみたいに、循環呼吸を駆使するか。

このCDに入っているチェロ組曲の演奏も、最初は循環呼吸を使っているのかと思った。
だが、よーく聴くと要所要所でちゃんと息を吸っている。それも、ぼーっと聴いていたら聞き逃すような素早いタイミングで、しかもこれ見よがしな大きな音も立てずに。
これだけのブレスで、バリトンサックスでバッハのチェロ組曲を吹く、ということは、周到なフレーズの設計の上に、余程のコンパクトで完成された奏法と無駄のない呼吸法を習得していないと、絶対無理だ。…

CDのタイトルとなった、高橋悠治への委嘱作品、『影の庭』は、楽譜が作曲者本人のサイト中で公開されている。→こちら(PDF)

是非、この曲は、一度楽譜を見ながら聴かれることをお勧めする。
一流のプロの音楽家という方々の持っている「ソルフェージュ能力」というものの凄さが、実感できると思う。

「ソルフェージュ能力」とは、楽譜を見て、その音楽がどのように鳴るものかということを把握する能力である。
私の考えでは、アマチュアとプロの演奏家を隔てる差というのは、楽器の演奏能力も勿論だが、より以上にこのソルフェージュ能力の差だと思っている。
この『影の庭』という曲は、委嘱作品なのだから、この楽譜1枚以外に、音楽の全体像を把握する手がかりはない。
…もしそういう状況で、あなたが「この楽譜」を演奏しなければならないとしたら、どうするでしょう?
栃尾さんという演奏家は、それに対してどういう答を出しているか。
見物(みもの)です。

…要は、「音源」に頼らないと曲がイメージ出来ないうちは、アマチュアだ、ということ。

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コメント

ブレスの件は、私もほぼ同じ感想を持ちました。
1曲目の最初のブレスが不自然な位置になっている演奏、とても多く、気になってたのですが、今回は聴いていて嬉しくなってしまうくらいでした。音楽的によく考えられた、なんて簡単に言うこともできますけど、これは凄いことだと思います。

>「音源」に頼らないと曲がイメージ出来ないうちは、アマチュアだ、ということ

これもまったくそのとおりだと思います。
が、現実には非常に難しいことで。。

難しいのは私とて百も承知なのですが、難しいからといってやらずにいたらいつまでたっても出来るようにはならないので、時にはこうして「エラソーなこと」を言ってみるのも必要なのかなあ、と。

少なくとも、楽譜を手に入れたら当然のように次は「音源」を探す、という、アマチュアの典型的な行動パターンを、もうちょっと見直す必要があるんじゃないか、とは思います。

世界初演の曲を、私たち一リスナーがこうして楽譜と突き合わせながら聴ける、というチャンスはありそうでないことですね。

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