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2007.07.22

オーティス・マーフィー マスタークラス

オーティス・マーフィー マスタークラス&ミニコンサート(アーティストサロンDolce)

・マスタークラス
深沢智美
P.M.デュボワ/協奏曲より 第1、2楽章
坂口大介
C.フランク/ヴァイオリンソナタより 第1、4楽章
 佐藤渉(通訳)

・ミニコンサート
A.パスクッリ(ケネス・チェ編)/蜜蜂
S.ラフマニノフ(マーフィー編)/ヴォカリーズ
J.S.バッハ/チェロ組曲第1番より プレリュード、クーラント、ジーグ
A.デザンクロ/プレリュード、カデンツァとフィナーレ
A.ハチャトゥリアン(ボーンカンプ編)/剣の舞
 ハルコ・マーフィー(Pf)

17日のコンチェルトに続いて、今日は新宿のドルチェ楽器にて、オーティス・マーフィー氏のマスタークラスを聴く。
キャパ100人ほどの小スペース(ほぼ満席)の2列めに陣取って、目の前1.5メートルほどの音を浴びることになった。
マーフィー氏の深みある音色、そしてその人間性がそのまま音になったような(彼のことを直接に知る人は皆、異口同音に「あんなにいい奴はいない」、と言うのだが、まさに)素晴らしい音楽性を、存分に楽しんだ。

「音」がとにかく、美しいのですよ。なめらかで、ストレスがない。美しい、というより、聴いていて快感だ。
フランクの冒頭(ソロの冒頭2番めの音符)に出てくる第4線レ#の音を、オクターヴキーを使わない、サイドキーによる指でデモンストレーションしていたけれど、溜息が出るほど見事で曲想に合っている上に、前後のシの音との繋がりに何の違和感もない。
低音のコンパクトさといい、決して「金切り声」にならずに輝きだけが増して上がっていく高音といい、円錐管であるというサクソフォンという楽器のハンデをまるで感じさせないほどだ。
基本的に、上ずらない、落ち着いたピッチを狙うところは、やはりアメリカの流儀か。
両方の受講生ともにそうだったが、最初はマーフィー氏が吹いてみせるお手本の音との違いにびっくりしたものだったが、時間が経つにつれてだんだん似てくるのが感じられる。
振り返ってみると、私自身、普段いかに無神経でうるさい(均一のとれていない)音を、そうと気付かずに無批判に吹いたり聴いたりしてしまっていることか、と思えて、ちょっと反省。

デュボワでの言及内容は、冒頭の無伴奏のカデンツァ部分(バッハがよく用いるスタイル、と言っていた)で現れる、後の楽章で使われる素材の指摘、16分休符の長さを「句点」「読点」のように使い分けてフレーズに意味を持たせること、ピアノとともにアッチェランドを設定すること、「導音」の重要性、2楽章はサティ「ジムノペディ」やラヴェルのピアノ協奏曲のアダージョを引き合いに出して、アップビートとダウンビートの繰り返しによる立体的なフレージング、など。

フランクでは、曲自体に対するあまり深い言及はなかったものの(この曲のサクソフォン・ヴァージョンは初めて聴いたとの由)、曲想の繊細さや音楽のバックグラウンドの理解に対する要求、最低音や最高音域のピッチをはじめとする基礎的な奏法に対するチェックは、かなりに容赦ないものがあった。
低音域のサブトーンの練習法(リードの奥に舌を触れたまま発音する、という練習法は、初耳。へぇそんなこと出来るんだ)や、高音域での柔軟性を増す練習など、いくつかの興味深いアプローチの仕方があった。

ミニコンサートは、ハルコ夫人のピアノによる、素敵なひととき。
冒頭のThe Beeという曲、原曲はオーボエだそうだが、5分ほどの演奏時間をほぼ全く休み無しにエンエンと16分音符が続くという、循環呼吸のデモンストレーションみたいな曲だった。スゲェ…
バッハでも気付かれぬように循環呼吸を使って、不自然さのないフレージングを作っていたのはさすが。音域によって音色が暴れることがないので、実に心地よく聴くことができる。
デザンクロは、意外にもhotな演奏だった。

以上、実に貴重な経験で貴重な時間というか、100人くらいのお客さんで聴くのが本当に勿体ないような催しではあった。
かといって、あまりに大きな会場ではこの人の真の美点は伝わりづらいようにも思えるし、悩ましいですなあ。

さて、オレも頑張らないと。

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コメント

>「音」がとにかく美しい
私は、サクソフォンが木管楽器である事を、再認識しました。
(サクソフォンの)材質はブラスだが、音色は間違いなく木管楽器(WOOD WIND=木+息とでもいおうか)でありました。

マーフィー氏は、「低い音は管が長くなる分重くなる」と言っておられましたが、管の長さの違いによる音色の変化を抑えるために、(フランクの冒頭第2番目の音を、抜いたような吹き方になってしまい、滑らかに繋がらないところを、)サイドキーによって、管の長さを前後の音と近くすることで、息の圧力を変えずに充分息を入れ続け、滑らかに繋げていたのですね。

それにしても、循環呼吸を使った曲は、管楽器で演奏している事を考えてしまうので、聴いていて疲れる疲れる。終わった瞬間、思わず「あぁ疲れた」と言ってしまいました。

マーフィーさんの音はファットで管楽器として鳴っている感じで素晴らしいですよね。かといって以前のアメリカの奏者のようにダーク過ぎることもないですし両国の良いところを兼ね備えていますね。(都内近郊の方はほんとに羨ましいです。)

各国とも音楽性・メカニックのギャップが少なくなってグローバル化してきていますね。サクソフォンから凄い音楽家がでてくる一歩手前のような気がします。ワクワクしますね。

マーフィーさんは黒人なのでクッションが凄くしっかりしてるんじゃないでしょうか。下唇は巻いていましたか?

>うえのさん
私も、あそこまで完璧な循環呼吸は、生では初めて聴いたかもしれません。

また、フランクでの「室内楽は親密な会話のようなものだ」という指摘が印象に残っています。
当り前のことのようなんですが、そうじゃない演奏って、実は結構あるなあ、ということに思い至ったので。

>DONAXさん
下唇はかなり厚いと思います。
あの柔軟性と、サブトーン的な低音域のコントロールの見事さは、アンブシュアのクッションが相当しっかりしていないと不可能でしょうね。

Jazzのサックスには「ファットリップ奏法」というものがあるそうで、菊地康正氏の説明によると「クラシカルな奏法とは相容れない」んだそうですが、実は意外と応用がきくのかもしれない、とも思いました。

たまたま,ドルチェ楽器に行った際に
マスタークラスのことを知りました...

仙台へ戻る新幹線の都合上,
泣く泣く帰ってしまいました.

ところで,宣伝をさせてください.
私の所属する仙台サクソフォンアンサンブルクラブ,
今年で二十周年を迎えます.
それによる記念演奏会を企画中です.
詳しくはトラックバック先,もしくは
http://mkonno-coco.cocolog-nifty.com/ssec_aniversal/
を参照ください.

私もジャズではテナーがメインなのでファット経験があります。

もともと唇が厚いとあまり巻かなくてもいいということがあるかもしれませんね。結果、両方のニュアンスが使えるので有利なのかも。

ファットリップの事で、井上麻子さんがHPに書いておられたのを思い出し、探してみました。

サックスレッスンのカテゴリーの2006/04/10にありました。練習方法など書いてあります。
クラッシックでは、「さりげなく」「ばれないように」やりましょうとの事(詳しくは、麻子さんのHPでご確認下さい)

そこには何と、
「ゼクエンツァ9b冒頭のBの音は、下唇を出すだけでは安定しないので、唇の替わりに舌を直接リードに押し付けて響きを止め、・・」という、マーフィー氏のお話と関係のある部分があってまたビックリ!!

私がサックスを本格的に始めた頃にはあまり考えられなかったのですが、今ではジャズとクラシック双方の方々の相互理解というのがかなり進んできたように思いますね。

いや、実は、ジャズの方々は昔からクラシックの方法論をいろいろな機会に盗んだり実践していたことを私自身見聞きしていますが、比べてクラシックの方々は比較的最近まで頑なだったような気がします…(最近、とはいっても、10年とか20年とかというスパンの話ですが)

その20年くらいの時間的な推移や、特徴的ないくつかの出来事についても、こんど改めて書いてみたいと思っています。

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