2017年6月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
フォト
無料ブログはココログ

« ホルスト新譜 | トップページ | シュベルト&マーラー5番 »

2007.04.26

サクソフォンの黎明

Cd143浜松市楽器博物館コレクションシリーズ12~オリジナル・サクソフォーン

浜松市楽器博物館の所蔵になる、サクソフォンという楽器が発明されて間もない時代である1850~60年代製造の楽器(発明者たるアドルフ・サックス氏製作のオリジナル)を使用したCD。
コジマ録音からこの4月に一般販売開始。CD屋さんの店先にも並び始めた。

井上麻子さんをはじめとする大阪音大の教師陣による、各楽器(ソプラノ、アルト、テナー、バリトン、Cメロディ)のソロと、カルテット(サンジュレー、フローリオ、グラズノフ「カンツォーナ・ヴァリエ」より、他小品)が収録されている。
現代のサクソフォンの太くて派手な音とはまるで違う、まるでステレオのトーンコントロールで高音を絞ったような、メロウで素朴でまるい音。テナーのソロなんかまさにヴィオラのようだし。
サンジュレーの四重奏曲をこの音で聴くと、まるでメンデルスゾーンのように聞こえる。この曲がこんなにもメンデルスゾーン等のいた時代へのリンクのように聞こえたのは、初めてに近い経験。
楽器自体の(今日から見て)機能的な制約が、結果として自然な節度として働いているような気がする。クラシックや初期ロマンの19世紀というのは、そういう「節度」が当り前に(それを「制約」だとは思われずに)存在していた時代だった、ということか。
グラズノフは、こうして出来上がったものを聴いてみると、ちょっと違うかな、という感じもした。(この曲は逆に、もっと新しい、1920年代のフランスの楽器の音を想定して作られたものだ、ということが実感として理解できる。)
ちなみにソロ曲の伴奏に使われたピアノは、1874年製の85鍵のエラール。

実は私、このCDの企画が持ち上がった際に、麻子さん経由で曲目は何がいいかと軽く相談を受けていたという経緯もあって(フローリオはその時にお奨めしたもの)、楽しみにしていたのだ(^_^)
ここでの演奏がなぜ大阪音大のチームなのかというと、日本におけるサクソフォン古楽器演奏のパイオニアである、同大学の赤松二郎教授(当CDの解説も執筆されている)の存在のゆえでもある。
赤松先生は、私が初めて参加した1980年代中頃のセルマーのサクソフォンキャンプで講師のひとりだったが、その当時から「百年前の音を聴く」などと題して、夜の講師陣コンサートでビュッフェ・クランポンやアドルフ・サックスの古い楽器を演奏されていたという、筋金入りの古楽器エキスパートな方なのだ。

Cd144実際、この「浜松市楽器博物館コレクションシリーズ」のCD第1集(これは一般販売されておらず、数年前に一度当博物館を訪れた折にミュージアムショップで購入した。今はカタログに残っていないようだが…)にもサクソフォンソロが4曲入っているのだが、いずれも赤松氏の演奏である。
こちらのCDには、サクソフォン以外にもホルンやトランペット、サクソルン系の金管楽器も多数収録されている(というか、どっちかというとそれがメイン)。ホルン系の演奏はあの千葉馨御大ですよ。

それにしても、20年前の志賀や車山高原での夜に聴いた古いサクソフォンの音は、実に印象的だったな。
CDで聴いても勿論、現代の楽器との違いは判るけれど、音色の違い以上に音の空間への浸透力の違いというのは、コンサート会場の空間で実際に聴いてこそ判ることかもしれない。

Cd145この楽器で、ビゼーの「アルルの女」を聴いてみたい!
1872年の初演当時、劇場のピットで鳴っていたサクソフォンの音は、まさにこういうものだったのだろう。

CDでは、追体験可能。
クリストファー・ホグウッド指揮バーゼル室内管によるこのCD(Arte Nova)は、私の好きなミシェル・プラッソン指揮トゥールーズ管(EMI)ほかいくつかある「アルルの女」劇音楽版CDの中でも、最も学究的姿勢の強いものである。
サクソフォン奏者はMarcus Weissの名がクレジットされている。
楽器は1868年製のアドルフ・サックスだそうだ。

« ホルスト新譜 | トップページ | シュベルト&マーラー5番 »

サクソフォン」カテゴリの記事

コメント

興味深いCDですね。
誕生以来変化を続けているサクソフォンなので、ピリオド楽器を使用した演奏というのは、学問やマニアックというより表現上で大きな意味をもっていると思います。
同年代でもアメリカとフランスのそれでは全く異なるので、20世紀に入ってからはもうなんだかワケがわからなくなるんですけどね(笑)

その節は、素晴らしいアドバイスを頂き、ありがとうございました。
thunderさんの感想がとっても気になっていたので、コメントいただいて嬉しいです!
実はこの録音は、1日目はソロを中心に、2日目はカルテット、という風に2日間で行ったのですが、時間が経つにつれて楽器が目覚めていくというか、だんだんなっているのが、録音でも分かります。
私の音で言えば、『G線・・』(初めての録音)と『小さな羊飼い』(最後の方の録音)で、かなり音のつやが変わって来ているので、その辺りもお楽しみいただければ、と思います♪
録音終了後は、楽器に愛着が湧いてしまって、別れるのが辛かったです・・・
古い楽器には、本当に魂が宿っていますね。

>ミヤザキさま
そうですね。サクソフォンほどジャンルによって、あるいは奏者によって違う音色で演奏されている楽器はないんじゃないか、と思えますし。
だからこそ、「そもそもの始め」を押さえておくことが重要だ、という。

>あさこ様
おお、演奏者ご本人の登場ですね!
お疲れさまでした。
たいへんな価値のある成果だと思います。
150年の時間を体験してきた楽器には、人間のメンタリティをも変える力があるんですね。

楽器は実際に演奏されてこその生命ですから、これからも第二、第三のこういう機会があることを願っています。

とても興味深く、また、今まで考えたことの無かったSaxophoneの『古の響き』を考える機会を与えていただきました。ありがとうございます。
大阪音大ゆかりの方々に、Saxophoneの世界で色々ご活躍の方々がおられることを最近知りました。今月初めにミ・ベモルサクソフォンアンサンブルを聴いた際も感心することしきり。我が楽しみも増えました。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74078/14844452

この記事へのトラックバック一覧です: サクソフォンの黎明:

« ホルスト新譜 | トップページ | シュベルト&マーラー5番 »