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2007年1月

2007.01.31

【連載】マルセル・ミュールの生徒たち 18

この連載の趣旨、見方については連載第1回のエントリをご参照ください。

いよいよ60年代に突入。佳境に入ってきました。

1959-1960

BEAUFRETON, Bernard
BEUN, André
BICHON, Serge
BOURQUE, Pierre (Canada)
CLAUZEL, Claude
DECUGIS, Claude
FAURE, André
GALLET, François
LAMOUREUX, Jean
MIQUEU, Jacques
ROTH, Iwan (Suisse)
SEFFER, Joseph (Hongrie)
TANGUY, Claude
THIBAUT, Joël
VANÇON, Pierre
VANOVERBERGHE, René

試験曲:Concertino (Pierre Hasquenoph)

André BEUN(アンドレ・ブーン、1937.2.19-)は、ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のメンバー(ミシェル・ヌオーの後任の首席奏者)としてたいへん有名。ヌオーがソプラノを吹いたギャルド四重奏団のレコードにアルトで参加している他、のちに自らパリ・サクソフォン五重奏団(QSP)を主宰し、何枚かのCDを残している(1987年のギャルド来日時に、QSPの単独リサイタルが神奈川県立音楽堂で開かれているのだが、聴きに行くことができなかったことを大変後悔している)。
ブートリーのディヴェルティメント、ゴトコフスキーのVariations pathétiqueをそれぞれ作曲者のピアノで演奏したレコード、というのもよく聴いたものだ。

Cd133

その録音を含むいくつかの音源が、「Saxophonie」と題するCD(Corelia)で復刻されている。

1961年、ギャルドの伝説の初来日公演に最若手の隊員として同行したのに始まり、1991年の公演まで都合4回、ギャルドのメンバーとして来日した。
最後の来日時の演奏会のアンコールで、サクソフォンセクションの最前列のブーン氏が突然立ち上がってガーシュウィンのナンバーを独奏したことは、強く印象に残っている。

Andre_beun

1961年の来日時に撮影されたポートレイト。(Thunder所蔵)

Andre_beun_19611104

同じく1961年の来日時に、朝日講堂で開催された公開マスタークラスの風景。
受講生(左)は、当時東京藝術大学3年生だった大室勇一氏である。(!!)
(出典:バンドジャーナル昭和37年1月号)


Serge BICHON(セルジュ・ビション)は、ふたつ前の連載回でコメントをいただいたとおり、リヨン音楽院でクロード・ドラングル(のちにパリ音楽院に進んでデファイエに師事、現パリ音楽院教授)ほか多くの門下生(日本人を含む)を育てた名物教授だった方。
1986年、息子のフランクを社長として、BG Franceを設立、自らはアドバイザーとして製品開発に携わる。BGのリガチャーやアクセサリーにはお世話になっている方も多いことでしょう(私もそうです)。

ビション氏はまた、リヨンの門下生と共にEnsemble de Saxophones de Lyonを結成し、数枚のCDを録音している。

Cd134
I.ゴトコフスキー、R.ロベール、G.ガスティネル、A.ティスネの作品所収(REM/311182)

ここで聴ける音は、ヴィブラート控えめで音はまっすぐ伸ばし、ミュールやデファイエのような(オーケストラで言えばクリュイタンス指揮の音楽のような)起伏の大きなスタイルとはかなり異なる、「クール」で精緻な演奏で、初めて聴いた当時はかなり違和感を持ったものだったが、時が経って今となってみると、現在のフランスでスタンダードとされるスタイルは明らかにこれの延長線上にあることが判る。
CDの演奏メンバー表はこちら(いつも重宝させていただいているmckenさんのサイト)にupされているけれど、見てみるとビション自身の後任(リヨン音楽院・現教授)Jean-Denis Michatをはじめ、Sylvain Malézieux、Fabrizio Mancuso(共にハバネラQ)、Laurent Blanchard、Guillaume Bourgogneなど、のちにパリ音楽院を経て現在のフランス・サクソフォン界の第一線で活躍することになる方々の名前が並んでいて、壮観。
リヨン(ビション)-パリ(ドラングル)というラインは、サクソフォンのフレンチ・スタイルの変遷を考える上で、鍵となりそうな存在だと思う。

Jean LAMOUREUXについては、検索してみるとラムルー管弦楽団に関する記述が山のように引っかかってくるため、探しきれなかった。

宝塚初体験

東京宝塚劇場に初めて座ってきた。
演目はこちら

070130a

いやー、圧倒されましたわ。
あまりにも金と時間と手間がかかって出来上がったものを目の当たりにすると、何か批評じみたことを言おうという気もなくなるけれど、それに近い感じですね。

第1部(演劇)で1時間半、休憩(35分)後のレヴューに1時間。
前半は、題材のせいもあって、ちょっと新橋演舞場って感じだったけれど、後半のレヴューはもう、茫然とするばかりの豪華絢爛。
西洋演劇からミュージカル、バレエ、歌舞伎、日舞に至るまで、洋の東西の大衆芸能のオイシイところを全部いただいた、一大奇観だと思った。
宝塚って、ハマる人は徹底的にハマるけれど、判るような気がする。

劇場自体はとても居心地のよいところで、3列一組?で千鳥状に配列された椅子は、とても舞台が見やすいし、長時間座っていても疲れない。ロビーのデザインは基本的にピンク色のイメージで統一されており、夢の世界を演出するにふさわしい。
オーケストラはPA付きなので、音は録音みたいな不自然さがあったけれど、なかなか上手な方々の集まりと見た。
銀橋とやらのおかげで、オーケストラボックスの中はよく見えなかったが。(聞こえてくる音からすると、サックス奏者が2人ばかり加わっているようだ)

070130b

終演後、かの名高い「出待ち」の方々。

2007.01.27

須川さんのイベール

アンサンブルの練習日。
朝、PCとiPod-miniがトラブルを起こして少々遅刻。iPod-miniのリセットコマンド(選択+menu)の存在を初めて知った。へぇー。まあ、なりは小さいけどコンピュータですからね、これも。

練習では相変わらずグラズノフ。難物。
出版されている五重奏楽譜の定番、リャードフの「8つのロシア民謡」を持参したので、初見で音出ししてみる。なかなか良いかも。

Tirasi070127終了後はサントリーホールへ移動。

東京交響楽団 第543回定期演奏会

細川俊夫/スカイスケープ(空の風景) 委嘱作品
イベール/コンチェルティーノ・ダ・カメラ(Sax:須川展也)
シベリウス/交響曲第2番
 指揮:大友直人

須川さんが「色物」でない正統的なサクソフォンのコンチェルト(特に、イベール)で東京のプロオケの定期に乗るのを聴くのは久しぶりだ。
マイクなし、アンコールなし。須川さんが主体として芸を聴かせるのではなく、オーケストラが自分たちの定期公演という場で、シンフォニーオーケストラのレパートリーとしてイベールを聴かせる、ということ。
客席も、サックス吹きがいっぱい押し寄せている、って雰囲気でもないし(それでも、長野から来ている友人にお逢いしたりとか、いる人は居ます)。
こういう機会がもっと増えて欲しいし、こういう場で演奏されるべきサクソフォンのレパートリーというものがもっと開拓されるべきだと、常々思っている。
演奏も、大きな破綻もなく(須川さん本人は後で「今日はほぼ完璧、」と笑っておられた)、お客さんを惹きつける音楽的感興もきちんとあるものだったと思う。
このイベールという曲はとにかく演奏が(ソロも難しいけれど、それにもましてバックのオーケストラが)難しくて、つい最近まであっちこっち傷だらけの演奏が当り前だった。たとえ曲を知らないと判らないような傷であっても、なんとなくうまくいかなかった雰囲気というのは普通のお客さんにも敏感に伝わってしまうもので、今日のような演奏が当り前に出来るようになった昨今というのは、日本のオーケストラの進歩を実感させるというものだ。

1曲めの細川作品。プログラムを手に取って開いて読むのも憚られるような、超繊細な音世界。いくつか聴いたことのあるこの人の作品と同傾向だった。
メインのシベリウス。なかなか流れのよい、オーケストラの持つ力を率直に解放した演奏で、実は大友さんって音楽が説明臭くてあんまり好きな指揮者じゃなかったのだが、今日はちょっと見直したかも。オーケストラの音色が明るすぎていまいちシベリウスらしくない、というのは贅沢な文句か。

2007.01.26

確定申告の季節?

今日、こんなものが届いた。
昨年、バンドジャーナルにアルフレッド・リード博士追悼の原稿を書いたので、その原稿料の確定申告用の支払調書。

Slip

ある種の職業の方々にとっては、この季節、面白くも珍しくもなんともないものかもしれない。
実際に掲載されたものは、こちら(なめら~かのサイト内)に掲示してあります。

そういえば昨日(25日)は、リード博士の誕生日だった。
11時近くまで仕事にハマってなければ、追悼記事のひとつもupしたいところだったが。
それはいずれまた、日を改めて。


きたる30日に、生まれて初めて「宝塚」を観ることになりました(東京宝塚劇場の夜公演)。
もと演劇研究者の立場としては、宝塚歌劇というのは非常に興味ある対象だったんだけど、なかなか実際に観る機会というのはなかったので、楽しみ。
見どころ聴きどころ等、詳しい方いらっしゃいましたら、ご教示くださいまし。

2007.01.24

小倉朗、間宮芳生、バルトーク

Tirasi070124東京都交響楽団 第639回定期演奏会(サントリーホール)

間宮芳生/合唱のためのコンポジション第4番「子供の領分」(TOKYO FM少年合唱団、世田谷ジュニア合唱団)
小倉朗/舞踊組曲
バルトーク/2台のピアノと打楽器のための協奏曲(Pf:田部京子、小川典子、Perc:安藤芳広、小林巨明)
バルトーク/舞踊組曲
 指揮:高関健

職場を出ようとした寸前に無理難題が舞い込んで、一番楽しみにしていた1曲めの「子供の領分」が聴けなかった。
会場のサントリーホールに着いたら、ちょうどロビーのスピーカーから、懐かしさにあふれた児童合唱とオーケストラによるわらべ歌の響きが聞こえていた。…

今回のテーマは「音楽における民俗性」ということのようだが、1曲めを欠いた曲順で聴き進むと、民族的とは言ってもいささか抽象化が進みすぎた強面な音楽が並んでいる印象だった。
演奏は実に唖然とするばかりに見事なもので、そういえばバルトークの「舞踏組曲」、10年くらい前に古巣バンドで吹いたっけなあ、と思い出したが、とてもじゃないがこんなにコンパクトにすっきりと見通し良くなんてまとめられるもんじゃない。高関さんさすが。恐れ入りました。良い仕事してますなあ。

2007.01.21

底冷えの合奏(追記あり)

リサーチの練習に本年初出席。

廃校となった元小学校の体育館(当然ながら空調なんかありません)での朝10時半からの合奏は、コタエる。
身体は厚着すればどうにかなるけれど、指先と足先の冷たさは如何ともし難い。
しかも楽器がバリトンサックスなので、いくら吹き込んでも暖まらないし。ピッチがああ。

メニューはコープランドのクラリネット協奏曲と、ロバート・ラッセル・ベネットの「古いアメリカ舞踊による組曲」の、譜読み。
6月の定演のための練習が既に始まっている。
楽譜は行ってその場で渡されたのだが、どちらもリズム的に大変ややっこしい、フランス的なソルフェージュ能力(って何だよ?)が要求されるもので、初見能力が追いつかずかなり悲惨なプレイになってしまった。
しかも今日はテューバがいないので、間違えると目立つこと。恥。(昔はこういう楽譜の初見得意だったのに…)

この2人の楽譜は、フランス音楽ぽい複雑さという点でなんだかとても共通するものがあるなあ、と思ったら、どうやらお2人ともナディア・ブーランジェ(元パリ音楽院教授、フォンテーヌブロー・アメリカ音楽院院長。20世紀最大の音楽教育者と称えられる)の門下なのですね。道理で(コープランドは有名だけれど、ベネットもそうだったのか)。

ちなみにコープランドのソリストは…公式の告知がまだなので、ここで明かすのは遠慮しておくけれど、フランス仕込みの有名ソリストの、A先生。以前にもウェーバーの2番で共演していただいたことがある。楽しみ。

(2/13追記)
曲目変更です。なんと、コープランドの協奏曲ですが、「編曲の許可が下りないことが最終的に確定した」とのことで、ウェーバーの2番(既に譜面があるので)に差し替えになってしまいました(>_<)。
どっひゃー、残念。こういうことって本当にあるんですねえ。
許可が下りないも何も、既に楽譜が配られて練習も始まっていたんですけど(^^;

2007.01.20

都民芸術フェスティバル

休日。恒例、青梅へ父の見舞い。
帰りは県境の山を越えて、飯能経由で池袋に出る。
東武デパートで、恒例の北海道物産展をやっているので、10Fに上がり、ものすごい人渦の中、一巡。
マルセイバターサンドを無事入手。(^^)

Rokkatei

さて、本日の本題、東京芸術劇場へ。

都民芸術フェスティバル オーケストラ・シリーズ/日本フィルハーモニー交響楽団

オッフェンバック/「天国と地獄」序曲
メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調(Vn:神尾真由子)
ドヴォルザーク/交響曲第8番
 指揮:北原幸男

毎年恒例、東京の8つのプロオーケストラが日替わりで登場する、都民芸術フェスティバルのオーケストラシリーズ。
名曲プロで、チケットも比較的安い(最高で\3800。今日は3階の最前列だったが\2800)ので、親子連れ等で賑わっている。今日もほぼ満席。
毎年、この中からいくつか選んで聴き比べる(数年前には、セット券を買って全部聴いたこともある。さすがに最近は忙しくてそこまではできないが)というのは、江戸っ子の粋のようなもんだ。

久々に聴く日本フィル
明るい音色と、前向きな演奏が好ましい。前向き過ぎて時々荒っぽくなっちゃうのも、このオーケストラならでは(^^;。そういうところが面白いんだけどね。
弦の響きがなんか薄くてtuttiになると金管に負けてるとか(その金管の音色にしても、いささか私の好みとは違うが)、言えばいろいろあるけれど、ま、いいじゃないですか。
真由子ちゃんも今年で20歳か。早いものだ。

アンコールに、ドヴォルザークのスラブ舞曲第10番(op.72-2)。

2007.01.19

ミヨー、オネゲル、松村禎三

Tirasi070119東京都交響楽団 第638回定期演奏会(東京文化会館)

松村禎三/管弦楽のための前奏曲
同 /ピアノ協奏曲第1番(Pf:野平一郎)
ミヨー/ケンタッキアーナ
オネゲル/交響曲第5番「3つのレ」
 指揮:下野竜也

都響の1月の定期は毎度、20世紀日本の古典的名作と、それと対置するヨーロッパの傑作、というコンセプト。N響のmusic tomorrowに対抗する?「music yesterday」なんだそうだ。
プロデューサーの別宮貞雄氏と今月のゲスト指揮者との鼎談がこちらにupされている。なかなか興味深い。

今回のテーマは、「音楽における真面目」ということだろうか。松村もオネゲルも、なんというか、常軌を逸して真面目なのですよ。ある意味、ちょっと困ったもんだ、ってくらいに。
間に挟まれたミヨーのノーテンキに明るい響きは、この流れの中では一見異質で、演奏終了後の拍手はかなり当惑を含んでいたけれど、音楽はかくのごとく多様であるべきだ、という考えを妥協なく実行に移す、というところが、やはり真面目。
指揮者の下野さんというのがまた、ホント、真面目な人なんですねえ…。この人とオネゲルって、すごく合ってるかも、と思った。

オネゲルの「3つのレ」という題の由来は、3つの楽章の最後の音がすべてティンパニの「レ」の音の一打で終わるからだそうで、しかもティンパニはそれ以外に一切出番がない(@_@)。
今日のティンパニ奏者は、舞台上手の一番客席寄り、コントラバス群の手前(!)に楽器1個だけ置いて、そこで叩いていた。私の席からは見えなかったが(3階のサイドブロックだったので、ちょうど真下あたり)、見えていたら面白かっただろうなあ。

野平さんのピアノは、相変わらず人間業じゃなかった。

2007.01.16

昼休みに

もうすぐ(15時から)ココログが24時間のメンテナンスに入るので(閲覧はできるが投稿やコメントができなくなる)、その前に、職場から速攻でup。

放置状態だった本家サイトを久々にいじりました。コンサート等の告知がすごいことになってます。「サクソフォン」「フランス音楽」に限っても、この冬から春にかけてはかつてない勢いで催しが立て続いている(まだ載せていないイベントもいくつか把握しているので、順次掲載します)。
レ・ヴァン・フランセ楽しみ。全国各地で売り切れが続出しているようです。今回は家の近所の大田アプリコに行く予定。

最近わけのわからない(音楽とかサクソフォンとかと全く関係のない)サイトからの相互リンク依頼が多く、断るのが大変なので、リンクページの表示をトップのコンテンツから外してしまった。
一応目立たないところに残してはあるが、もっと目立たないようにしたいところ。

2007.01.14

井上麻子・大城正司ジョイント

Tirasi070114大城正司&井上麻子saxophone concert(アーティストサロンDolce)

イベール/2つの間奏曲
C.ロバ/アルス
ミヨー/組曲op.157b
ラヴェル/クープランの墓より
プーランク/ピアノ、オーボエとバソンのための三重奏曲
 大城正司、井上麻子(Sax)、藤井快哉(Pf)

パリ音楽院をプルミエプリ(一等賞)で卒業、大阪音大の先生を務める井上さんが来京。
沖縄出身で芸大卒・管打コン一位、東京で活動しつつ洗足学園と岡山(くらしき作陽大)で教鞭を執る大城さんとの、デュオのコンサートを聴く。
遠隔地の名手の異色の組み合わせであり、さほど大きくない会場は立ち見も出る大入り。曲目もワタシ好みのフランスづくしで、じつに楽しかった。

豊かでおおらかなサウンドと繊細な音楽性の持ち主の大城さん、細身で鋭くエッジの立った音色で男前!な音楽を奏でる井上さん、という具合に、おふたりはなかなか対照的な音楽の持ち主なので、どちらかというと同じ楽器(ソプラノ同士とかアルト同士)の前半よりも、楽器を違えた後半(ラヴェルとプーランク)のほうが率直に楽しむことができたかも。
クープランの墓、最近あまり聴いていなかったが(いくら良い曲でも、さすがに30年も聴き続けていると少々飽きるので)、いやこれ、やっぱりいい曲だわぁ、と改めて実感。
プーランクも、今回ソプラノとテナーでの演奏だったが、よく聴く(自分でもやったことのある)ソプラノ&バリトンの組み合わせよりも、フランス式のバソンを使った時の原曲の雰囲気に近いかもしれない、と思った。

プーランクの最後の最後、2人の奏者がオクターヴのユニゾンで締めくくりのメロディを朗々と吹くところが、大好きだ。
ふたりで(あるいは、誰か自分以外の他人と)一緒に音楽をするということの、本当に根本的な喜びと幸福感が炸裂するような感じ。
#自分で吹いていると、途中でいろいろいろいろあって大変だけれども、最後で全部報われた気分になれる。

アンコールに、フォーレの「ドリー」よりスペインの踊り、「スカラムーシュ」の3。

2007.01.13

【連載】マルセル・ミュールの生徒たち 17

この連載の趣旨、見方については連載第1回のエントリをご参照ください。

1958-1959

BEUN, André
BICHON, Serge
BOURQUE, Pierre (Canada)
DELABRE, Maurice
DENIZART, Francis
DUBRULLE, Simon
GALLET, François
LAMOUREUX, Jean
LEYNAERT, Michel
SEFFER, Joseph (Hongrie)
TANGUY, Claude
TRANCHESSET, Max
VANÇON, Pierre
VANOVERBERGHE, René

試験曲:Andante et fileuse (Pierre Petit)

Maurice DELABREはギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団のバリトンサクソフォン奏者だった(1987年の来日公演メンバーには名前がある)。ミシェル・ヌオーがソプラノを吹いた四重奏のLP、またもっと後のパリ五重奏団(QSP)のCDにも参加している。アルパジョン(Arpajon)のコンセルヴァトワールの教授だったという記録がある。
他の一等賞受賞者については的確な情報を得られなかった。

2007.01.12

新春を寿ぎ

Tirasi070112東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第7回ティアラこうとう定期演奏会

近衛秀麿編/越天楽
ドビュッシー/交響組曲「春」
グリーグ/ピアノ協奏曲(Pf:海瀬京子)
シューマン/交響曲第1番「春」
 指揮:矢崎彦太郎

東京のオーケストラの今年初聴きは、ご覧の通り「新春」にふさわしい実に洒落たプログラム。めでたし。
ティアラこうとうというホール、自分が乗ったことはあるけど客席で聴くのは初めてかも。もっと遠いかと思っていたら意外と近かった。職場(新橋)からだと芸劇やオペラシティよりよほど近い。小さめのホールなのでオーケストラが近く感じられてよい雰囲気だ。

雅楽の響きを見事に西洋のオーケストラに移し替えた「越天楽」で幕開き。
近衛秀麿のオーケストレーションには、なぜか唐突にソプラノ・サクソフォンが1本含まれているのだが、管の音色にサックスが含まれるということが、今日のような会場で聴くと非常に効果的に感じられる。なるほど、そういう響きの効果を狙ってたんですね、近衛秀麿慧眼なり(奏者は波多江さんのようでした)。
2曲めはドビュッシーの「春」。これが聴きたいがために行ったようなもんだ。「苦しげに生まれ、成長し、やがて花咲き歓喜に達する自然の姿」を、若き日のドビュッシーならではの濃厚で炸裂するような色彩感で描いた音楽。滅多に生では聴けないけれど、新春コンサートでこの曲をとり上げるなんて、なんという素晴らしいセンスだろう。演奏も今日の中で一番良かったのでは。
休憩前はグリーグ。ソリストは2005年の日本音コン1位というお嬢さん。東京音大の院生だそうだ。写真より実際のほうがずっとかわいらしいので、写真撮り直してもらったらいかがでしょう(本人は美人なのに、写真というと必ず顔が引きつって写っちゃう女の人って時々いるけれど、そういう方なのかしら(^^;)。最初のソロで音を派手に外してヒヤッとしたが、その後は堅実にかつダイナミックに弾き通していた。オケが(指揮者が?)もっとちゃんと付けていればなお良かった。
休憩後はシューマンの「春」。1楽章の序奏はなんだかふらふらしていたが、尻上がりに調子が良くなってきた。しかしシューマンの交響曲をちゃんと聴かせるのって、難しいんですねえ。

帰りがけにロビーで、志田さんに新年の挨拶。
終演後のロビーに楽団員の方が出てきてお見送りをしてくれるというのは、なかなかいい感じですね。

来年度だが、シティフィルの5月の定期で、なんとイベールの「祝典序曲」が演奏される!
これは、会社休んででも行かなければ。
後ろがオネゲルの交響曲第2番とプーランクのグローリア。「祈り」を感じさせる選曲だ。ジャン・フルネ師もかつて、終戦50年の年の都響客演の際に、やはりオネゲルの交響曲とプーランクのグローリアという曲目を組んでいた(そのときは3番)。
フランス音楽の「精神性」というものに触れる、貴重な機会になるかもしれない。

2007年東京オーケストラ界

東京のプロオーケストラの、今年4月からの新シーズンのスケジュール一覧。
自分のための覚え書きとして。
9月に新シーズンが始まるN響新日本フィルは除く。N響は一部分、新日本フィルは日程のみ発表になっている。

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
東京交響楽団
東京都交響楽団
東京フィルハーモニー交響楽団
日本フィルハーモニー交響楽団(直接リンクできず。開いた先で各コンサートシリーズをクリックしてください)
読売日本交響楽団

2007.01.11

「青春の小澤征爾」

以前のエントリでフレデリック・ヘムケについて書いたときに(こちら)、小澤指揮の『展覧会の絵』の録音でヘムケ氏が「古城」のサクソフォンソロを吹いていることを知った(ヘムケ公式サイトに記述がある)。
小澤の展覧会の絵って、1960年代にシカゴ交響楽団と録音して以来、再録音されてないんじゃなかったっけ。
今,入手できるのだろうか、と探してみたら、こんなCDが発売されているのを見つけて、聴いてみた。

Cd132青春の小澤征爾 Early RCA Recordings(BMG)

オザワ若い!
すべて1967-69年(小澤30代前半)の録音で、シカゴ響との「展覧会」、ベートーヴェン5番、チャイコフスキー5番、ボストン響との「火の鳥」組曲、「カルミナ・ブラーナ」抜粋など満載の2枚組。

…なんという真っ直ぐで清新な音楽だろうか。
CD2枚、一気に聴いてしまった。
この、無邪気とさえ言ってもいい率直さでこれらの大曲オンパレードに挑んで、あっけらかんと鳴らし切っている。

最近はいざ知らず、小澤って昔から、欧米に比して日本では不思議と人気がなかったけれども、60年代の巨匠・本場・名盤志向の日本クラシック音楽界で、これが受け入れられなかったというのは無理からぬことだと思った。
これらはむしろ、21世紀の今こそ、虚心に聴かれるべき演奏ではないだろうか。

2007.01.08

今日は静岡行き

今日は、(ほとんど恒例となりつつある)静岡へ。

シンフォニエッタ静岡 Sinfonietta Shizuoka, JAPAN 第4回定期演奏会(静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップ 中ホール「大地」)

J.シュトラウス2世/美しく青きドナウ、皇帝円舞曲、ポルカ「狩り」
マーラー/交響曲「大地の歌」(室内オーケストラ版)
 Ms:原田和加子 Sp:岡本実佳、斎藤晴美
 指揮:中原朋哉

冬晴れの好天の中、東海道線各駅停車に2時間半、トロトロと揺られてのんびりと会場へ向かう。
会場のグランシップ10階の展望台から富士山を撮ってみたんだが…これだと判らんなあ(画面中心より少し左、雲と一体化している)。

070108

前半のヨハン・シュトラウスは、17人編成程度に編曲されたバージョンだったけれど、こういう誰でも知っている有名な曲というのはなかなか厳しいものがあるなあ、と痛感。演奏上のちょっとした傷やアンサンブルの乱れ、メンバーひとりひとりが何かの加減で少しばかり音楽的に「後ろ向き」になってしまうこととかが、たちどころにマイナスポイントに直結してしまう。
休憩後のマーラー(シェーンベルク編曲による室内オーケストラ版)のほうがずっと聴き応えがあった。このバージョンは初めて聴いたのだが、全員がソリスト、みたいな線的な書法の楽譜なので、若さゆえのアンサンブルの練り上げ不足がそれほど気にならない(多少事故があったようだが、あまりよく判らなかった)。後期のマーラーの香りを聴くことができた。実際、メンバーも前半よりはるかに確信を持って弾いている、という印象だったし。
独唱は珍しくもソプラノとメゾソプラノで、ソプラノは1楽章と3・5楽章を2人で分担していた。ワタシ的には3・5楽章を歌った方が好みかな。メゾの方は熱唱だったけれど、もうすこし翳りのある声であればなお良かった。

終演後は、指揮者の中原氏と少しばかり話をしてから帰途につく。
とりあえず来シーズンも通うことにしている(9月シーズンはウチの演奏会とガチンコなので無理だが)。こうやってある程度の人数を束ねてプロとしてやっていくのは大変だと思うけれど、頑張ってほしいと思う。

昨日は新年会

昨日(7日)はアンサンブルのメンバー宅にて、新年会。
本職の料理人2人で切り盛りした盛餐の数々。ひゃっほう。

070107a

070107b

少し前に誕生日を迎えたので、ケーキと花籠をいただきました。
ワタシの誕生日というのは日程的にどうしても人知れず迎える宿命にあるので(^^;、よその家でまともにお祝いしてもらったなんて小学生の頃以来かも。
ありがとうございました。

Birthday_07

花籠を自分の机に置いて、携帯の待受画面にしてみた。

2007.01.06

初練習と初荷

今年最初のアンサンブル練習日。
ネタはロンデックス編曲のグラズノフのコンチェルト(Saxアンサンブル伴奏版)。
なんと申しますか、色々な意味で問題の多い譜面だ。
サックスでサックスソロの伴奏をするという基本的な問題、伴奏が分厚くなりすぎるのを避けるために敢えて取っている編曲の書法と効果の問題、その効果を実現できない我々の技量の問題。
そもそも「『それ』を実現するのはお前らの責務だ」、というロンデックス師の根本的態度というのもありまして(もともとこれはロンデックスの門下生アンサンブルのための編曲)、事態を一層混迷させております(^^;

Cd131帰宅したらJérôme LaranからCDが届いていた。
奇しくも今年の初荷となった。暮れのフェスティバルの時に受け取りそこねていたものだ。
お手を煩わせてしまった関係者各位の皆様、ありがとうございます。

Paysages lointains(遠い風景)と題するこのCD、曲目等はmckenさんのサイトのレビューをご参照ください → こちら

7月にゆめりあホールで聴いたコンサートを思い出す。実際2曲重なってるし。
特筆すべきは、ジェローム氏の音がとても純正でニュートラルであること。いかに強力なエモーションや表現が必要な現代作品であっても、「ニュートラル」の位置がブレることは絶対にない。
いわゆる「現代作品を得意とする」演奏家の中には、奏法の根本を崩してまで「熱演」するタイプの人がいる。その崩し方を持ち味として売りにしているような人もいるけれど、私はあんまり好きではない。意識下のコントロールから外れた部分を「個性」と呼ぶようなものだからだ。
リンク先のエントリで「子供みたいな純粋な好奇心と集中力」と書いたけれど、まさにそのとおりだ。子供は余計な「自意識」なんてもんはまだ育っていないので、対象に対して100%本気だ(だから子供相手に遊ぶのって疲れるでしょ)。

それゆえ、ジェローム氏の演奏を聴くと、邪念に惑わされず、表現されるべき音楽の内実というものを、すっきりと見通すことができる。
たとえば1曲め、マントヴァーニの作品は、「第3ラウンド」というタイトルから類推するに、何かの試合だろう。プロレスのようなあるシナリオに則って展開される、架空の試合の実況中継。リングに乗っているのは、自分。敵は…そうだな、オーボエや打楽器やピアノによって執拗に鳴らされる、トン、トン、というリズミカルな音。これが敵の象徴、あるいは、武器だ。「テンポ」「繰り返し」「時間」…というイメージが思い浮かぶ。そうだ、これは、時間の束縛と、そしてそれから逃れたいと思う者の戦いなのだ!勝負は如何に!… といった具合に、音楽を聴きながら連想がどんどん進む。
勿論、今のはワタシの極めて勝手な想像だけれど、そのような想像を妨げない演奏なのだ。

繰り返し聴いて楽しむ、というものではないけれども、たいへん刺激的な録音であることは間違いない。

2007.01.04

木下コレクションを聴く

このブログのアクセス数は、昨年の5月頃からカウントを開始しているようだ(カウントはココログの方で勝手に始めているので、正確にいつからなのかはワタシにもよぉ判りません(^^;)。
昨年2006年の、当ブログの個別ページアクセス数トップは、須川さんが出演した8月のN響のアルメニアンダンスだった。オーケストラ、吹奏楽、サクソフォン、全てにクロスオーバーする話題だけのことはある。
第2位は一昨年(2005年)のエントリで、サックス用消音器。今でもある程度のアクセス数をずっと保持している。検索で辿りつく方が多いようです。
年の瀬も押し迫った12月の投稿ながら堂々の第3位に入ったのが、阪口先生の録音
これは、こと当ブログの読者の皆様には相当なインパクトを与えたものと想像される。
今日は、この非常に貴重な音源と一緒に木下さんにいただいたこれまた珍しい資料を、一気に公開させていただきます。
今回はかなり長文、しかもマニアックですので、注意してご覧ください(^^;。

ギャルド・レピュブリケーヌ・サクソフォン四重奏団の17センチ盤レコードが、2枚(Festival原盤)。

Lp_gardeq_1
曲目:Skating flirt (valse)、Twenty tiny fingers (fantaisie)、Bluebell polka (polka)、Polka (polka)

Lp_gardeq_2
曲目:Vendanges à Madeira (de Sousa)、Hot Cappuchino (Rubinchick)、Rainfall (Heywood)、Java Pavane (Giraud)

メンバーはFernand Lhomme(S), Lucien Dacquet(A), Robert Gateau(T), Robert Geugnart(B)。
1944年、1948年のギャルドの楽員名簿には全員名前がある(ギャルドの名簿ではCeugnartになっている)。ミュールの退団後に四重奏の活動を続けていたメンバーと思われる。
曲は、作曲者とかもよく判らない、当時の流行り歌なんだろうか、軽いワルツやポルカなど。フルモー・カルテットがアンコールとかによくやる「水晶玉ポルカ」みたいな感じの曲、と言えば判る人は判るかな。余計判んなくなったりして。
こういう、インスト物のシングル盤レコードというのは今の感覚では珍しいけれど、昔は普通にあったんですね。

パリ空軍バンド・サクソフォン四重奏団(Teppaz原盤)。

Lp_airq
曲目:剣の舞(ハチャトゥリアン)、ヴァイオリンの踊り(M. et F.ジャンジャン)、ヴァレー地方のポルカ(R.クレリス)、メヌエット(ボッケリーニ)

メンバーはRobert Letellier(S), Rémy Violeau(A), Gaston Lavoye(T), Paul Pareille(B)。
うち3人はパリ音楽院のミュールクラスの比較的初期の生徒だった。Lavoyeのみカレ(Calais)のコンセルヴァトワール出身のようだ。
曲目・作曲者的には、比較的なじみはあるほうかと。

それにしてもこれらの音楽の雰囲気というのは文章では伝え難いところがあるので、今回は著作権的にはやや微妙ながら、このレコードの4曲をMP3にしてみました。
感想などお寄せいただけるとうれしいです(このエントリの作成は結構手間がかかっているので、反応をいただけると励みになります。音源所有者の木下さんも同じ気持ちなのではないかと思います)。

Danse du sabre
Danse des violons
Polka valaisane
Menuet de Boccherini

その他、パリ警視庁音楽隊(指揮デジレ・ドンディーヌ)の演奏になる、Jean Blaisel(パリ音楽院ミュールクラスに1948年まで在籍)の独奏。
Georges Gourdet(同じく、1947年1等で修了)独奏の、アンリ・ソーゲ「牧歌的ソナチネ」の放送録音。

そして、これは珍しや、宮島基栄氏のソノシート録音。

Japansonomagazine_1
すげえジャケット(^^;

ソノシートって知ってます?ペラペラの透明ビニールで出来た、小型のレコード。私が子供のころ、雑誌の付録とかに時々付いてた。一般的にはシングル盤17センチのサイズだけど、もっと小さいものも見たことがある。
どうやらこれ、ソノシート1枚と簡単な解説文、読みものをセットにして月刊で刊行していた雑誌(今だったらCDのそういう雑誌がありますね)の昭和37年2月号、ということらしい。

宮島基栄氏はクラリネットが専門ながら、1953年芸大にサクソフォンの阪口クラスが開設されて最初に副科で入ってきた、いわば「さかやんの一番弟子」。日本のクラシカル・サクソフォン発展の初期に活躍された方である。私の知る限り日本で最初の固定メンバーでのサクソフォンカルテットである、アカデミア・サクソフォン四重奏団を1967年に結成。スタジオ・ミュージシャンとして、いくつかの映画やアニメの音楽にも参加されているので、検索してみると楽しいです(交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」のオーケストラメンバーにも名前があった)。
余談だが私Thunderが生まれて初めて聴いたサクソフォン四重奏というのも、このアカデミア四重奏団だった(1977年10月、日比谷公園小音楽堂。そのときのメンバーはS宮島、A中村均、T石渡悠史、B秋本康夫)。
これを聴いて「いいなあ、」と思って、それが翌月のデファイエQの赤いジャケットのレコードの購入に直接繫がっている(もしこれを聴いていなかったら、情報の少なかった当時のこと、私とサクソフォン四重奏との出会いは数ヶ月から数年は遅れていたであろうことは間違いない)。
私がサックスを吹き始めた頃は、都立高専(私の実家と同じ区内にあった)の吹奏楽部を指揮していたので、何度かコンサートを聴いたこともある。先日のエントリにもちょっと書いたけれど、そこの久保田君という学生さんとたまたま知り合って「こんなのがありますよ、」と誘われたのが、サクソフォーン・フェスティバルというものに最初に足を運ぶきっかけだった。
そう考えると、私にとってもいろいろな意味で「恩人」だ。

この音源はいわゆる「クラシック」ではないけれど、宮島氏の音の特徴はよく聞きとれる。
阪口先生のDNAを、よりストレートに感じることができるようだ。

Japansonomagazine_2

演奏者プロフィール(文字が読めるよう大きめの拡大表示にしています。実寸でご覧ください)。
これのほかに坂口(阪口)先生の手になる「サックスという楽器」というエッセイも載っていて、阪口先生の若き日の日本サックス界の状況を伝える、これもなかなか貴重な資料。近日中に内容をupしたいと思います。

ところで、阪口先生のお名前って、「阪口」「坂口」両方の表記があるけれど、どっちなんでしょうか。
日本サクソフォーン協会の関係をはじめとする公式文書や、「黄色い教本」の著者名表記は「阪口」だし、私がご本人にサインをいただいた時も(1993年頃)「阪口」と書かれていたので、「阪口」で間違いないと思うんだけど、こうやって古い資料を漁ってみると、軒並み「坂口」なんですよね。途中で変えられたのかしらん。
ご存じの方、ご教示ください。

2007.01.03

さよなら銀座ヤマハ

ヤマハ銀座店が、建物老朽化に伴う改築のため明後日(5日)限りでいったん閉店となる。

Ginza-Yamaha 070103

「銀座ヤマハ」といえば、東京または近辺で音楽活動を続けてきた人間だったら、行ったことのない人はおそらくいない。「楽器屋さん」あるいは「楽譜屋さん」の代名詞のような店だ。
ここを初めて訪れてから、もう30年が経つ。たしか、中学のブラスバンド仲間が新しいリコーダーを買いに行くというので、付き添いというか、連れション状態で数人で押しかけたのだった。静かで高級感あふれる店内の雰囲気におよそ不似合いな騒々しい中坊集団でも、ちゃんとお客さんとして扱ってくれた。
帰りがけに「YAMAHA」の大きなステッカーを貰ったので、当時使っていた英語の辞書(三省堂のクラウン)の裏表紙に貼った。でかでかと「YAMAHA」という文字が貼られたその辞書を、そのまま中学、高校を卒業し、大学生になるまで使ったものだ。

閉店記念イベントの一環として、1F店頭イベントスペースにて雲井さんのミニコンサート(&サイン会)があったので、行ってきた。

Ginza-Yamaha 070103
中2階より

シンプル・ソング(バーンスタイン)、コラールプレリュード第1番(バッハ=コダーイ)、イタリア協奏曲より2楽章(バッハ)、「ディア・ハンター」よりカヴァティーナ、ロメオとジュリエット、ニュー・シネマ・パラダイス。
こういう場にしてはまたえらく地味な選曲なところがいかにも雲井さんだけど、いったん耳を傾け始めると、場に媚びない凛とした雲井さんの音がある。
ニュー・シネマ・パラダイスの真ん中へんで、演奏以外の物音が一切無くなってしまったかのような、不思議な静寂の一瞬があったのが、なんだかとても印象に残った。中央通りに面した、CD売り場兼の、暗騒音喧しいフロアの筈だったのだが。

終演後、サイン会の列に並んだら、「上に居たでしょ」と言われた。(^^;

終了後は、これが最後だろう、各フロアを見て回る。
階段や踊り場では、ビルの歴史を回顧するパネル展示がされていた。

Ginza-Yamaha 070103

度重なる大規模改修により、そんな築55年を超えた古い建物には一見、見えないけれど、階段などの造りには、竣工当時の面影がなんとなく残っているような。

地下の楽譜売場で、阪口先生の「黄色い教本」を購入。1785円。

Sakaguchi_sax_method

勿論、初めて買う訳ではない。ずーっと昔に最初に買ったものは(800円くらいの頃)、高校を卒業するときに学校の楽譜棚に置いてきてしまったし、その後もう一度買っているが失くしてしまった。
その後は、いまさら「黄色い教本」でもあるまい、と思って持っていなかったのだが、先日阪口先生の録音についてのエントリを上げた機会に久々に見返してみて、やはりこれは手許に置いておく価値はある、と思い直したのだ。

阪口先生はある意味、天才肌のプレイヤーだったので、この教本はサクソフォンの奏法を論理的に解説するような類のメソードではないけれども、阪口先生自身が書かれたそれぞれの練習曲、収録の二重奏や四重奏の小品の数々は、今の目で見ると昔とは大いに違った価値を見出すことができるように思う。
昔は、最後のページはラヴェルの「眠りの森の美女のパヴァーヌ」の四重奏編曲だった記憶があるけれど、今の版はドビュッシーの「小さな羊飼い」に差し替っているのね。

最初に出版されてからもう何十年も経っている筈だけど(少なくとも私が最初に買ってからも30年近く経っている)、それほど古さを感じさせないデザインなところもすごい。

2007.01.01

謹賀新年

おけましておめでとうございます。
本年も拙ブログ「Thunder's音楽的日常」、ならびに本家サイトThunder's Webをよろしくお願い申し上げます。

Tirasi061231さて、とりいそぎ、昨夜の年越しコンサートのご報告。

岩城宏之追悼 ベートーヴェンは凄い!全交響曲連続演奏会2006(東京文化会館)

交響曲第1番(指揮:下野竜也)
交響曲第2番(指揮:岩村力)
休憩(15分)
交響曲第3番「英雄」(指揮:大友直人)
休憩(15分)
交響曲第4番(指揮:高関健)
交響曲第5番(指揮:井上道義)
休憩(60分)
交響曲第6番「田園」(指揮:秋山和慶)
休憩(30分)
交響曲第7番(指揮:小林研一郎)
交響曲第8番(指揮:ジャン=ピエール・ヴァレーズ)
休憩(30分)
交響曲第9番「合唱付」(Sp釜洞祐子、At坂本朱、Tn佐野成宏、Br福島明也、晋友会合唱団、指揮:外山雄三)
 イワキオーケストラ(コンサートマスター:篠崎史紀)

昨年亡くなった指揮者岩城宏之の、最晩年のライフワークだった、ベートーヴェンの全部の交響曲を一気に聴いてしまえ、という演奏会。
休憩込みで9時間半、普通のクラシックコンサート4つ分。こういうおバカな(失礼)コンサートが実現できるのは、電車が終夜運転する大晦日しかあり得ない。私の場合は岩城氏云々というより、1回のコンサートでこれだけの指揮者の聴き比べができるというのが単純に面白いので、話のタネに聴きに行ったようなものだったが…

061231

ロビーには、岩城氏の遺品のスコアや燕尾服等が展示されていた。
また、スポンサー企業による焼酎の試飲コーナーや、血圧測定コーナー(^^;が開設されたり。
客入りも、最初少し空席があったけれど、「5番」が始まる頃にはほぼ埋めつくされ、満席の賑わい。

臨時編成のオーケストラ(コンマスはN響篠崎さん)は、弦は札響、新日本フィル、仙台フィル、広島響、大阪センチュリー響の若手コンマスを第1ヴァイオリンに入れている以外は、ほぼN響のメンバーが中核。というわけで、充実した音量といい、弱音の浸透性といい、指揮者が何をやらかしても崩れないアンサンブルといい、基本的にN響のキャラクターだった。
それに比べると管はかなり寄せ集め、という感じ。ホルンに出演予定だったN響の松崎さんが急病で休まれたのがかなり痛かった様子。基本的に交代で吹いていたが、ただ一人クラの横川さん(N響)だけは1番から9番まで一人でトップを吹き続け(!)、第9アダージョの見せ場までちゃんとその美音を保っていた。スゲェ…。

さすがにこれだけたくさん一度に聴くとなると、大雑把な聴き方しかできないけれど、とにかく同じメンバーのオーケストラでも指揮者が変わると全く音が変わる、ということを徹底的に実感出来たのが、楽しかった。
指揮者がオーケストラから引き出す音というのは、人の声や楽器の音色と同じ、その人独自のものなのだ。
若さの炸裂する、エッジの立った音が飛んでくる下野氏、ただひとりベーレンラーター版使用、対向配置でコダワリを見せた高関氏、天衣無縫な鳴らしっぷりを存分に見せてくれた井上氏、疲れの見えてきたオケに鞭を入れるようにスケール大きく走らせるコバケン氏。
圧倒的に美しい(あるいは、整った)声の持ち主といったら、秋山氏だろう。1時間の大休憩のあと一発めに出てきた、今までと別のオケのようななめら~かで練れた音色には、驚嘆。


15時30分開演、終演は明けて翌1時。いやはや、さすがに疲れた。
演奏された皆さんは、もっと疲れたことだろう。お疲れさまでした。

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