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2006年9月

2006.09.29

ボロディン全交響曲

Tirasi060929読売日本交響楽団 第452回定期演奏会(サントリーホール)

ボロディン/交響曲第3番、交響曲第1番、交響曲第2番
 指揮:ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー

という訳で(9/27のエントリの下半分参照)、行ってきました。
面白かった。知っている「2番」に関してだけど、ロシアの演奏スタイルって、日頃CDで聴くヨーロッパのそれとは全然違うのね。最初始まったとき、あまりにもテンポが遅くて堂々としているので、一瞬違う曲かと思ってしまった。速いところは速いんだけど。

ロジェストヴェンスキーという人の指揮を見ていると、「指揮法」なんて、要らねぇんじゃねーか、と思ってしまう。
「出せっ」という仕草をすれば音は出るし、「止めろっ」とやれば止まるし、「鳴らせっ」とやれば鳴るし、…以下同様。要は、「技術」じゃなくて、振っているその本人自身に説得力があるかどうか、なんだけど。
恐れ入りました。

2006.09.27

ベルティーニのラヴェル、他

東京のプロオケ聴き歩き仲間でもある高校の先輩Yさんが、「レコード芸術」最新号の海外盤試聴記に、ガリー・ベルティーニ指揮のフランス物3枚(Capriccio)が載っていると教えて下さった。
マーラー指揮者としての面ばかり謳われるベルティーニという指揮者について、フランス音楽の解釈者という立場で正面から論評した、大手の活字メディアとしては初めてに近いものではないかしらん。大歓迎。

しかし、最近「レコ芸」読まなくなったなー。ネットや無料メディアがこれだけ充実してくると。
ちなみにワタシでしたら、クラシックの新譜CD、DVD情報については、山野楽器で配っているVarieという無料誌でほぼ事足りてます。

Cd1143枚のうち、ドビュッシーの作品集については発売されたばかりの頃にレビューを書いたけれど(こちら)、今日はラヴェルを聴いてみる。

ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第2組曲、ピアノ協奏曲、ラ・ヴァルス
 ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
 ガリー・ベルティーニ指揮 ケルン放送交響楽団

「ダフニス」の高揚感が素晴らしい。98年、都響の音楽監督就任披露演奏会で、「ダフニス」全曲をとり上げていたことを思い出す。「夜明け」の、灼熱の太陽の光が夜の暗さに慣れた目を射るような、むせるように濃厚な色彩感。「全員の踊り」の、じっくりと官能的に盛り上がってゆく、底鳴りのするような迫力。
ピアノ協奏曲も、アルゲリッチのハジけっぷりが良く捉えられていて、たいへん楽しい聞き物となっている。
ただ、これらの曲に関しては、フランスのオーケストラで聴きたかったな、という思いもある。いかにもドイツの放送オーケストラらしく、非常にそつなくこなした巧い演奏なんだけど、何かの拍子にふと出てしまう、慣れない外国語を操るときのような不器用な感じが、ドビュッシーだとそれほど気にはならないのに、ラヴェルだと妙に…。
そういえばジャン・フルネ氏は、リハーサルの時に「ラヴェルは小さな精密機械のように完璧に演奏されなければならない、」と繰り返し言っていたっけ。

勿論、それでも、現代のラヴェルの演奏として、十分に聴くべきもののある充実した記録であることは間違いない。
そして、私にとっては、かけがえのない記憶とともに在り続けるだろう。


ついでにもうひとつ、新着CD。

Cd115ボロディン/交響曲第1番、第2番、第3番
ホセ・セレブリエール指揮 ローマRAI交響楽団(ASV)

今週末(29日)の読売日響定期公演に、毎年この季節おなじみのゲンナジー・ロジェストヴェンスキー氏が客演して、ボロディンの交響曲全3曲一挙上演という珍しいことをやってくれるのだ。
これは是非聴きに行こうと思っていて、しかしボロディンの交響曲はよく知っているのは2番だけなので(愛聴盤はマルティノン指揮ロンドン響)、他の交響曲の入っているCDを探していたら、たまたまこういうちょいと珍しいCDが店頭にあった、という訳。
セレブリエールは1938年ウルグアイ生まれの作曲家・指揮者だそうだ。何者じゃコイツ、と思いながら聴いてみたら、これがなかなか聞かせるもんで、ちょっとびっくり。マルティノンなどと同じように、作曲家兼業指揮者ならではの明晰さが基本にあるんだけど、ちょっとした細部のよく歌うことといったら。イタリアのオーケストラだからか?いや、それだけじゃない。
音楽家は、名前じゃありませんねえ。聴いてみなきゃ分からないものだ。

最後に拍手が来るのでライブ録音だと分かるが、会場ノイズはほとんど全くと言っていいほど聞こえない。

2006.09.25

ハシゴ(楽友→グランボワ)

コンサート2つ。
横浜楽友協会室内楽演奏会(杉田劇場)、2時開演。
グランボワ・サクソフォン倶楽部(神奈川県立音楽堂)、5時開演。
どちらも、日頃たいへんお世話になっている方々のいらっしゃるところ、しかも同じ根岸線沿線の会場、絶妙な開演時間。
ハシゴしろ、と言われてるようなもんですな。

まずは楽友協会。
会場は新杉田の駅前。しかし最近出来るこの手のホール併設の商業施設というのは、どうしてこう構造が分かりにくいんでしょうか。ホールの入口を探してウロウロしてしまった。
そういえばいつだったか行った大泉学園のゆめりあも、ホールのありかが全然分かんなかったし。

吹奏楽団で、年2回のフル編成の演奏会の他にもこういうアンサンブルの集いを毎年開催し続けるというのは、なかなか出来ることじゃないし、素晴らしいことだと思う。
ただそうなると、聴く側の人間としては欲が出るもので。ただ演奏すればいい、という段階から早いとこ脱却して欲しいし(勿論、ちゃんと脱却出来ている方もいる)、きちんと自分たちの演奏会として位置づけてそれなりの準備の上で「音楽」を聞かせて欲しいです。
正直なところ、今日は特に後半のチームのいくつかが…。例年はそれほどに感じることはなかったような気がするのだが。自分自身の要求が高くなったのかな。
また、今年は金管チームが、面目を一新していたように思ったのが印象的だった。

Tirasi060924終演後の挨拶もそこそこに、桜木町へ移動、紅葉坂を上って県立音楽堂へ。

グランボワサクソフォン倶楽部 第5回定期演奏会

ラヴェル/ハバネラ形式のヴォカリーズ
ラフマニノフ/ヴォカリーズ
*豊住竜志/サクソフォン協奏曲「A FLUSH OF LIGHT」(世界初演)
*ヴィードフ/サキソフォビア
サウンド・オブ・ミュージック メドレー
チャイコフスキー/祝典序曲「1812年」
 指揮、*独奏:大森義基
 *客演指揮:宗貞啓二

見た目満席に近い盛況、若々しく見事に準備された演奏に、よくまとまった曲目。良い演奏会だった。
県立音楽堂いい音だあ。最近出来る残響ばかり多い会場になんか、負けやしない。

出てくる音楽は、大森さんの音楽性そのまま、という感じで、実に気持ちよい。明るく、おおらかで、何事に対しても肯定的で。
これが宗貞先生の指揮となると、音色からして全く違ってくるのが、楽しくも興味深い。相当に緊張と集中を強いる練習なんだろうな、ということが明らかに想像がつく。
指揮者それぞれの資質がこれだけストレートに音に表れてくる、ということが、やはりメンバーの「若さ」の証か。

あとは、昨年聴いた時も思ったのだけれど(そう、去年のグランボワ演奏会の帰り路、アルフレッド・リード博士の訃報がメールで飛び込んで来たのだった…)、演奏以外の面でも様々感じられる若さ(青さ、と言ってもいい)と、実際の音に聴かれる完成された音楽性とのギャップが、不思議だった。
このギャップが解消された状態が、「大人の演奏」、と言われるものになるのだろう、きっと。

豊住氏の作品は、単一楽章でさほど長くなく、たいへん明るく輝かしい、素敵な曲だった。ある意味では日本人作曲家の作品とは思えないような、無理のない明るさ。…無理がないというのは勿論、音楽的に、ということで、技巧的にはかなりすごいけれど(ソロパートはアマチュアにはまず演奏不可能)。

2006.09.24

【連載】マルセル・ミュールの生徒たち 11

この連載の趣旨、見方については連載第1回のエントリをご参照ください。

1952-1953

AUDEFROY, Roland
BRIODIN, Jean-Claude
CALLENDRET, Jean
DECOUAIX, René
DESLOGES, Jacques
FORMENT, René
GIRARD, René
JOUOT, Henri
LONDEIX, Jean-Marie
MARTIN, Daniel
MELZER, Jacques
OLLIVIER, Jean

試験曲:Rhapsodie Bretonne (Robert Bariller)

Jean-Marie Londeix(1932.9.20-) については、今更言うまでもなく。
この人については、ちゃんとした形でまとめて書いておきたい、ということが、本家サイト開設当初からの目的のひとつでもあり、ということで。
#ところで、ロンデックスが来年、半年くらい芸大を教えに来る、という噂があるのだが、どうなっているのだろうか。

もうひとりの一等賞受賞者、Henri Jouotについては、25歳で夭折した伝説のJazzトランペット奏者、クリフォード・ブラウンのパリ・セッション(1953年9月)のメンバー(バリトンサックス)として、名前を見つけることができる(例えば、こちら)。
同一人物という確証はないけれど、時期的にもほぼ一致するので、間違いないだろうと思う。
サックス以外にも、クラリネットやバスクラを吹いて、いくつかのレコーディングに参加しているようだ。

しかし、パリ音楽院でミュールに学んで一等賞で卒業したビバップ・ジャズ・プレイヤー、なんて、カッコいいなあ!

2006.09.20

合宿覚書き

15日深夜に東京都内を出発、都合車3台が信州中野ICで合流、奥志賀高原へ。
4時過ぎに宿(ベルサルームズ)に到着。星がきれいでした。
荷物を部屋に運び込んでから、揃った7人で軽く到着の乾杯をしたら、もう5時。空が白みはじめていた。

Gasshuku06_view

部屋の窓からの風景。
ブナの原生林だそうだ。

Gasshuku06_menu

ペンションというところに泊まるとだいたい、食事は格別に美味しいけれど、今回はまた特別に豪華でした。
初日夕食のメニュー。
・自家製グリッシーニと数種のチーズ、生ハム
・地物エリンギ、クレソン、秋なすのバルサミコソース
・グリンピースのあたたかいスープ
・南信州幻豚のグリル
・しめじのたきこみごはん
・初物りんごのタルト、アイスクリーム

Gasshuku06_awase

夜のコンサートに向けて、ピアノ合わせ中の大栗先生。
ピアノは団員のOさん(本業は○マハのピアノの先生)。
お疲れさまでした。

Gasshuku06_check

ひとりでピアノをさらうOさんを、後ろから横目でチェックする先生。
こわー(^^;。

Gasshuku06_yokyou

夜のコンサートの曲目:
・「スピットファイア」プレリュード(全員)
・南アメリカ組曲(四重奏)
・赤とんぼ、ヴァカンス、スカラムーシュIII(大栗先生ソロ)
・オンブラ・マイ・フ(同上、アンコール)
・サンダーバード(全員)
・枯葉(アンコール)

大栗さんのソロ心に沁みたなあ。
『ヴァカンス』に感涙。
よくある日本人のヴァカンス(いつ会社から携帯に呼び出しがかかるか判らない、とか)みたいな音楽じゃなくて、本当にヨーロッパ人のヴァカンスだった。
日常のしがらみを離れた静かな高原や海辺で、心虚ろに時間が流れていくのを聴いている、みたいに。

続く立食パーティでも、大栗先生の号令一下、四重奏チームが次々と余興演奏。
松本から車で駆けつけて下さったHALさんの持ち込んだ楽譜の数々(笑点、川の流れのように、ガッチャマン、六甲おろし、etc.)も、どんどん初見で披露。
大受けに受けつつ、夜は更ける。

Gasshuku06_tutti

最終日、ペンション前で記念撮影。
大栗先生のサイトより拝借しました。

高原の涼しい空気、山と森に囲まれた風景、美味しい食事と楽しき仲間、素晴らしき音楽。
帰りたくなかったけれど、でも帰らなきゃ何も始まらない訳で。
本番まで、あと1ヶ月を切った。

2006.09.19

帰りました

1時間ほど前に帰宅。
合宿は、家に帰って帰還報告をupするまでが合宿です(お約束)。

いろいろな意味で、実に中身の濃い合宿でした。
お疲れさまでした。>参加のみなさま
詳細は、元気があったら、また後日に。

2006.09.17

宴たけなわ

宴たけなわ

合宿先の新設ペンションのオープン記念イベントとして、ミニコンサートを開催、終わってレセプション中。
熱心にかつポジティブな雰囲気で聴いていただけた、すばらしいお客さん達でした。こういう方々に間近で聴かれると燃えます。

2006.09.16

合宿初日終了

合宿初日終了

奥志賀に来てます。標高1600mというのは意外と辛くて、軽く高山病気味かも。むかし志賀高原でセルマーのSaxキャンプに参加していた20代〜30代前半の頃はそんなことは全然なかったのに。歳だなあ。そういえばあの当時も、講師の先生方は辛い辛いとぼやいていたっけ。
ランティエの「アンダンテとスケルツェット」練習風景。今夜遅れて到着するメンバーの代わりに、トレーナーの大栗先生が加わってます。ゴージャス。

2006.09.15

奥志賀に行ってきます

今日これから、うちのアンサンブルの合宿で、奥志賀高原の新築ペンションに行ってきます。
寒そうだなー。台風が心配。

一昨日は午前零時近くまで職場に居残り、昨日はデプリースト=都響のプロコフィエフ「イワン雷帝」を東京文化会館で聴いたあと(物凄い演奏だった)、家に帰ってから夜中の3時まで、今度の演奏会プログラムに載せる曲目解説を書いてました。
合宿前には書くと約束していたんだけど、結局前夜に一夜漬けかい(^^;。でも約束は守ったぞ。
このブログをいつも読んでおられる方でしたら、この曲目解説誰が書いたんだ、ってことが一発で分かる調子の読み物になっていると思います(^^;。文章は人そのものですな。

というわけで、ここ数日メールやら何やら滞っていて、18日に帰ってくるまで更に滞ると思いますが、ご了承くださいませ。>みなさま

2006.09.13

モーリス・ブルグ、東京に現る

Tirasi060912モーリス・ブルグ&中野振一郎 デュオ・リサイタル(Hakuju Hall)

ヘンデル/ソナタ ト短調HWV.364b
テレマン/ファンタジー第2番 イ短調(オーボエ独奏)
J.S.バッハ/ソナタ第3番ニ短調 BWV.527
フォルクレ/組曲第5番より ラモー、シルヴァ、ジュピター(チェンバロ独奏)
F.クープラン/趣味の融合(新しいコンセール)第11番 ハ短調
 Ob:モーリス・ブルグ
 Cemb:中野振一郎、Vc:菊地知也

「オーボエの神様」モーリス・ブルグの、今回の来日では東京でただ1回の公式なコンサート。
別に「オーボエの」と断り書きを付けずとも、私にとっても神様に間違いないので、今回は早くからチケットを取って待ち構えていたのだ。
前にも書いたけれど、あなたの好きな管楽器奏者は?と訊かれたら、「ミュール、デファイエ、モーリス・アラール(バソン)、ブルグ」と即答することにしているくらいで。

なんという輝かしい音色。強靱なフレージング。
CalliopeレーベルのCDで親しんだサン=サーンスのソナタや、パリ管の首席奏者として数多くの録音で聴いた、あの音だ。
吹いているところを間近で見ていると、恐ろしいばかりに強大な息の圧力をかけっ放しにして、それをタンギングでせき止めていることが判る。管楽器奏法の基本といえば基本なんだけど、それにしても、エーッそこまでやるんですか、と目をむいてしまうくらいに。
そんな「過酷な」、と言ってもいいような身体コントロールを、60代後半となった(1939年生まれ)今も自らに課して、あの果てしなくどこまでも遠くに飛んでいくようなフレーズの飛翔を可能としている。呆気にとられる、とはこのことだ。

ブルグの音楽は、私にとっては「20世紀の讃歌」、のようなものかもしれない。
私自身が最も音楽というものに純粋に親しんだ時期でもある、1980年代頃までの、未来への希望と憧れと躍動にみちた時代の息吹を、感じるような気がする。
今の時代に、まだこのようなものを実際に生きて聴くことができるというのは、なんという幸運だろう。…

客席は、ホールの固定客と思われるオジサンオバサンの他に、みるからにオーボエ業界の方々、オーボエ専攻の学生さんらしき若い人たちの集団という、いかにもどこかで見たような風景。
N響のIさん、新日フィル首席のFさん、日本フィル副首席のMさんらの姿を見かけた。とても上品な感じの初老のご婦人が車椅子で来場されていて、どこかで見た顔だと思ったら元N響のK島さんではありませんか、とか。
それはそうと、Hakujuホールの主催公演はいつもそうなのかは知らないけれど、開演直前にステージ後ろの壁に幻灯(とは言わないか。もとい)プロジェクターで、今後の公演の宣伝映像をいろいろと映写する、なんてことをするのね。ちょうど映画館の予告編みたいに。面白いっちゃ面白い試みなのかもしれないけれど、ワタシゃ思わず「ダッセー!」と大声出してしまいました(^^;。これはやめてほしいなあ。

アンコールに、マラン・マレ「サント・ジュヌヴィエーヴ・デュ・モン教会の鐘」。
これが凄かった。たった3つの音を延々と繰り返すベースの上での、さまざまな色や光が飛び散るような豪華絢爛たるパッセージの応酬に、酔った。…至福の時。

2006.09.11

新日本フィルのマーラー3番

Cd113ブラームス/交響曲第1番、マーラー/交響曲第3番
 クリスティアン・アルミンク指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団ほか(Fontec

夏の終わりに、「夏の交響曲」を聴く。マーラーの交響曲第3番の新着CD。

ブラームスの方が先に入っているけれど、これはあきらかにマーラー3番がメインのCDでありましょう。
マーラーの方は、新日本フィルの現・音楽監督、クリスティアン・アルミンクの、音楽監督就任記念演奏会(2003年9月)のライブ録音。
私も客席で聴いていて、とても印象深い演奏だったことを覚えている。たしかコンサートの冒頭にモンテヴェルディのマドリガルか何かを演奏し、そのままアタッカでマーラーに突入したのだった。
ライブCDが発売されたのは知っていたけれど、なぜか購入するタイミングを逃していたのだが、先日たまたま見つけた機会に、エイヤッと買った次第。なにしろ1時間40分もかかる長い交響曲なので、気合入れないと聴けない。

聴き始めての第一声は、「ホルンが上手ぇー!」。ソロもテュッティも、物凄く良い音だ。
第1楽章の半分より少し後に、ヴァイオリンソロと絡むホルンのちょっとしたソロがあるんだけど(このCDだと、トラック7の4'25"あたり)、響きといい歌いまわしといい、ちょっと今だかつて聴いたことがないほど素晴らしくて、茫然としつつ聴いた。このソロのためにこのCDを買ったと思っても惜しくないくらいだ。さすが吉永さん(新日フィル首席ホルン奏者。私は日本一のホルンの名手だと思っている)。
いや、ホルンだけじゃなく、マジで新日フィル上手いっすよ。オーボエをはじめとするなめら~かな木管、繊細な弦。演奏の完成度はライブとは思えないほどだ(実際に会場で聴いた時も、すぐにそれと分かるような大きな演奏ミスはほとんど無かった記憶がある)。弦の音の厚みは若干不足気味ながら、ブラームスだったらともかく、こちらは曲が曲なのでさほど気にならない。
例の第1楽章、トロンボーンの大ソロは宮下宣子さん(CDには特に書いてないけれど、会場で見ていたので)。あの小柄な身体(あまりに小柄で隣席の奏者とベルの高さが合わないので、いつも椅子の下に箱を置いて上げ底状態で座っているほどだ)が信じられないような、ぶっとい音で入っている。というか、この音だけ聴いたあとで実際の宮下さんの姿を見たとしたら、びっくりすると思うぞ。

指揮者は、やはりまだちょっと若いところがあって、うまくまとめてはいるんだけど、フィナーレ(第6楽章)のテンポが、緊張感をキープし切れず?さっさと終わってしまう感じがするのが惜しい。
これでフィナーレを本当に感動的に歌い上げていたとしたら、まさに天下無敵の演奏になったところだったが。

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2006.09.10

「たなばた」

東京の最高気温は34℃だったとか。夏が戻ってきた。
久々にリサーチの練習に顔を出す。

20人ちょっとの人数での合奏だったけれど、テューバがいないくらいでバランスはそれなりに悪くないし(Fl3、Cl3、Ob1、ASx2、TSx1、BSx1、Hn2、Tp3、Trb3、UFO2)、合奏の中核人物が揃っていたせいで音楽がちゃんと牽引されていくし、なかなか気持ちよく吹けた。というか、ワタシとしては、この人数でちゃんと音楽ができるんだったら別にそれ以上は要らない、とさえ思う。
このくらいの編成でホルストの「第1組曲」をやってみたいな、と夢想。

秋のお祭り系小本番に向けて、初見の楽譜を何曲か音出ししたんだけれど、その中に『たなばた』(酒井格)がありまして。
10年ぶりくらいに吹いたかしらん。いやー、懐かしくって、飛ばしました。
アルフレッド・リードとジェイムズ・バーンズ(就中「アルヴァマー」序曲)、そして松田聖子の音楽が青春だった世代としては、全面的な共感を覚える次第。
小難しい箇所もあるけれど、慣れてしまえば、なんということはない。
無条件に「いい曲だ」、とは言い辛いものはあるけれど、少なくともある種の(「学校吹奏楽」という世界で培われる)特殊な感性と、見事にアダプトするものがあるように思う。

ところでこれ、何で「たなばた」なんでしょうか。

2006.09.08

【連載】マルセル・ミュールの生徒たち 10

この連載の趣旨、見方については連載第1回のエントリをご参照ください。

1951-1952

AUDEFROY, Roland
BRIODIN, Jean-Claude
CASTAIGNÈDE, Henri
CUILA, Czeslaw
DECOUAIX, René
JOUOT, Henri
LACOUR, Guy
LEGRAND, Gaston
LONDEIX, Jean-Marie
MELZER, Jacques
PAREILLE, Paul
PÉRATHONER, Fernand

試験曲:Cadence, interlude et rondo (Henri Martelli)

この年の卒業生の中では、Guy LACOUR(1932.6.8-)の知名度が図抜けている。ソリストとして(1984年のパリ管弦楽団日本ツアーにてミシェル・ヌオーと共に「ボレロ」を吹いていたのを目撃した話は、本家サイトにも書いた)、1960年以降解散までの最後の期間のミュール四重奏団のテナー奏者として、教育分野ではジュヌヴィリエ(Gennevilliers)のエドガー・ヴァレーズ音楽院教授として、そして何よりも、作曲家として。
エチュードも数多く書いているが、中でも「ラクール」の代名詞ともいえる、彼の書いた「50のエチュード」の上下2冊本は、ちょっとでも真面目にクラシックのサックスをかじった者なら、吹いたことのない人はおそらくいないくらいのものだろう。
作曲は独学だった(特にコンセルヴァトワールを卒業したという訳ではないらしい)ようだが、イベールの没後10年の記念作品であるサクソフォン協奏曲『ジャック・イベールを讃えて』をフランス政府の委嘱で作曲するなど、とてもサクソフォン奏者の余技というものではない。

ワタシは5年ほど前にラクール作曲の「サクソフォン四重奏曲」を演奏会で吹いたことがあるけれど、これは私が今まで吹いたサックスの曲の中で、最も高度なソルフェージュ能力を要求される曲だった(シュミットの方がもっと難しいんだろうけど、シュミットは4楽章しかちゃんと吹いたことがないので除外)。
「50のエチュード」しか知らない人にはおよそ想像もつかなそうな、とてつもない音程の跳躍の間を駆け回る、目の回りそうな音が並ぶ楽譜だった(今見ると「オレは本当にこんなものを人前で吹いたのか」、と思えてくる)。メシアンの「世の終わりのための四重奏曲」に少し似た雰囲気がある。
もう一度吹いてみたいけど、それだけの根性が自分に残っているかしらん。

MuleQ_1960

左からミュール、Guy LACOUR、GOURDET、JOSSE。
40年にわたって活動を続けたミュール四重奏団の、最終型。

雲カルのH田さんに似てるかもと思うのは、私だけ?(^^;

2006.09.07

ジェロームからのメール

ジェローム・ラランからメールを貰った(英語)。
Thank you for your nice criticということなので、どうやらどなたかがワタシのBlogの内容をフランス語に訳して聞かせたとおぼしきところ。すみませんお手数取らせて。改めて読み返すとヒドイ駄文で、ただ書き散らしてるだけって調子なんですけど。しかし誰の仕業だ。
まあ、おかげさまで私のブログの国際的ステータスも少しだけ上がったということで(^^;

とりあえず4行くらいの返事を速攻で返信。
15年以上前に、セルマーのキャンプで知り合ったヨハネスというドイツ人のサックス奏者と何度か英語の手紙をやりとりしていたことを、久々に思い出した。
英語のメールや手紙は(たとえ短くても)毎度冷や汗ものなんだけど、ドイツ人やフランス人相手だと、お互い外国語ということで少しだけ気楽だ。
ジェロームは12月に再び来日するとのこと。今度は何をやってくれるんだろうか。楽しみ。

2006.09.05

新日本フィル定期…「ダフニスとクロエ」第1組曲?

Tirasi060905新日本フィルハーモニー交響楽団 第404回定期演奏会(サントリーホール)

ハイドン/交響曲第82番「熊」
ベルリオーズ/歌曲集「夏の夜」(コントラルト:ナタリー・シュトゥッツマン)
ラヴェル/「ダフニスとクロエ」第1組曲、第2組曲
 指揮:クリスティアン・アルミンク

9月になると、やれ練習だ、本番だ、コンテストだ、コンサートだ、仕事だ(順序は深い意味はありません)、と、忙しい季節の幕開け。
今シーズン最初のオーケストラ演奏会は、新日本フィル

シュトゥッツマンの「夏の夜」に尽きた。なんという深い声だろうか。この曲はこうでなくちゃ(ソプラノでも歌われるけど、最初に親しんだCDがフォン=シュターデのメゾソプラノ版だったせいか、女の人の低い声に萌えます)。バックのオーケストラも繊細極まりなし。この曲のこんな素晴らしい演奏が生で聴けるなんて。

休憩後は「ダフニス」の第1組曲と第2組曲。第1組曲?…そんなのがあったのか。まあ第2組曲があるんだから第1組曲も当然あるんだろうけれど、寡聞にして初めて聴くような気がする。
第1組曲というのがどの部分かというと、バレエ第1幕の終わり(海賊がクロエを拉致して行った後)の「夜想曲」から、アカペラ合唱による間奏曲を経て、第2幕最初の「戦いの踊り」まで。合唱をどうするんだろうと思っていたら、舞台裏で合唱部分をオルガンで弾いて次につなげるというやり方だった。アイディアとしては面白いけれど、時間が結構長いだけにずっとオルガン独奏が続くというのは少々間が持たなくなってくる感がある。デュラン版のフルスコアにはたしか、合唱が使えない場合はこれを弾けというオーケストラ版の譜面が書いてあるはずで、素直にそれを使えばよいのにと思った。
まあ、第2組曲のほうが圧倒的にポピュラーなのも、分かる気がした。

演奏は、「ダフニス」に関してはクールで思い入れの少ない感じで、出てくる音は決して悪くはないし各ソロも見事ではあったけれど(例のフルート大ソロは白尾さん。あとホルンとかオーボエとか)、フランス音楽マニアといたしましては若干物足りないところもある。まあいいけど。

公演プログラムに、本日の出演者(エキストラも含む)&並び順一覧という紙がはさまっていて、なかなか面白い試みだと思った(アマオケみたい)。他のオケでもやればいいのに。
「ダフニス」第1組曲のホルンとトランペットの舞台裏バンダは、樋口哲生(N響首席)と神代修だって。うぉー、なんという豪華な布陣!

2006.09.02

須川展也コンチェルト・オン・ステージ

Tirasi060902須川展也 サクソフォン協奏曲コンサート(東京オペラシティ・コンサートホール)

本多俊之/風のコンチェルト(Concerto du vent)
E.グレッグソン/サクソフォン協奏曲(日本初演)
吉松隆/ソプラノ・サクソフォン協奏曲「アルビレオ・モード」
同 /サイバーバード協奏曲
(アンコール 吉松隆/融けてゆく夢)
 Sax:須川展也
 齊藤一郎指揮 東京フィルハーモニー交響楽団
 Pf:小柳美奈子 Perc:山口多嘉子(サイバーバード協奏曲)

須川さんが自分が委嘱し初演したコンチェルト4曲、まとめて一晩でやってしまおうという、演奏家であったらやれるもんなら一度はやってみたい夢の企てであるだろうが、こうして実現してしまった。企画から実施に至るまでの様々な下準備や尽力のことを想像すると気が遠くなりそうになるけれど、出来上がって聞こえてきたものは、まさに須川さんの天性のサービス精神をそのまま具現したようなコンサートであり、そういうコンサートで演奏されるにふさわしい音楽だった。
ある音楽家の演奏活動と、その成果としての作品、そしてその「人」そのものが、これほど同じ方向を向いているということは、それだけで一種の感動を覚える。

思ったこといろいろ。
特記すべきはオーケストラの素晴らしさと準備の良さ。厚く潤い豊かな弦といいニュアンスのよく揃った管といい、まさにプロの仕事(大声では言えないが本多さんの曲は初演の時とは違いすぎた)。東フィルいいじゃないですか。
コンマスは荒井さんだった。3階から見ていたんだけど、要所要所で目立たないながらも非常に的確な仕切り方をしていて、感心。

グレッグソン氏の曲は聴き応えがあった。明らかに英国音楽調の導入から、テンションコードの応酬を経て、ハ長調による一大フィナーレへと至る、スケールの大きな展開。変な前衛的技法や特殊奏法なんか使わなくても、個性を印した音楽はちゃんと書けるのだ、とばかりに。
須川さん本人に伺った話だが、グレッグソン氏に、(今の時代に)なぜハ長調の音楽を書くのですか?と尋ねてみたんだそうだ。グレッグソン氏の答えは「私がエドワード・グレッグソンだからだ」、と。なんたる自信。

「サイバーバード」。江戸川で聴いた初演以来はや12年。聴いたのは何度めかな。初演(読響)、須川さんのオーケストラ・リサイタル(94年、新日本フィル)、新星日響定期(95年)、芸大オケ(98年)、吉松隆個展(2001年、都響)、そして今回と、6回めだった。再演を重ねて、すっかり「古典」の風格漂う傑作となったと改めて思う。
もう1曲は、決して悪い作品とは言えないんだけれど、やはりインパクトの差があり過ぎて、ちょっと微妙かな。

客席は8割方は埋まっていたか。久しくご無沙汰な方も含め、いろいろな方にお会いした。
8月7日のリリアにいらしたという方にいきなり挨拶されたりとか。(嬉しかった。)

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