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2006.05.02

クレストン生誕百年

今年2006年は、勿論モーツァルト生誕250年で盛り上がっているし、シューマンの没後150年だし、ショスタコーヴィチの生誕100年も武満徹の没後10年も良いのだけれど、我々サックス吹きとしては、ポール・クレストン(1906-1985)の生誕100年を忘れてはならないと思う。
クレストンのサクソフォン・ソナタ作品19の、サクソフォンのレパートリーにおける貢献は、半端なものではない。

そのクレストンのソナタについて、むかし友人が話してくれた逸話をご紹介する。
その友人は私の3つか4つ下で、芸大のサクソフォン科を卒業しているのだが、もうかれこれ10年近く会っていない。もしかしたらもうサックスをやめてしまったのかもしれない。
その彼が、1990年頃にセルマーの主催で開かれたデファイエの講習会に参加した際に聞いた話、だと言っていた。

1978年に開催された、ギャップ国際サクソフォン・コンクール(最高位入賞は現パリ音楽院教授クロード・ドラングルだった。日本の武藤賢一郎氏も入賞している)。このコンクールには、マルセル・ミュールや日本の阪口新氏らと共に、作曲家のクレストンも審査員団に入っていた。
そんなわけで、予選では彼の「ソナタ」も課題曲に入っていたのだが、審査の最中にクレストンは不思議そうな顔をして言ったという。
「…皆、なぜこの第3楽章を、あんなに速く演奏するのだろう?」
それを聞いて、他の、サックス奏者の審査員たちは、
「そんなこと言ったって、譜面にそう書いてあるじゃないか」
と、四分音符=160.という指示のある出版譜を見せたところ、クレストン氏、驚いて、
「Oh、No!こんなテンポは書いた覚えがない!」と叫んだそうだ。
「では、どのくらいのテンポを考えていたのですか」と尋ねたところ、クレストンは3楽章のソロパートを歌ってくれたのだが、そのテンポはほとんどアレグレットに近い、四分音符120以下の速さだった、とのこと。
デファイエが、ミュールから聞いた話、として話してくれたのだそうだ。

勿論この話、たくさんの伝聞が間に入っているし、今となっては関係者はみんな亡くなってしまっているし、真偽の程はもはやほとんど確認不能ではあるけれど。
だが、あのぶっ速い第3楽章の、軽やかでスピーディで、アクロバティックなまでにカッコいい音楽というのは、作曲者の意図が仮にそうでないとしても、この作品の独自のスタイルとして確立しているように思える。
その話をしてくれたデファイエ自身ですら、「そのテンポはいくらなんでも遅すぎると思うので、私は138.くらいで演奏するようにしている」と言っていたそうだし。
作品というものは生き物だ、ということを実感させるお話ではある。

…ということを思い出したのは、こんなCDを聴いたからだ。

Cd095

P.ボノー/組曲、ワルツ形式による2つのカプリス、ジャズのエスプリによる協奏的小品
P.クレストン/組曲op.6、ラプソディop.108B、協奏曲op.26
 Sax:シャンドール・リゴー(Hungaroton)

1965年ハンガリーはブダペスト生まれのサクソフォン奏者による、ボノーとクレストンの作品集。
クレストンの、サクソフォンのための「組曲」や「ラプソディ」(ロンデックスの委嘱で書かれた)は、楽譜屋さんの店頭で「ソナタ」と並んで置いてあるのを時々見かけるけれど、いったいどんな曲なのか全く知ることができず、今回やっと音を聴くことが出来たのだった。「ソナタ」のような古典的均整感というよりは、「コンチェルト」の印象に近い、饒舌でゴッタ煮的な音楽で、ある意味いかにもクレストン、というか。
「ソナタ」はこのCDには入っていないけれど、mckenさんのサイトで調べてみたところ、既に別のCDに収録済なのだそうだ。やっぱりね。
演奏は、ちょっとイモっぽいモタモタした吹き方が気になるけれど、悪くはない。

銀座の○野楽器の店頭で見つけたのだが、店で付けている日本語のオビは「ボンノー&クレストン作品集」となっていて、軽く吹き出してしまった。
そうか、Bonneauは煩悩だったのか(^^;

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コメント

昨日はお疲れ様でした。
ボノーが煩悩?!なんかイタいミスですねぇ。(^^;

突然おじゃまします。営業活動です (^_^;;

『レコード芸術』6月号に、ポール・クレストン生誕100年を記念した記事を2ページ書きました。もし興味がおありであれば、ご覧いただきたく。

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