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2006.04.02

イベールの『祝典序曲』(長文)

4月になりましたね。
2ヶ月近く費やした編曲作業が、とりあえず終了。ああ疲れた。
久々に「新着音盤」エントリーなど。

Cd089

イベール/祝典序曲、寄港地、架空の愛へのトロピスム
 ジャン・マルティノン指揮 フランス国立放送管弦楽団(東芝EMI)

私にとっては、二十数年におよぶ愛聴盤。
この3月、東芝EMIの1300円シリーズで再発された。
1992年頃発売された輸入盤は持っていたけれど、ジャケットがオリジナルLPと同じだったので、買い直したのだ(クリック拡大)。

ジャケットの絵は、フランスのイラストレーター、ジャン=ミシェル・フォロンの『磁石のように』が使われている。1970年代末頃のレコード店で見たこのジャケットはいたく印象的だったなあ。曲名の「トロピズム」という言葉(曲目解説では、「自然界において生物を光に向かって引きつけていく牽引力」と説明されている)からの連想で選ばれたのだろうと思う。
フォロンの絵は、その「音楽性」がとても魅力的だ。私としてはパウル・クレーの抽象画に近い深みを持つ世界だと思っている。
1995年の1月だったと思うが、フォロンの展覧会が文化村のザ・ミュージアムで開かれ、これの原画を観ることができたのは幸いだった。文化村での展覧会は大抵いつも混んでいたけれど、この時は来場者もさほど多くなく、ゆっくり観ることができたのを懐かしく思い出す。

このCDの曲目の中で、私自身が殊更に愛して止まず、高校生の頃から折に触れて聴き続けてきたのは、1曲めの『祝典序曲』であります。
有名な『寄港地』、あるいはサクソフォンやフルートのための協奏曲からイメージする軽妙洒脱なイベールの姿とは、いささか趣の異なる曲だと思う。厳粛であり、重厚であり、しかも炸裂するように輝かしく荘厳で感動的な音楽。
自分自身を力づけたい時、鼓舞したい時に、よくこの曲を聴いた。私にとってこの曲は、そういう、音楽というものの持つ根源的な力を、15分の演奏時間に凝縮した作品だったし、今聴き返しても全くそう思う。
実はこれ、紀元2600年の奉祝とやらで日本政府の委嘱により書かれた曲で、初演は大戦直前の1940年、山田耕筰の指揮で東京・歌舞伎座にて行われているのだが、その話はまた別の機会に。

この曲には、アルトサクソフォン1本が編成に含まれており、中間部のメロディは、サックスとバスクラリネットの神秘的なユニゾンで始まる。
この録音で聴けるすばらしいサクソフォンソロは一体誰が吹いているんだろうと、長年考えていた。
第一印象の、デファイエかな、という思いは、その後何度か聴いたデファイエの生の音に接して、ますます強まっていった。このヴィブラート、音色、音の存在感、メロディが盛り上がってフォルテに達した後もオーケストラの全奏を圧して響き渡るパワーなど、こんな音が出せるサクソフォン奏者はデファイエ以外に考えられない、と思っていたが、確証はなかった。

1988年(昭和63年)夏、日本にて「第9回ワールド・サクソフォン・コングレス」が開かれ(会場は川崎市麻生文化センター、神奈川県立音楽堂)、世界13ヶ国からデファイエを含む200名以上のサクソフォン奏者が来日した。
こちら(日本サクソフォーン協会のサイト内)に、当時の公式文書がまとめられている。
私も5日間会場に通ったけれど、会場内(大・小ホール、客席、展示室、ロビー…)がどこもかしこも国内外のサックス吹きだらけという、一種異様な雰囲気だった。当時習い始めていた師匠の「外国の先生たちは怖そうに見えるかもしれないけれど、所詮はサックス吹いてるくらいだからどうって事はない、どんどん話しかけて仲良くなりなさい」というアドバイスに従って、いろいろな人にカタコトの英語で話しかけてみたり、サインを貰ったりしていた。
4日めだったと思ったが、ロビーに一人でいたデファイエ氏を見つけ、近づいてみた。
「お会いできて光栄です、」と英語で言って、プログラムを差し出した。
デファイエ氏はフランス語で何か言いながらサインしてくださったが、その時、思い切って長年の疑問を尋ねてみた。
「あなたはJacques IbertのOuverture de fêteという曲をご存じですか?」(こんなこともあろうかと、丸暗記していたフランス語)
デファイエ氏は、おっ、という感じで顔を上げて、「ウィ、」と言った後、1分間近く大声で早口のフランス語で喋りまくったのだが、残念ながら私は一言も理解することができなかった(^^;
デファイエ氏はマスタークラスや講演会などでも、聞いている人のことなんかお構いなしに一人でエンエンと喋り続け、通訳の方が頭を抱える、ということがよくあったけれど、全く同じだった。
ともあれ、その時点では世界中でもこの録音でしか存在していなかったこの曲について、これだけ喋れる事があった、というのは、この録音にデファイエ氏が関わっていたことは間違いない、と確信したのだった。
あの喋りまくったフランス語の、たとえ半分でも理解出来ていたら、どんなにか貴重な情報を得ることができただろうか、と悔やむけれど、もう遅い。…

昭和の最後の夏のことでした。
本家サイトの、デファイエのページでもちょっと触れたお話。

そのような録音が、日本で再び発売されて、容易に入手出来るようになったことは、まずは、めでたい。

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コメント

 高校時代まで、私にとってイベールといえば「寄港地」でした。。
当時、コンクールの自由曲で盛んに演奏
されましたよね。

 コングレスでのディファイエとの
やり取りは、凄いエピソードですね!
当時のプログラム、私も取って
いますが、結構な数のサインで埋まっているような。(^^;

デファイエを生で聴いたり、実際の姿を拝見したりしたのはたぶん7~8回くらいでしょうか、どの時をとっても今回と同じくらいの分量の文章が書けそうなほど、印象的です。
そういえばコングレス直後のセルマーキャンプでご一緒しましたっけ。このキャンプにはロンデックスが来ていましたね(ロンデックスはちゃんと英語を喋ってくれた)。

はじめて拝見させていただきました。
私がイベールを好きになったのはdevertissementを
演奏させて頂いたのがきっかけです。

デェファイエさんにお会いしてみたいものです。

Harさま

コメント有難うございます。
古い記事への暖かいコメントは嬉しいものです。
デヴェルティスマンを演奏されたとは羨ましい。

“Ouverture de Fête Ibert”で検索していて、たどり着きました。
イベールの祝典序曲は僕も大好きなので、嬉しくて書き込みました。
僕も長文になるかと思いますので、ごめんなさいです。m(_ _;)m

初めまして、みつおと申します。ちょこっとヴィオラもやっていました。

僕もイベールの祝典序曲は大大大好きで、それこそ高校のレコードの時代から
ずっと聞き込んできました。もちろんマルティノンの盤です!

一時期、題名の面白そうなレコードを集中して買っていたことがありまして、
神戸のレコード店の店員さんと懇意にしてて、
“このイベールはいいですか?”って訊いたら、“寄港地いいよ!”
って教えてもらったので、買ったんですが、
気に入ったのはなんといっても祝典序曲でした!
たぶん、全クラシックで一番聴いたのがこの曲だと思われます(笑)。

CDで出た時も、もちろん最初の輸入盤(92年)も買いましたし、
その後98年に国内盤が出た時も買い直しましたが、
2006年にも出たんですね。
音はさらに良くなっているのでしょうか?また買い直そうかな(笑)。

うちのCDはもう長い間ずっと100枚チェンジャーなんですけど、
自分で勝手にジャンル分けしてまして、管弦楽曲ゾーンのトップは
いつもこの祝典序曲でした!
朝支度する時など、今でもよく聴いています。

確かに活力が湧いて出る作品ですよね!
僕も、いつもこの作品で元気をもらってました。
じっくり聴くと、自分の内から何かが溢れ出るみたいな感じがして、
震えるほど感動したりしてました。

あまりに素晴らしすぎる曲なので、スコアも欲しかったんですが、
大学時代、神戸のYAMAHAでスコアを見つけたんですが、
学生にはビックリするくらい高くて…。
結構小遣いがブッ飛びそうなくらいなので(当時8000円くらい?)
何度も買うのをやめて家に帰りました。

大学オケにいた時、4回生の選曲会議のサブメイン候補で
この曲を思い切って出してみました。
当然その時には高いけどとうとうスコアは買いましたが。
譜面づらは弦楽パートも弾けそうだったんですが、
管楽器に難しいと言われてしまいました。
あんまりにも出ずっぱりで、休みがないのがダメなんだそうで、
いつもは出番がない!って怒るくせに!とか思ってました。

当時大学の客演指揮で佐渡裕さんがメインで指揮を振ることになっていたので、
団にいらした時に、“イベールの祝典序曲ってご存知ですか?”と伺ったら、
“もちろん!”とおっしゃって、選曲会議でイベールと争った
リストの前奏曲とどっちがいいですか?って伺ったら、
“リストの方がいいんじゃない?イベールは難しいから。”
って言われてしまいました。(^^;;;

それで自分で演奏する夢は潰えたんですけど、
その後、佐渡裕先生自身がイベールの祝典序曲を録音なさったので、
あの時尋ねたことが、もしかしたら片隅に残っていて、
きっかけになったのかも…、なんて勝手に考えてます(笑)。

長文、本当にすみませんでした。

熱いコメント、有難うございます。
遅くなりました。

もう7年も前に書いた記事ですが、今でもこうして、この曲を愛する同志の方が検索で辿りついてくれるのは、うれしい限りです。

もう一度実演で聴いてみたい曲ですし、演奏してみたい曲です。
(私が知る限りでは、アマオケでも二度演奏されています)

長い文章で申し訳ありませんでした。

アマオケでも演奏されたことがあると!
ぜひそれらも聴いてみたかったです!
もっとも、どうしてもこのマルティノンの演奏と比べると思うので、
“?”とか思ってしまうかもしれませんが。(^^;;;

でもこうしてネットが普及して、
イベールの「祝典序曲」を好きな方がいらっしゃると
わかることは嬉しいですね!(^-^

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