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2005.12.01

『系図(Family Tree)』…「家族」の諸相

11/24の投稿でとり上げたCD(アフィニス・サウンド・レポートNo.30)の中に、武満徹作曲『系図(Family Tree)-若い人のための音楽詩』が収録されている。(沼尻竜典指揮、オールジャパン・シンフォニーオーケストラ、ナレーター太田麻華)

これは、本当に感動的な音楽だ。
曲も美しいし、使われている谷川俊太郎の詩が、とにかく、すごい。
詩集「はだか」から選ばれた、子どものモノローグに模して書かれた全ひらがなの詩7編の朗読(ナレーターは12~15歳程度の少女、という作曲者の指定がある)と、オーケストラのための作品。

最初の詩「むかしむかし」。「うまれたりしんだりした」、時間を超越した、いまここにいる「わたし」が、立ち現れる。
続いて、「おじいちゃん」「おばあちゃん」「おとうさん」「おかあさん」と順々に、「家族」というものの中にある小さな孤独と小さな崩壊、そして小さな希望が、子どもの目線で語られる。
そこに絡むのは、まるでドビュッシーのような美しいオーケストラの響き。


私事だけど、この何年間か、私自身の上にも、この詩の内容を実感させられるような出来事がいっぱい起こっていただけに、尚更心に沁みるものがある。
脳血管性痴呆のため、人里離れた病院で(自分がなぜここにいるのかもおそらく判らぬまま)ほとんど寝たきりの生活を送る父には、まさに「おしえて むかしのことじゃなくいまのきもち」と叫びたい気分だし、「おばあちゃん」での描写は、私の母が亡くなった前の晩の情景そのまんまだ(ちょっと前までだったら、おそらく聞いていられなかっただろう)。
まあ、そんな個人的なことはこの際どうでもいい。

最後の詩「とおく」。
こちら(「ほぼ日」の過去ログ)に、詩の全文が載っているのを見つけた。

永遠への憧れ、そして転生の予感。

「そのときひとりでいいからすきなひとがいるといいな」のところで、オーケストラの音がはたと止む。
「どこからかうみのにおいがしてくる」で、再び鳴り始める。ノスタルジックきわまりない、アコーディオンのソロを伴って。
「でもわたしはきっと うみよりももっととおくにいける」
泣けてきます。本当に。

「現代音楽」だから、という理由だけで、この手の曲は一切聴かない、あるいは敬遠している、という人も多いだろう。
だけどこの『系図』という作品だけは、生きている間に一度は聴いてみて欲しいと思う。
これは断じて「現代音楽」ではない。いや、もしかしたらもはや「音楽」ですらない。
愛、孤独、やすらぎ、不安や憧憬といった、人間が持っている諸々の感情、「生きている」ことのいとおしさ、切なさを、そのまま封じ込めた時間、のようなものだ。


小澤征爾指揮サイトウ・キネンのCD(ナレーター遠野凪子)、あるいは岩城宏之指揮オーケストラアンサンブル金沢(小編成版)のCDが、入手可能。

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コメント

「系図」、いい曲ですよね。この記事を読んで、私も武満さんの追悼番組のビデオを引っ張り出し、改めて聴き直しました。むかしデュトワ・N響が演奏したのを聴いたことがありましたが、その演奏を聴かれた礒山雅先生が、今は閉鎖されてしまったご自分のウェブサイトに「美しい音楽だったが聴いていて個人的なことを思い出し辛かった」という意味のことをやはり書かれていたのを記憶しています。批評的な距離を保って聴くのが難しい作品で、その点では好き嫌いが分かれる曲かもしれませんが、言い換えれば、それだけ私たちの心に近いところで、逃げられない問い掛けを発している作品なのだと思います。理解すべきなのではなく体験すべき音楽、とでも言うべきでしょうか。

コメント有難うございました。
礒山先生がそんなことを仰っていたのですか。よく分かります。
ただこの曲は、そのような個人的な記憶や感慨を、「家族」というものの連鎖--子どもがやがて大人になって、新しい「家族」を作り、またその子どもが…という、永遠性の中へと解放しようとするようなものに思われます。
武満氏が、とても調性的な響きのするこの曲について、「世界の音楽的家族の普遍である『調性』を用いた」(うろ覚えですが)と述べているのは、そのようなことなのだと思いますね。

はじめまして!

実は…武満さんの『若いひとのための音楽詩(Family Tree)』を
聴いてみたいなぁと想って検索していて…
こちらにお邪魔いたしました。

CDが入手可能とのこと、探してみたいと思っています。

サキソフォンの演奏会が開かれるそうですが…

横浜に住んでおりますので・・
都合がついたら…ぜひうかがってみたいです!

ささやかなブログを書いておりますが
ご迷惑でなかったら・・・
演奏会のことを、ご紹介してもよろしいでしょうか?

どうぞ、よろしくお願いいたします!

お返事が遅くなってすみません。
暖かいコメント、ありがとうございます。
武満さんの「系図」は、来年の年明け早々、久々に生で聴くことができそうで、楽しみにしているところです。

http://www.tmso.or.jp/j/concert_ticket/detail/index.php?id=3084

演奏会の紹介の件、その価値があると判断されるのでしたら、是非お願いいたします。
私も、合宿から帰って落ち着いたら、ゆっくりそちらのブログにもお邪魔させていただくつもりでおります。

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