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2005.10.28

下地啓二氏、健在なり!

下地啓二氏の新しいCD。
夏頃には発売になっていたようなのだが、やっと入手。

cd068

下地啓二/サクソフォンのために(赤坂工芸音研 AKL019)
 ガロワ=モンブラン/6つの音楽的エチュード
 デザンクロ/プレリュード、カデンツァとフィナーレ
 リュエフ/シャンソンとパスピエ、ソナタ
 ミヨー/スカラムーシュ

下地啓二。
東京サクソフォンアンサンブルのリーダーとして、或いは東京佼成ウィンドオーケストラのコンサートマスターとして、80年代の日本クラシカル・サクソフォン界をキャトルロゾーの冨岡和男氏と二分する勢いと実力を誇った演奏家だった、という事実をリアルタイムで知っている人はもはや少数派になってしまったかもしれない。
近年はコンサートの告知に名前を見ることもほとんどなく、なんだか「過去の人」、のようなイメージを持ってしまっていた矢先のことだった。
しかし、下地氏の一晩のリサイタルを思わせる2004年7月録音のこのCDは、その20年前の下地氏の勢いと輝きをそのまま解凍して眼前に見せてくれるかのような、ちょっと信じがたいものだ。
録音のせいもある。まるでコンサート会場の最前列で聴くような、等身大の音像と不気味なまでのリアルさ。

下地氏の真骨頂は、音楽の全体像を一瞬で把握して離さず表現し尽くす常人離れした集中力と、私情を排した全き音楽への専心にあると思う。
下地氏のソロを聴いた後は、何か自分の精神や意識がすっきりと濾過されたような感じが残る。
知・情・意という分類で行けば、下地氏は揺るぎない「意」の演奏家だ。

80年代から90年代にかけて、何度か開かれた下地氏のリサイタルを聴いたあと、一緒に聴いた当時の仲間たちと飲みに行ったり飯食いに行ったりすると、必ず誰からともなく「オレはサックスやめた方がいいんじゃないか」、という話が出たものだった。
あんなふうに自分がサックスを吹くことは絶対不可能だから、今の感動を保ったまま次に自分が吹いたら必ず失望感に襲われる、それが厭だったら止めてしまうしかない、ということ。
結局、止めなかったけれど。(だから現在がある。)

そんなふうに思わせてくれたということ一点だけでも、私は下地氏に感謝している。
21世紀の今このCDを聴けば、音やヴィブラートが古くさいとか、細かい音符が吹き飛ばされ気味だとか言うことはできるかもしれないけれど、だからといってこれを忘れ去って平気でいられるほど私は恩知らずではない。

東京佼成wo.時代の下地氏は、1981年、初来日のアルフレッド・リードの指揮の下、リード作曲の『サクソフォンとバンドのためのバラード』を録音し、その素晴らしいソロによって大きな知名度を得た。
この時下地氏はまだ20代の若さだったはずだが、現在もCDで聴くことのできるその演奏から、20代の演奏家の「稚さ」を聞きとることはほとんど不可能だろう。
そんな貫祿と、時間を超越したような永遠の若さ(稚さ、という意味ではなく勢いがある、ということ)と存在感を備えた演奏家。
須川さんはかつて(10年以上前のことだが)、下地氏のことを「サックス界の人間国宝」、と呼んでいた。


ちょっと特殊な流通のCDなので、お店では手に入りにくいかも。
私はここで買った。

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コメント

残念ですが下地さんのCDは拝聴したことがありません。今のプレーヤーの演奏に慣れている人から見るとあーだーこーだ言われる方はいるようですね。下地さんのサックスの音にあこがれたものでした。
今からフ○モーのスタイルに飛びつこうとも思いませんし、師匠から教えてもらったスタイルを大事にしていこうとは思います。しかしアンサンブルすると、今の人とは明らかに違うんですよね。

迂闊にもこのCDのリリースを見逃してました。実は個人的に初めて接したプロのサクソフォン奏者が下地氏なのです。この出会いなくして、今の私はなかったでしょう。
バラードは、20代とは思えない円熟した録音ですね。新録音も聴いてみます。

コメントのお返事をいろいろ考えていたのですが、結局のところ
「下地さんは凄い」
という、それだけなのです。
その「凄さ」の質を、デビューから25年間、全く変えないまま保持し続けている。
変化の激しい現代という時代にあっては、ある意味時代後れと言われても仕方ないのでしょうね。

「サクソフォンのために」を、勢い余って2枚も購入してしまいました。
1枚はワタシ用。もう1枚は将来のプレゼント用にしようと企んでおります。
スカラムーシュの明るさに惚れて、繰り返し聴いています。

はじめまして、たづしめじと申します。
私は下地啓二さんの「サクソフォンとバンドのためのバラード」を初めて聴いた時、あまりの音色の美しさにしびれました。それまでは須川展也さんの音色が私の目標でしたが、一瞬で下地さんへと変わってしまったのです。下地さんの音色の方が自分に合っているように感じたからです。
今でももちろん須川さんの演奏・音色は大好きです!目標は下地さんのしっとりとした美しい音色(上手く言えなくてすみません…)です♪
実は『サクソフォンのために』をまだ入手していないので、これから買おうと思います。「スカラムーシュ」が楽しみです!!

>たづしめじ様
コメントありがとうございました。

やっと『サクソフォンのために』を聴き返すことができました。
「スカラムーシュ」で、私の理想とする、と言い方はちょっと違いますが、この曲はこのような音楽である、と私自身がイメージしている、そのまんまの音が聞こえてくることに、改めて思い至って、うおおっ、と唸っております。

そういえば私の「スカラムーシュ」の「刷り込み」は、下地さんの師匠であるロンデックスの、古いレコードでした。25年以上前の話です。
そのレコードの演奏を何度も聴いて、まるごと覚えて、その上で色々な人の演奏を聴いてきたのだということを、思い出しました。

…「時代を超えた演奏」というのは、本当にあるのですね。

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