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2005年5月

2005.05.30

新日本フィル【ショスタコーヴィチ】

tirasi531新日本フィル 第386回定期演奏会(サントリーホール)

モーツァルト/交響曲第35番「ハフナー」
ショスタコーヴィチ/交響曲第8番
 指揮:シュテファン・ザンデルリンク

先日の音の輪でお世話になった渡辺センセ大活躍の予感、ということで、楽しみにしていた。土砂降りの雨の中サントリーホールへ急ぐ。
指揮のザンデルリンクは、ラドミロー作品集(Pierre Verany)やゴセックの交響曲集(ASV)といったマイナー作曲家のCDの素晴らしい演奏で、実力の程は確認済。

それにしても…新日本フィル、いつの間にこんなに上手くなったんだぁ?とびっくり。
最近聴いたのは2月の都民芸術フェスティバル(井上ミッチーのショスタコ11番)だし、定期を聴くのは1年ぶり位だが(その時も上手いとは思っていたが)、ぴたっと揃って豊かに鳴る弦といい、隙が全く無く純正に響く管といい、明らかに一皮むけた音というか、従来の印象から一段も二段も上のステージをクリアしている、という感じだった。
会場で遭った、新日オッカケSax吹きのK嬢にそう言ったら、「いやぁ~だってシゴかれてますからねえ、」と言ってたけど。やはり(デュトワ時代初期のN響のように)音楽監督効果、かしらん。

狼藉の限りを尽くすような壮絶なショスタコーヴィチ、最後の不思議に平静な謎めいた終止の後、30秒近い?長い沈黙が印象的。3月に都響で聴いた時(ベルティーニの追悼公演)より長かった。

終演後は、K嬢といろいろ業界話などしながら、地下の楽屋口で渡辺センセを待ってみたが、なかなか現れないので結局そのまま帰りましたとさ。

2005.05.27

Quatuor Habanera

ハバネラ・カルテットが、さきの大阪国際室内楽コンクール・第2部門(木管)で、優勝したようだ。
RNO木管五重奏団(ロシア)と、同点1位。
結果記事は、こちら
こちらのBlogにも、報告が載っていました。

ハバネラのとてつもなさというのは、こりゃもうつべこべ言わずに聴いてみてください、としか言い様が無いんだけど、それにしても今までも世界各地のコンクールで優勝してきた彼らが、キャリアの総仕上げとして挑んで見事に1位を取ったのが、この大阪国際だったというのは、凄いことだ。こういうコンクールが日本で開かれているというのは素晴らしいことだし、我々としてももっと盛り立てていかなければならないのではないかと思う。

ハバネラのCD。

cd041

グリーグ/ホルベルク組曲
グラズノフ/サクソフォン四重奏曲op.109
ドヴォルザーク/弦楽四重奏曲第12番「アメリカ」
 Quatuor Habanera(Alpha 041)

続きを読む "Quatuor Habanera" »

2005.05.25

都響【バーバー】

tirasi530都響・東京芸術劇場シリーズ「作曲家の肖像」
Vol.56 サミュエル・バーバー

オーケストラのためのエッセイ第2番
弦楽のためのアダージョ
ヴァイオリン協奏曲(Vn:渡辺玲子)
ノックスヴィル、1915年夏(Sp:野田ヒロ子)
交響曲第1番
 ジェイムズ・デプリースト指揮 東京都交響楽団

いい演奏会だった。
こういう清々しい気分のなか終わった演奏会というのは久しぶりかもしれない。何の悩みもなく過ごしていた子供時代の、楽しくまた輝かしい休みの1日の終わり、みたいな。
バーバーの音楽をまとめて聴く機会なんて普段はまず無いけれど、いざこうやって聴いてみると、バーバーという人が音楽にこめた、憧れとか癒しとかノスタルジーという感情がとってもよく判る。勿論演奏も素晴らしかった。特に、ヴァイオリン渡辺さん、見事なオーボエソロを吹いた本間さん、そして都響弦軍団、何よりもマエストロ・デプリースト、Bravo!
お客さんも意外とよく入っていて、めでたし。アンコールに、歌劇「ヴァネッサ」間奏曲。

それにしても今日のような日は、普段、自分が音楽を聴いた後に、いかに言わずもがなのことばかり喋っているかということに思い至って(私ばかりじゃないんですけどね。ネット上を探ってみると、そういう方、いっぱいいらっしゃいますが)、ちょっと反省することだった。

私も、聴く人にこういう音楽を分けてあげられたら本望だな、と、アマチュア音楽家の端くれとして思う。


思い出したので、追記。
バーバーの音楽のノスタルジックな感じということでは、私自身も以前、こんな文章を書いていました。
今年の1月14日のエントリー

2005.05.22

買った。

マルセル・ミュール/コンプリメンタリー(グリーンドア音楽出版)。
以前のエントリーでご紹介したもの。

cd040

コイツは、いいですね!
世に数あるミュールの復刻CDの中でも、最も録音年代の新しい、音質の良い音源だと思う。
LPの板起こしなので、勿論少しは針音はするけれど、SP復刻のジリパチ・ノイズに拒否感を持つ向きでも、この程度だったら許容できるのではないかと思われる。

…それにしても、どれもこれも、何という素晴らしい演奏だろうか。
ひとつだけ挙げるなら、ボノーのヴァルス・カプリス。セルマーのLPレコードの頃からの有名なテイクだけど、背後に大オーケストラを従えたかのような沸き立つ音楽を、たった一人で実現してしまった奇蹟のような演奏を、もしまだご存じない方がいたら是非お聴きあれ。

さらば、練習場

本番1ヶ月前を切って、リサーチの練習が佳境。
今日はソリスト箱山氏との合わせ。

tbone

デ=メイのT-Boneコンチェルト。大変な曲なんだけど、ヒーコラ言っている我々に対し、さすがプロ、ほとんど完成された音楽をぶつけてくる。
ソロ合わせはあと来週の1回。ちなみに練習はあと都合3回。頑張らねばなりません。

リサーチの練習場として使っているスタジオが、5月いっぱいで閉鎖される。
スタジオと言っても実は、パチンコ店のビルの屋上に増築したプレハブの掘っ建て小屋(^^;であり、違法建築ということで撤去、とあいなったのだ。
違法と言われても、私がリサーチに乗るようになった平成元年には既に練習所として定着していて、以来ずっと使っている訳で、何を今更…という気もするが。
何にせよ、17年間通ったこのスタジオともお別れということで、ちょっと感慨はある。

楽団幹部の方々は、今後の練習場所を必死で探しているところ。大変です。

2005.05.21

フォーレで暮れた1日

tirasi529なめら~かの練習の終了後の夜、堀江真理子さんのピアノリサイタルを聴いた(カザルスホール)。
曲目は全てフォーレ。

 舟歌第1番op.26
 即興曲第2番op.31
 夜想曲第5番op.37
 舟歌第3番op.42
 夜想曲第6番op.63
 ヴァルス・カプリス第2番op.38
 夜想曲第7番op.74
 舟歌第6番op.70
 主題と変奏op.73

1993年から95年にかけて、フォーレの全ピアノ曲・室内楽曲のコンサートを8回に分けて開催した(私は全部行きました。あれからもう10年も経つのか…)、堀江さんの久々のソロリサイタル(最近CDも出したようだ)。しかも会場がこれまた久々のカザルスホールということで、行ってきた。
カザルスホール、何年ぶりに入っただろう。1年や2年じゃ済まないと思う。ひところは年に10回以上通ったことだってあったのに。この間にホールのオーナーが交代して名前はいつのまにか「日本大学カザルスホール」に変わり、隣にあったお茶の水スクエアの豪華ビルは跡形もなく取り壊されて、駐車場になってしまった。

開場前から並んで、以前からのお気に入りの上手側バルコニーに席を取る。ホールの周りは随分と変わったけど、中は昔のままで、ホッとした。
演奏自体はいろいろあったけれど、とにかくこのホールのバルコニーで聴くピアノの音は、本当に美しい。ピアノに限らないが、東京のあらゆるコンサートホールの中で、最も豊穣で幸福感にみちた響きを聴ける場所のひとつだと思う。…十数年の昔、須川さんがここでリサイタルをした時、「是非バルコニーで聴いてね、」とご本人に直接言われたことを思い出した。
アンコールは「無言歌第3番」。


私のお気に入りの、フォーレのピアノ曲のCDを挙げてみます。

cd038

フォーレのピアノ曲集だったら、全集選集こきまぜて色々な方が録音しているが、第一に挙げるなら、長いこと幻の名盤と言われた、フォーレのスペシャリスト、ジェルメーヌ・ティッサン=ヴァランタン(1902~1987)の録音でありましょう。20世紀前半の時代の空気を知っている方々に共通する、ある種の味わいを濃厚に感じる。
TESTAMENTから復刻されている仏デュクレテ・トムソン原盤の3枚のCDは、1950年代の古い録音だが、ここで挙げる、ヴァルス・カプリス(4曲)、即興曲(6曲)、8つの小品が入っている1枚は、れっきとしたステレオ録音。

cd039

あのナディア・ブーランジェの後を受けてパリ音楽院の教授となり、晩年には東京芸大の客員教授を務めた名匠、アンリエット・ピュイグ=ロジェ(1910~1992)が1982年、日本で録音したCD。
「ドビュッシー&フォーレ・ピアノ作品集」というタイトルの、一見ありきたりの名曲集に見えるし、フォーレは4曲しか入ってないけれど、これはただごとではない素晴らしいアルバムだ。凛とした気品、透徹した音色。これほど「癒される」音というのは、ちょっとない。
Sony Record / SRCR1845という型番(97年6月発売となっている)。1枚千円の廉価シリーズでの再発売盤。今でも手に入るものかどうかは知らない。もし入手出来たらラッキー。一生幸せになれます。

2005.05.19

都響【復活】

tirasi528ここのところずっと忙しかったが、やっと少し早く帰れた。都響第608回定期を聴くため東京文化会館へ急ぐ。
東京文化、サントリーと2日続く5月の定期公演の初日、新常任指揮者ジェイムズ・デプリーストの就任披露演奏会。

曲はマーラー「復活」。
広いステージを一杯に埋めつくしたオーケストラと合唱(晋友会)、客入りも良く、都響の新時代の始まりにふさわしい演奏会となった。
若い頃の小児麻痺の後遺症で、電動車椅子に乗ってステージに現れるマエストロ・デプリースト(思わず「サンダーバード、」という連想)。巨体を黒いガウンのような衣装で包んだ姿は、棒を振るボブ・サップという印象だけど(^^;、必要最低限の動きしかない簡潔な指揮ぶりから流れ出るその音楽は実に泰然として、自在だ。そうしようと思えば幾らでもドラマチックに演出できる曲なのに(実際そういう演奏も聴いたことがあるけど)、決してそうはしない。遅い部分の、各駅停車の旅のようなゆったりとした進行に身を任せながら、いつの間にか、曲自体の持つ巨大で崇高な世界へと惹き込まれてゆく。演奏している、というより、音楽を「解き放っている」、という言葉がふさわしい印象。指揮者というより、この特別な場を統べる司祭、のような雰囲気を漂わす。
終わってみれば何か目頭の熱くなるような、感動的な音楽に触れた、という実感が残った。

都響というオーケストラも、ここ1年くらいは困難な時期が続いているだろうに、ものともせずに良い音を出していると思う。今日だって(トランペットのトップはエキストラで残念だったけれど)、特に弦なんかは、ここぞという場でああいう音色でパッと揃って弾いてくるんだもの。いや~、痺れちゃいます。

2階席のサイドに、修学旅行か何かの団体のような高校生らしき集団(見たところ100人近く)が座っていて、演奏中騒ぎやしないかとちょっと心配だったが、全然そんなことはなく、長い曲の間も集中して聴いていたようだ。
若い彼らにとって、今日の演奏会が音楽とのよい出会いでありますように。…

終演後は定期会員対象のパーティがあったようなのだが、私はもともと明日のサントリーを聴く筈だったので申し込んでおらず、真っ直ぐ帰った。というか、こういう音楽を聴いた日は終わった後あまり人と話したくない、というのはある。


今日の演奏会場で知ったニュースだが、ジャン・フルネがとうとう現役を引退するそうだ。
…老いというものは誰しも避けがたいもので、致し方ないという感はある。
引退公演となる12月の二夜の都響定期は、絶対聴き逃せないぞ。

2005.05.16

新着CD【デゾルミエール】

ヤフオクに新古品が800円で出ていたので、思わず落札したCD。

cd037

イベール/ディヴェルティスマン、プーランク/バレエ組曲「牝鹿」、ショパン(デゾルミエール編)/レ・シルフィード
 ロジェ・デゾルミエール指揮 パリ音楽院管弦楽団(LONDON)

デゾルミエール(1898~1963)。フランスの指揮者の中でもかなりにマニア好みの方のようで、私も実際に聴くのは初めてだったのだが、いざ聴いてみたら非常にキビキビとしたモダンな演奏をする人だったので、ちょっと驚いた。
調べてみたらこの人、マルティノンの師匠だそうだ。なるほどね。どちらも、作曲家兼業の指揮者ならではの明晰さのようなものを共通して感じる(あとマルケヴィチとか、ちょっと違うけどブーレーズとか)。ショスタコーヴィチの交響曲第5番のフランス初演も振っているらしい。もう少し長生きしていたら、フランスの指揮者業界地図はかなり違っていたんじゃないかと思われる。
1950&1951年のモノラル録音ながら、当時のDECCAご自慢のffrr録音による素晴らしく鮮明な音で、とても50年以上前の録音には聞こえない。ヘタな最近の録音よりよほどリアリティを感じる。


一昨日のユースwoの感想で、天野さんの曲を「濃度が同じ」と書いたら、珍しく複数の方よりメールにて反応があった。
曲の良し悪しの問題というより、オーケストレーションの問題、演奏の問題、あるいは「吹奏楽」という媒体の問題があるのではないかと、まあそういうところ。

天野さんの最近の吹奏楽曲を聴いた機会は数回しかないけれど、どれもあんまり強い印象というのが無いんだよね。
演奏のせいなのかな。吹奏楽コンクールの全国大会みたいな場で聴けば、強い印象を持てるんだろうか。
もしかしたら曲自体に、中途半端な演奏というかアプローチを許容してしまう性質があるのかも、とも思う。

誤解の無いように言っておくけれど、私自身は、天野さんのことは20年以上前、バリバリの現代音楽を書かれていた頃から存じている。今は無くなってしまった青山タワーホール(現代音楽の殿堂)で、天野さんの作品発表会(のようなもの)が開かれた時、大学生だった私がなぜかステージ係のバイトをしていたとか。
打ち上げまでご一緒させていただき(これまたなぜか三善晃の「管弦楽のための協奏曲」の話題で盛り上がったり)、無知だった当時19歳の自分にとっては、「音楽」という特別な世界のまさに最先端に接した、初めてに近い経験で、鮮烈な印象を残したのだった。

…そんなわけで、天野さんの吹奏楽曲に接する度に、「この人の才能はこんなもんじゃない筈だが、」と思ってしまうのは、まあ、ある程度仕方のないことかと。

2005.05.14

ユース

tirasi527今日はいろいろあって休日出勤した後、古巣のユース・ウィンドオーケストラの定期演奏会へ(ハーモニーホール座間)。
5時半に仕事終わらせて行くには相武台前はちと遠い。小田急線にこんな長いこと乗ったのは久しぶりだったが(25年前学生だった頃は毎日乗ってたが)、下北沢から新百合ケ丘まで全部通過する「快速急行」なる電車が走ってたり、成城学園前が地下駅になってたり(@_@)、驚くこと多し。

会場に着いた時には1部最後の「オセロ」(A.リード)の途中だった。このホール、アンコンで何度か舞台に乗ったことがあるけれど、辺鄙な場所にあるのが難点だが音はとてもいいホールだと思う。ユースの演奏も、ホールのせいも少しはあるだろうがとても良い音が出ていて、私がここを辞めた後聴いた中では一番に近いサウンドだったのではないか。
2部あたまのネリベル「交響的断章 A Symphonic Movement」は圧巻だった。熱気と集中に溢れ、サウンドの組み立てもいつになく完成度が高かった。もともと指揮者の鎌田さんはプロのオケマン上がりで、音楽性はそんじょそこいらの吹奏楽指導者とは隔絶したものがあるのだから、楽団の側に完成された響きが備わって来ればこれは強いぞ。楽しみだ。

メインプロは天野正道の交響組曲「海のオーロラ」。最近流行りの作曲家だが、ああ、なるほど、今の吹奏楽界ではこういうのが受ける訳ね、と思った。…たしかに面白い曲には違いないし、一見いろいろ変化に富んだ曲に見えるのだが、25分もかかる演奏時間の間、音楽の「濃度」がずーーーっと同じなので、聴いてるとなんだかだんだん退屈してくるのだった。
まあ、この濃度が好きな人にとっては、たまらないんでしょうな、きっと。

2005.05.13

マルセル・ミュール/コンプリメンタリー

グリーンドア音楽出版から、マルセル・ミュールの新しい復刻CDが発売されるようです。

タワーレコードの通販ページ(私はタワーの回し者ではないが)

録音が1953&54年ということは、CD"La Legende"で一部復刻されている、DECCAのThe Saxophoneというシリーズ(LP)の復刻と思われる。(このシリーズのオリジナルについては、木下直人さんのご協力により、私の本家サイトのページでその全容をご紹介しています)
グリーンドアからは、"Historical Recordings"と題するSPからの復刻盤が既に出ているけれど、これは国内外であらかた復刻済の音源の後出しジャンケン的収録内容の上、クレデンザを使ったと言いながらそのあまりに懐古趣味的なサウンドに今ひとつ食指が動かなかったが、今度出るこちらは期待できそうだ。ミュール演奏によるパスカルのソナチネとか、チェレプニンのソナチネ・スポルティヴなんて、聴き物ですよ。
5月21日発売。(訂正 19日ですね)

もうひとつ、ミュールに関するマニアネタ。
上記ページ中では既に公開済ですが、東芝EMIから発売されている「ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の芸術 Vol.20」に収録されている、ミュール独奏と称するアンゲルブレシュト指揮の「アルルの女」の演奏について、この録音の原盤SPを入手されたという斉諧生さんにより、サクソフォン独奏はミュールではなく、VIARD(Maurice VIARD)である、との確認がなされております。
→ 原盤レーベル写真(提供:斉諧生さん)

なんでこういう勘違いが起こっちゃったのかな。
このレコードを聴いた誰か(複数かもしれない)の中で、
「このソロはミュールかもしれない!(想像・願望)→ ミュールに違いない!(確信)→ ミュールだ!(断定)」
という変換が起こったんだろうと思われる。
まあ、ありがちなことではあります。

2005.05.10

モーリス・ブルグ賛(長文)

現在、私の大好きなオーボエ奏者、モーリス・ブルグが来日中。
昨日、私は行けなかったけれど、JTアートホールで室内楽の演奏会だったはずだ(チケット発売のその日に完売したのだ)。風の便りではよいコンサートとなったらしい。
という訳で、家でCD鑑賞。

cd034

モーツァルト/フルート協奏曲第1番、オーボエ協奏曲ほか
 ミシェル・デボストFl、モーリス・ブルグOb
 ダニエル・バレンボイム指揮 パリ管弦楽団(東芝EMI)

1975~76年の録音。パリ管の音楽監督に就任したばかりの若き日のバレンボイムが、同オケの二大首席奏者を立てて録音した輝かしいモーツァルトで、今となっては入手困難なCD。エンジェルのマークが懐かしいです。買っておいて良かった。

そう、70年代後半、十代だった自分がクラシック音楽を意識して聴き始めた頃、ブルグはパリ管の首席奏者だった。フランス音楽に親しみ始めたのも同じ頃だったので、それと知らぬうちからブルグのオーボエの音は耳に入ってきていた。ロストロポーヴィチ指揮の「シェエラザード」2楽章の素晴らしいソロや、バレンボイム=パリ管のデビュー盤だったイベール「寄港地」(CBSソニー)とかね。
音楽というものはフレージングとリズムと音の色彩で出来ているという、究極のような真実をシンプルに判らせてくれる演奏だった(当時はこんなふうにはっきりと言葉で把握している訳ではなかったが)。よく知らないうちは、プロのオーボエ奏者というのは皆こんなに上手いもんかと思っていたのだが、その後いろいろなレコードを聴いていくうちに、そういうものでもないらしい事がだんだん判ってきた。
Calliopeに録音のサン=サーンスのオーボエソナタが、どんなにか素晴らしかったことか。このCDについては、以前にも少し書いた

爾来、あなたの好きな管楽器奏者は、と訊かれたら、「デファイエ、ミュール、モーリス・ブルグ、モーリス・アラール(バソン)」と即答する私です。

彼がパリ管の首席奏者として残したもっとも美しい演奏のひとつが、これ。

cd035

ラヴェル/ツィガーヌ、高雅で感傷的なワルツ、マ・メール・ロワ、クープランの墓
 ジャン・マルティノン指揮 パリ管弦楽団(EMI)

フランス国立放送管とのドビュッシーと並ぶマルティノンの遺産、1974年録音のパリ管とのラヴェル全集の1枚。
このクリムトのジャケットは、1987年の初CD化時のものなので、現行盤は違うデザインだと思う。
「クープランの墓」のソロは勿論素晴らしいが、なによりオーケストラの音が隅々までキラキラと煌めいて、音を浴びているだけで幸せな気分になってくる。
もう録音でしか聴くことの叶わない、思いっきり豪勢で輝かしい、時代と共に消え去ったサウンド。…


…ここでご紹介したい気分ではあんまりないのだが、私の言ってることが単なる懐古趣味ではない証拠として挙げたいのが、30年後の同じパリ管弦楽団による、やはりラヴェルのCD。

cd036

ラヴェル/夜のガスパール(コンスタン編)、クープランの墓、古風なメヌエット、亡き王女のためのパヴァーヌ、道化師の朝の歌
 クリストフ・エッシェンバッハ指揮 パリ管弦楽団(Ondine)

パリ管の現音楽監督エッシェンバッハによる2004年のライブ録音で、マリウス・コンスタン編曲による「夜のガスパール」オーケストラ版という珍品が収録されているという意義のあるCDだが、「クープランの墓」をマルティノン盤と聴き比べてしまうと、もういけません。音色は同じオーケストラとは思えないほど痩せてしまっているし、ソロオーボエ奏者の技量も可哀相なほど聴き劣りがする。
…まあ、ブルグほどの名奏者の後任を探すのは難しかっただろうというのは判るけど、それにしてももうちょっと何とかならなかったのか?と贅沢のひとつも言いたくなってしまう。

多分、このCDだけ単品で聴くぶんには別に不満はないのかもしれないが。
指揮者エッシェンバッハというと、ちょっと一風変わった演奏をする人、というイメージがあるけど、ここでの彼は存外に素直な解釈です。

…ということで、(デファイエもミュールもアラールも鬼籍に入られた今)モーリス・ブルグが現在もなお演奏活動を続けていて日本でも聴くことができる、というのは、様々な意味でたいへんに幸運で得難い僥倖なのです。
次は絶対聴くぞ。

2005.05.08

マーラー/交響曲第2番「復活」

昼はリサーチの練習へ。
今日は棒振りではなく、楽器持って合奏に加わった。ヒンデミットの交響曲初めて吹いたが…
こんなもん、素人に振れる曲じゃなかったな、と改めて思った。


話変わって、今日のお題は、マーラーの「復活」。
今月の都響定期がこの曲(ジェイムズ・デプリースト常任指揮者就任披露)なので、予習がてら聴き始めたところ。
なにしろ長い曲なので、普段はなかなかCDを聴こうという気になれないのだ。

cd033

ガリー・ベルティーニ指揮ケルン放送響の全集(東芝EMI)の分売。廃盤となって久しい。
きわめて見通し良く、ストレートで、なおかつマーラーの核心を突いた演奏だと思う。
ベルティーニの「復活」は都響で2回聴いたけど…もう二度と聴くことは出来ないのが悲しい。ライヴCDの発売は望み薄とのことだし。
交響曲第10番より「アダージョ」、とのカップリング。こちらはもしかしたら「復活」以上の名演かもしれない。ベルティーニが唸り声上げながら振ってるのが目に見えるような、灼熱した弦の音が聞こえてくる。

アリアCDの新譜情報によると(リンク先より、5月6日付「新譜(9)」の一番下)、ベルティーニ=ケルン放送響のマーラー交響曲全集、待望の再発売決定、とのこと。
11枚組で1万1千円だって。この機会に買っちゃおかな。

2005.05.07

新着音盤【ゴトコフスキーLP】

ヤフオクで落札したLPレコード。かなり珍品。

bogaard

イダ・ゴトコフスキー(Ida Gotkovsky)/悲愴変奏曲(Variation pathetiques)
同 /サクソフォン協奏曲
 Ed Bogaard(Sax)
 ジャン・フルネ指揮 オランダ放送室内管弦楽団(BVHAAST)

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2005.05.06

新着CD【原博巳】

原博巳/PCF(CAFUA)

cd032

原博巳(はら・ひろし)。
間違いなく、須川さんデビュー以後20年の間に現れた日本のクラシカル・サクソフォンの新人の中で、最大級の逸材だと思う。

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2005.05.05

音の輪コンサート、終了

第17回音の輪コンサートatすみだトリフォニーホール、盛会のうちに終了。
ご来場、ご声援をいただいた皆様、ありがとうございました。
昨夜は打ち上げから二次会まで付き合って、午前0時過ぎに帰宅。今日は1日魂が抜けたようにボーッと過ごした。

050504a

リハーサル開始直前の、誰もいない舞台と客席。
この「開戦前夜」、って雰囲気が好きです。

すみだトリフォニーホール、さすが、響きがきれいだし舞台上でも互いの音がよく聞こえるし、すごく吹きやすいホールだった。
こんないいホールで演奏出来るなんて、何と贅沢なことか。

050504b

オルガン調整中。
オルガンは鈴木隆太氏。本来だったらこんな、吹奏楽曲のOptional Organ1曲のために出演していただけるような方ではない大物音楽家なのだが、これまた贅沢なことよ。

本番はまあ、色々ありました。(ホントに色々ありました…!)
私としては、吹奏楽の演奏会で、このようなmission impossibleとも言うべき悲壮な使命感を携えて上ったステージというのは初めてに近いくらいで(大きなソロがひとつあったというのは勿論だが、それだけではなく)、そのくらいの困難がこの演奏会にはあったということなんだけど…
その「困難」とは何なのか、を書き始めたら、たぶん明日の朝になっちゃうだろうな。
それについてはこの先、おいおい検証して行こうと思ってる。今は少し、ホッとしていたい。

とりあえずは、100%ということはないにしても、出来る限りのことはやった、と思う。

リード氏は結局、本番も椅子に座って指揮をした。
ステージに現れるときのリード氏の姿は、多少足元が怪しいとはいえそれでも、往年のあの巨大な存在感をいまだ残していたが、演奏会が終わって打ち上げ会場の隅のソファに沈み込むように座っているリード氏を見ていると、本当に「小さなお爺ちゃん」になっちゃったな、という感じで、痛々しいものがある(父の見舞いで老健施設とかに行くと、こういう感じのお爺ちゃんお婆ちゃんがたくさん車椅子に座ってるんだよね…)。

050504c

打ち上げ会場でスピーチするDr.Alfred Reed。
左はリード氏のマネージャーにしてこの「音の輪」の団長、青山氏。

皆さんお疲れさまでした。
今日のところは、とりあえずこんなもんで。

2005.05.03

いよいよ明日

練習漬けのGWも佳境に入り、いよいよ明日は「音の輪」本番。
今日は再びDr.Reedの指揮で、宮前市民館ホールにて最終リハーサルでした。

不死身のリードさんも84歳、今年は老いの影が色濃く、「音の輪」もいよいよ今年で最後かと一時期噂されたのも無理はないという感じではある。なんだか身体全体が縮んじゃった感じで、足元もちょっと覚束なく、これまではリハーサル中ずっと立っていたのに今年は椅子に座っており、「巨木」のようなイメージとはちょっと違ってきている。
しかしその音楽はますますスケールを増し、大音声も健在。音ひとつひとつを慈しむような指揮ぶりにも磨きがかかり、まさしく日没寸前の太陽の巨大さを想起させる。

色々あったけれども、明日はすみだトリフォニーホールという最高の舞台で、この棒の下、出来得る限りの音楽を読み取って再構築するという、困難なミッションに挑戦いたします。

050503

(私の乗らない)第1部スペシャルバンドのリハーサル。

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